焼跡からのデモクラシー 上

草の根の占領期体験

過酷な戦争体験と戦前からの伝統的価値観をもとに,日本の民衆が戦後民主主義を自ら獲得したことを明らかにする

焼跡からのデモクラシー 上
著者 吉見 義明
通し番号 25
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 歴史・伝記
刊行日 2014/03/18
ISBN 9784000291255
Cコード 0321
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 258頁
在庫 品切れ
戦後日本の民主主義は「与えられた/押しつけられた」ものなのだろうか.日本の民衆が,アジア太平洋戦争の過酷な体験を決定的な契機として,戦前からの平和・自由・共助などの伝統的価値観の基盤の上に,民主主義を自ら作りあげ,獲得していったことを,彼らが残した日記や雑誌への投稿,聞き取りなどを通して明らかにしてゆく.

■編集部からのメッセージ

軍部やファシズムの犠牲者とされてきた草の根の民衆や兵士たちが,いろいろな思いを抱えながらもアジア太平洋戦争を支えていたことを明らかにした著者の前著『草の根のファシズム――日本民衆の戦争体験』(東京大学出版会)は,ロングセラーとして多くの人に読み継がれてきました.
 その続編でもある本書は,占領下の民衆が過酷な戦争体験を反すうしながら,自由や民主主義,平和の意味を考え,自らのものとしていったことを,彼らの残した日記や雑誌への投稿などの様々な表現を通して生き生きと描き出していきます.
 敗戦からもうすぐ70年,ヘイトスピーチが横行し,また首相自らが立憲主義を否定するなど,戦後日本が様々な限界を抱えながらも築き上げてきた民主主義の足下が切り崩されようとしています.
 自由や民主主義を再び獲得するために――今こそ出発点における人びとの思いや構想を受け継ぐことが必要ではないでしょうか.
吉田浩一

■関連書


● 『増補版 敗北を抱きしめて――第二次大戦後の日本人(上・下)』 ジョン・ダワー/三浦 陽一,高杉 忠明,田代 泰子 訳
● 『フィリピンと対日戦犯裁判――1945-1953年』 永井 均
● 『従軍慰安婦【岩波新書】』 吉見 義明
● 『ハルモニの唄――在日女性の戦中・戦後』 川田 文子
● 『ドキュメント 在日本朝鮮人連盟 1945~1949』 呉 圭祥
吉見義明(よしみ よしあき)
1946 年山口県に生まれる.1970 年東京大学文学部卒業,1972 年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了.現在,中央大学商学部教授.専攻,日本近現代史.
主著に『従軍慰安婦』(岩波新書),『毒ガス戦と日本軍』(岩波書店),『草の根のファシズム――日本民衆の戦争体験』(東京大学出版会),『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(岩波ブックレット),『七三一部隊と天皇・陸軍中央』『フィリピン戦逃避行』(以上共著,岩波ブックレット),『東京裁判――性暴力関係資料』(監修,現代史料出版),『毒ガス戦関係資料』『毒ガス戦関係資料2』(以上共編,不二出版),『従軍慰安婦資料集』(編著,大月書店),『日本軍慰安婦衽衲共同研究』『資料日本現代史4 翼賛選挙1』『資料日本現代史5 翼賛選挙2』『資料日本現代史10 日中戦争期の国民動員1』『資料日本現代史11 日中戦争期の国民動員2』(以上共編,大月書店)などがある.

書評情報

西日本新聞 2017年5月3日
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