岩波現代全書

現代フランス

「栄光の時代」の終焉,欧州への活路

高度成長の時代が終わり,欧州統合に活路を見出すが,極右の台頭,移民問題,テロ事件などが噴出.苦闘を続けるフランスの軌跡.

現代フランス
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著者 渡邊 啓貴
通し番号 67
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 政治・経済・現代社会
シリーズ 岩波現代全書
刊行日 2015/06/18
ISBN 9784000291675
Cコード 0331
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 294頁
定価 本体2,500円+税
在庫 在庫あり
第五共和制初の社会党政権として,「大きな政府」を掲げて出発したミッテラン政権だが,その試みは早々に挫折し,以降,フランスは欧州統合へと活路を見出す.かつての高度経済成長による「栄光の時代」が終わり,極右の台頭や移民問題,テロ事件など,噴出する問題に揺れながらも,それを克服すべく試行するフランスの軌跡.

■編集部からのメッセージ

2015年1月,パリで連続テロ事件が起こりました.イスラム教の預言者ムハンマドを風刺した週刊新聞『シャルリ・エブド』の本社が襲われ,12人が殺害されるなどしました.同事件については,本書でも詳細に分析しています(第4章8).本書をお読みいただければ,この事件は,単にフランスにおける「表現の自由」をめぐる問題だけでなく,様々な背景や根深い社会問題が絡んで起きていることが分かると思います.まさに,フランス社会の矛盾が凝縮された問題と言えそうです.
 本書は,ミッテラン大統領時代から現在のオランド大統領まで,フランスの政治・社会の軌跡を描く現代史です.第五共和政初の社会党政権として,「大きな政府」を掲げて出発したミッテラン政権ですが,財政難により,その試みは早々に挫折を余儀なくされます.そこで,ミッテラン以降,フランスは欧州統合へと活路を見出そうとします.しかし,それは,国民国家としてのアイデンティティを揺るがし,極右の台頭や移民問題などが噴出することにもつながります.また,失業や財政赤字の増大により,社会保障や経済政策でも困難が続きます.
 大国として優れた文化や福祉で「栄光の時代」を築いたフランスの苦闘の姿は,私たち日本社会にも大きな示唆を与えてくれることでしょう.
田中宏幸

■ 関連書

● 『フランス史10講』【岩波新書】 柴田三千雄
● 『欧州連合 統治の論理とゆくえ』【岩波新書】 庄司克宏
● 『9.11以後のイスラーム政治』【岩波現代全書】 小杉 泰
● 『移民社会フランスで生きる子どもたち』 増田ユリヤ
● 『フランス植民地主義と歴史認識』 平野千果子
序 「国境を越えたリストラ」に活路を求めて
第1章 先進福祉社会の転換点――ミッテラン大統領時代
 1 社会党政権誕生の背景――脱工業化・高度福祉社会の模索
 2 新しい社会主義のリーダー・ミッテランとその政策
 3 ミッテランのリアリズム――社会党政権の試練と政策転換
 4 コアビタシオン――首相と大統領の保革共存
 5 第二次ミッテラン政権の時代
 6 第二次ミッテラン政権の展開
 7 コアビタシオン,再び――穏やかな保革共存
第2章 欧州統合の光と影――シラク大統領時代
 1 三度目の正直――シラク政権の誕生
 2 政治家シラクと新政権
 3 欧州通貨統合に揺れたシラク政権
 4 第三次コアビタシオン――シラク大統領とジョスパン首相
 5 大統領選挙に向かうフランスの政治的新潮流
 6 第二次シラク政権の時代
 7 大敗した与党――二〇〇四年の地域圏(州)議会選挙
 8 多極化世界の中のフランスと欧州統合の推進
 9 「パリ燃ゆ」――フランス移民二世たちの暴動
 10 雇用とスキャンダルで揺れたド・ヴィルパン政府
第3章 揺れるナショナル・アイデンティティー――サルコジ大統領時代
 1 サルコジ大統領の誕生
 2 過去との決別
 3 サルコジ政権の苦境
 4 欧州統合の巻き返しと財政危機
 5 サルコジ政権の頂点
 6 人気低落と逆風の中での改革の続行
 7 求心力挽回の試み
 8 ナショナル・アイデンティティーをめぐる議論
第4章 欧州の中のフランスと統合への懐疑――オランド大統領時代
 1 一七年ぶりの社会党政権の誕生
 2 大統領選挙の結果
 3 オランド政権の出発と意味
 4 人気低迷のオランド政権
 5 「欧州の盟主」から転落するフランス
 6 政策転換と苦衷
 7 欧州議会選挙――極右勢力台頭の真の理由
 8 『シャルリ・エブド』事件――先進社会の歪みとテロリズム
あとがき
フランス現代史略年表・主要参考文献
渡邊啓貴(わたなべ ひろたか)
1954 年生まれ.1978 年,東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業,同大学院地域研究研究科修士課程修了,慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了,パリ第1大学大学院博士課程修了,京都外国語大学助教授などを経て現在,東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授・国際関係研究所所長.高等研究院(パリ)・リヨン高等師範大学院・ボルドー政治学院客員教授,ジョージ・ワシントン大学客員研究員,日仏政治学会理事長,在仏日本国大使館公使,『Cahiers du Japon』『外交』編集委員長などを歴任.フランス政治外交論,ヨーロッパ国際関係論専攻.
著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房,1991 年,第9回渋沢・クローデル賞受賞),『フランス現代史』(中公新書,1998年),『ポスト帝国』(駿河台出版社,2006年),『米欧同盟の協調と対立』(有斐閣,2008年),『フランスの「文化外交」戦略に学ぶ』(大修館書店,2013年),『シャルル・ドゴール』(慶應義塾大学出版会,2013年)など.編著に『ヨーロッパ国際関係史』(有斐閣,2002年),『世界からみたアジア共同体』(芦書房,2015年)など.訳書にR・ジロー『国際関係史 1871―1914年』(共訳,未来社,1998年)など.
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