ヴァイマル憲法とヒトラー

戦後民主主義からファシズムへ

史上最も民主的とされるヴァイマル憲法下で,ヒトラーはいかにして人心を掌握し,政権を獲得したのか.

ヴァイマル憲法とヒトラー
著者 池田 浩士
通し番号 68
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 歴史・伝記
刊行日 2015/06/18
ISBN 9784000291682
Cコード 0322
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 294頁
在庫 品切れ
〈どんどん先へ走りつづけて,とうとう遥か彼方の左右に壁が見えたときには,とても幸せな気持ちだった.でも,この長い壁が急速に両側から迫ってきて…〉――カフカの寓話に描かれた走りつづけるネズミは,ファシズムに魅了された民衆とは言えまいか.第一次世界大戦後の戦後民主主義を体現するヴァイマル憲法下で,ヒトラーは人心を掌握し,合法的に政権を獲得した.ドイツ国民を魅了したナチズムの本質を抉り出し,新たなファシズムの到来に警鐘を鳴らす.


■編集部からのメッセージ
 本書について池田浩士先生とご相談を始めた当初,大阪維新の会とナチ党とを重ねあわせて現代日本の危機を論じていただこうかとも考えていました.なぜなら,ナチ党は維新の会と同様,一地方政党から出発し,ドイツ全土を席捲したからです.ですが,打ち合わせを進めるうちに,維新の会よりも,安倍政権そのものを念頭に置いてナチス・ドイツを論じていただこうと方針転換しました.2015年6月現在の政治状況を考えると,それが正解だったとあらためて感じます.
 池田先生は本書のなかで,「一度でも現実となったことは,以後いつでも可能なことになったのだ」というルカーチの言葉を引いて,ナチズムに抵抗した人びとの存在に希望を見出しています.しかし,これは逆についても言えます.つまり,一度でもファシズムが現実となった以上,それは「以後いつでも可能なことになった」のです.
 本書は,日本の現状を考えるうえで,非常に示唆に富む一冊です.じっくりとお読みいただければ幸いです.
藤田紀子
Ⅰ もう一つの戦後民主主義とドイツのファシズム
はじめに――戦争とファシズムの世紀
1 一九三三年一月三〇日――ヒトラー内閣の誕生
2 ナチスは合法的に国家権力を掌握した
3 革命運動としてのナチズム

Ⅱ ドイツの敗戦,もっとも民主的な憲法
はじめに――民族・国家・国民
1 ドイツ革命からヴァイマル共和国へ
2 ヴァイマル憲法と最初の戦後民主主義
3 匕首伝説の説得力

Ⅲ 戦争する国をボランティアが担う
はじめに――ファシズムとは何か?
1 国民はなぜナチズムを支持したのか?
2 自発性と社会参加――善意とやる気の組織化
3 「労働奉仕」の法制化と義務化

Ⅳ 死と政治
はじめに――ヴァルハラという靖国神社
1 ヒトラー政権はまず最初に誰を抹殺したか?
2 国家儀礼から戦争国家へ――ファシズム政治の大道
3 ボランティア労働からホロコーストまで

Ⅴ 遥かな国の遠い昔ではなく
はじめに――ふたたびファシズムとは何か?
1 ナチス・ドイツと歴史認識
2 二つの憲法,二つの戦後民主主義
3 「戦争のできる国」から「戦争する国」へ


あとがき
池田浩士(いけだ ひろし)
1940年生まれ.慶応義塾大学大学院博士課程修了.1968-2004年京都大学,2004-13年京都精華大学に在職.現在は自由業.専攻は現代文明論・ファシズム文化研究.
主な著書に,『虚構のナチズム――「第三帝国」と表現文化』(人文書院),『子どもたちと話す 天皇ってなに?』(現代企画室),『[海外進出文学]論・序説』,『同・第Ⅰ部 火野葦平論』,『同・第Ⅱ部 石炭の文学史』,『池田浩士コレクション』全10巻・刊行中(以上,インパクト出版会)などがある.

書評情報

現代の理論 デジタル版第6号(2015年11月)
季刊ピープルズ・プラン 第70号(2015年10月)
市民の意見30の会・東京ニュース 2015年10月1日号
日本経済新聞(朝刊) 2015年9月6日
北海道新聞(朝刊) 2015年9月6日
東京新聞(朝刊) 2015年8月16日
京都大学新聞 2015年7月1日号

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