「戦跡」の戦後史

せめぎあう遺構とモニュメント

戦争体験を伝えるメディアとしての戦跡.その戦跡の歴史を通して,戦争の記憶のポリティクスを描き出す.

「戦跡」の戦後史
著者 福間 良明
通し番号 72
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 歴史・伝記
刊行日 2015/08/19
ISBN 9784000291729
Cコード 0321
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 292頁
定価 2,750円
在庫 在庫僅少
広島の原爆ドームや沖縄・摩文仁丘の平和祈念公園などの戦跡は,戦後日本において広く戦争体験を伝えるメディアであり続けてきた.これらの戦跡はいかに生み出され,どのように人々の戦争観の形成に関わったのか.そこではいかなる戦闘体験の「継承」「断絶」が生じたのか.各地の戦跡の歴史を通して,戦争の記憶のポリティクスを描き出す.

■編集部からのメッセージ

福間先生は本書の中で,原爆ドームなどの戦跡を,「知識人言説や活字・映像メディア以上に,大衆レベルの戦争観の形成に深く関わってきた」と位置づけています.私自身,15歳の時にはじめて訪れた原爆ドームの前で圧倒された記憶があります.と同時に,きれいに整備され,立ち入りも禁止されたドームの現状にかすかな違和感を覚えたことも事実です.本書は,それらの戦跡が様々な社会的条件や力学の中で,どのようにしていまの姿になったのかを,膨大な資料を渉猟しながら明らかにしてゆきます.
 戦後の日本の中で,アジア・太平洋戦争は決して均一のイメージで認識され,語られてきたわけではありません.安保法制をめぐる議論などを通して,恣意的に戦争のイメージが塗り替えられようとするいま,ぜひご一読下さい.

■ 関連書

● 『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争――岩波講座アジア・太平洋戦争 戦後篇』 成田龍一,吉田裕 編
● 『原爆体験と戦後日本――記憶の形成と継承』 直野章子
● 『「戦争経験」の戦後史――語られた体験/証言/記憶〈シリーズ 戦争の経験を問う〉』 成田龍一
● 『兵士たちの戦後史〈シリーズ 戦争の経験を問う〉』 吉田裕
● 『焼跡からのデモクラシー――草の根の占領期体験(上・下)』【岩波現代全書】 吉見義明
福間良明(ふくま よしあき)
1969 年,熊本市生まれ.京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了.博士(人間・環境学).出版社勤務,香川大学経済学部准教授を経て,現在,立命館大学産業社会学部教授.専攻はメディア史・歴史社会学.
著書に『「反戦」のメディア史――戦後日本における世論と輿論の拮抗』(世界思想社,2006 年),『「戦争体験」の戦後史――世代・教養・イデオロギー』(中公新書,2009 年),『焦土の記憶――沖縄・広島・長崎に映る戦後』(新曜社,2011 年),『二・二六事件の幻影――戦後大衆文化とファシズムへの欲望』(筑摩書房,2013 年),『「聖戦」の残像――知とメディアの歴史社会学』(人文書院,2015 年)など.

書評情報

週刊読書人 2015年12月18日号
週刊読書人 2015年12月11日号
毎日新聞(朝刊) 2015年11月10日
出版ニュース 2015年11月上旬号
南日本新聞 2015年10月11日
北海道新聞(朝刊) 2015年9月27日
東京新聞(朝刊) 2015年9月20日
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