私たちの声を議会へ

代表制民主主義の再生

民意を政治に反映させるにはどうすればいいのか.代表制民主主義の危機を克服する方途を探る.

私たちの声を議会へ
著者 三浦 まり
通し番号 78
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 政治・経済・現代社会
刊行日 2015/11/18
ISBN 9784000291781
Cコード 0331
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 230頁
定価 2,200円
在庫 在庫あり
民主的であるはずの選挙を通じて,権力が一部の人間に集中してしまう――.日本では少数のエリートが意思決定を独占し,人びとの意見が政治に反映されない状態が続いている.機能不全に陥った代表制民主主義を再生させるにはどうすればいいのか.代表の機能を鍛え直し,政治と私たちとの回路を開くための真摯な考察.


■編集部からのメッセージ
 立法・行政・司法の三権分立が日本の政治の根幹であり,立法機関すなわち国会が国権の最高機関です.また,議院内閣制をとる日本では,国会の多数派が内閣を組織し,行政を司ります.だからこそ三権分立が非常に重要なのですが,近年は行政の専横が目に余る状況が続いています.
 国会議員は私たちの代表として政治に携わっています.しかし今の日本では,代表を通じた民主政治(代表制民主主義)は十全に機能しているとは言えません.こうしたなかで,主権者たる私たちの声を議会に届けるにはどうしたらいいのでしょうか.
 本書で三浦まり先生は,代表の概念を洗い出し,代表であるとはどういうことなのかを根本から問い質します.そして,特定秘密保護法や安保関連法の審議過程で現れた,SEALDsをはじめとする多様な直接民主主義的な動きを踏まえ,議会と私たちとをつなぐ回路をもっと太く,強くしていくにはどうすればいいのかを考察します.
 今,日本の政治をあきらめないために,読むと勇気がわいてくる一冊です.ぜひお手にとってみてください.
藤田紀子
はじめに

第1章 代表とは何か――代表制と代表性
1 代表とは
2 代表することとは
3 代表と当事者性
4 代表制/性の新しい地平

第2章 政党は何をめぐって競争するのか――政党対立軸の変遷と責任政党政府
1 政党対立軸の原型――五五年体制
2 ポスト五五年体制の政党対立軸――新自由主義とそれへの対抗
3 カルテル政党化現象と文化戦争

第3章 参加を考える――議会の外の代表制/性
1 政策過程における代表制/性
2 労働政治から見た代表制/性
3 実質的な競争に向けて
4 さまざまな「参加」の組み込み方

第4章 「分配」と「承認」をめぐる政治
1 日本の福祉国家の特徴――党派性からの接近
2 政党競争と福祉国家の変容
3 新たな対立軸の模索
4 文化対立の時代

第5章 再び参加を考える――グローバル化と経済格差
1 寡頭制の出現
2 企業の政治的影響力拡大のメカニズム
3 再び政党政治へ

終章 私たちの声を議会へ

引用文献
おわりに
三浦まり(みうら まり)
1967年生まれ.上智大学法学部教授.専攻は政治学,現代日本政治論,ジェンダーと政治.慶應義塾大学大学院法学研究科およびカリフォルニア大学バークレー校大学院修了.同大学でPh.D.取得.東京大学社会科学研究所研究機関研究員等を経て,現職.
主な著作に,『ジェンダー・クオータ』(衛藤幹子と共編著,明石書店,2014年),『流動期の日本政治』(樋渡展洋と共編,東京大学出版会,2002年),Welfare through Work: Conservative Ideas, Partisan Dynamics, and Social Protection in Japan, Cornell UP, 2012,「労働政治のジェンダー・バイアス」(『ジェンダー社会科学の可能性 第3巻 壁を超える』辻村みよ子編,岩波書店,2011年)等がある.

書評情報

公明新聞 2016年1月18日
ふぇみん 2016年1月15日号
東京新聞(朝刊) 2016年1月10日
朝日新聞(朝刊) 2015年12月27日
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