岩波現代全書

無差別テロ

国際社会はどう対処すればよいか

無差別テロは世界をどう変えたのか,国際社会はどう取り組めばいいのか.国際法学の立場から提言する.

無差別テロ
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著者 金 惠京
通し番号 82
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 政治・経済・現代社会
シリーズ 岩波現代全書
刊行日 2016/01/19
ISBN 9784000291828
Cコード 0331
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 224頁
定価 本体2,000円+税
在庫 在庫あり
9.11同時多発テロ以降,テロは身近に迫る危機となり,非人道性・無差別性があらわになってきている.テロによる市民の暴行を止めるとしながら,人権や主権を侵害する傾向が強まり,暴力の連鎖が止まらない.無差別テロは世界をどう変えたのか,国際社会はどう取り組めばいいのか.国際法学の立場からテロを定義し対策を提言する.


著者近影著者近影


■編集部からのメッセージ

日本でこそ考えたい無差別テロ
 ISによるパリ,イスタンブール,ジャカルタでの同時多発テロの陰惨な記憶から冷めやらぬうちに,本書は刊行されます.911事件以来,世界各地で不特定多数の市民を狙った大規模殺傷を伴う無差別テロが頻繁に起こっています.無差別テロが起こったとき,テレビや新聞メディアなどでコメンテーターとして呼ばれるのは大体がその地域の研究者か国際政治学者です.そのさい,軍事力による制裁の是非をめぐってコメントし,暴力の連鎖への懸念を表明することが多いようです.暴力の応酬は犠牲者を増やすだけで真の解決策にならないことはこれまでの歴史が証明しています.だからといってほかのいかなる施策があるのかについての展望がなかなか得られません.
 著者の金惠京(キム・ヘギョン)さんは,ご専門の国際法の立場から,無差別テロを未然に防ぎ,起こってしまった後の犠牲者への補償問題について,「無差別テロ」の明確な定義づけを試みたうえで,解決のための国際法・条約・協定などの司法措置による処方箋を提示しています.彼女自身一時期ニューヨークに住み,911事件の犠牲者の遺族への聞き取りをしたこと,学生生活を送り,居住している日本の平和憲法の意義を深く理解していることが,本書執筆の動機になっています.
 実は日本こそが「無差別テロ」を考える重大なモデルケースなのです.1995年に地下鉄サリン事件がありましたし,70年代はよど号ハイジャック事件をはじめ,世界各地で連合赤軍によるいくつものテロ事件を経験してきました.テレビや雑誌連載などでおなじみのヘギョンさんは優しくてエレガントなイメージがありますが,本書をお読みいただければ,ご専門とご経験に裏打ちされた土性骨の太い真摯なメッセージが伝わることと思います.
馬場公彦
序章
第1章 テロの歴史的経緯
 1 “既存”が通用しないテロ
 2 一九八〇年代までのテロの系譜
 3 市民への無差別テロ横行の時代
  九・一一同時多発テロ遺族との対話 白鳥晴弘氏
第2章 被害者の目線から見たテロ
 1 なぜテロの被害を補償する発想が生まれるのか?
 2 九・一一同時多発テロにおけるアメリカの反応
 3 日本のテロ被害者補償――地下鉄サリン事件とアルジェリア人質テロを事例に
 4 テロ補償法制度の課題
第3章 九・一一同時多発テロが変えた世界
 1 テロリストとの戦争の合法性
 2 テロリスト殺害における違法性の是非
 3 テロ対策とプライバシー侵害
第4章 テロに対抗する国際的協調体制
 1 テロの方法に注目した対テロ条約
 2 テロの手法に注目した対テロ条約
 3 国際テロ関連条約の課題と評価
第5章 テロの定義確立を目指す国際社会
 1 解決に足をかけた国際テロ対応条約
 2 法の解決の重荷となるテロの定義
 3 無差別テロを規制するためのテロの定義
終章
 1 人権意識に沿ったテロ対策
 2 暴走を抑止するのは平時の蓄積
あとがき
参考文献
金 惠京(キム・ヘギョン)
ソウル生まれ.日本大学総合科学研究所准教授.博士(学術).明治大学法学部卒業,早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程修了.ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師,ハワイ大学韓国研究センター客員教授,明治大学法学部助教を経て現職.
著作に『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(2011年,早稲田大学出版部),「国際取引における不正な資金移動規制に関する一考察――テロ対策受容における日本の課題」『法律論叢』(2014年),“International Criminal Law Issues in the Fight against Terrorism: The Criminalisation of Conspiracy in Japan and South Korea”,Historcal Origins of International Criminal Law(2015)など多数.

書評情報

週刊ダイヤモンド 2016年3月5日号
日本経済新聞(朝刊) 2016年2月28日
東京新聞(朝刊) 2016年2月21日
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