沖縄戦後民衆史

ガマから辺野古まで

今も続く差別や苦しみの中,民主主義を勝ち取ってきた沖縄の戦後史を,ひとびとの声を通して描き出す.

沖縄戦後民衆史
著者 森 宣雄
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 歴史・伝記
刊行日 2016/03/17
ISBN 9784000291866
Cコード 0321
体裁 四六 ・ 294頁
在庫 品切れ
県民の四人に一人が死亡した沖縄戦,辛くも生き延びた三二万人の戦後は軍事収容所から始まった.米軍による占領と軍政,日本「復帰」後も変わらない基地負担や米兵の犯罪,そして辺野古基地移転問題――いまも続く差別と苦しみに対峙し,自力で民主主義を勝ち取ってきた沖縄の戦後史を,ひとびとの無数の声を通して生き生きと描き出す.

■編集部からのメッセージ

2013年1月28日,沖縄全市町村長・議長などからなる超党派の「オール沖縄」代表団が上京し,在沖米軍基地へのオスプレイ配備撤回,普天間基地の廃止と県外移設を求める「建白書」を,安倍晋三首相に手渡しました.「建白書」提出前日に行われたデモ行進では代表団に対し,「売国奴」「日本から出て行け」といった,聞くに堪えない罵声が浴びせられたといいます.そして,それから3年経った今も,沖縄の空にはオスプレイが飛んでいます,普天間基地にかわる辺野古新基地の建設についても,県と国の法廷闘争はひとまず「和解」しましたが,依然として予断を許さない状況が続いています.
 なぜ,私を含む多くの日本人は沖縄の苦難に対して見て見ぬ振りができるのでしょうか.いや,そもそも沖縄に在日米軍基地のほとんどが集中していることを知らない人が多いのではないか,もしかしたら沖縄が1972年までアメリカの統治下にあったことすら知らない人もいるのかもしれない……そんなことすら思わずにはいられません.
 沖縄の「いま」を知るためには,その歴史を知ることが不可欠です.沖縄のひとびとが歩んできた戦後の道のりは苦難にみちたものですが,森宣雄さんが本書で描くその歴史は,不思議な明るさにいろどられています.それは県民の四人に一人が亡くなった地獄のような沖縄戦を生き延び,その後も占領・統治下で様々な暴力にさらされてきたひとびとが,世界で最も民主的な憲法の一つとされる日本国憲法とその下での民主的・平和的な社会を,自らの力で獲得しようとしてきた歴史だからかもしれません.
 沖縄のひとびとが命がけで獲得してきた民主主義・平和主義を,もう一度日本に取り戻すことが出来るかどうか――いまそのことが問われているのではないでしょうか.
吉田浩一

■ 関連書

● 『日本にとって沖縄とは何か』【岩波新書】 新崎盛暉
● 『沖縄現代史 新版』【岩波新書】 新崎盛暉
● 『沖縄の戦後思想を考える』 鹿野政直
● 『沖縄の傷という回路』 新城郁夫
● 『差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで』【岩波現代全書】 黒川みどり,藤野豊

書評情報

クリスチャン新聞 2018年7月1日
歴史地理教育 2017年10月号

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