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刑法入門
刑法学の第一人者が,犯罪と刑罰をめぐる基本的な考え方を丹念に解説する.裁判員時代の必読文献.
犯罪とは何であり,なぜ犯罪者には刑罰が科せられるのであろうか.また,「罪が犯された」と言うためには,どのような条件が必要なのか.刑事裁判に市民が参加する裁判員制度が導入されるなど,私たちも刑法の基本を理解することがこれまで以上に求められている.刑法学の第一人者が,犯罪と刑罰をめぐる考え方を解説する.
編集部からのメッセージ
犯罪はどんなときに成立するのか?
人はどんなことをすれば、刑罰を科されるのでしょうか。その答えは、刑法の条文を読めば、すぐに出てくることではないか、と私などは思っていましたが、どうやら、それほど単純な話ではなさそうです。
本書の「はしがき」では、次のようなケースが紹介されています。
出刃包丁でAさんの胸を狙って刺し、それでAさんが死ねば、殺人罪で処罰される。これは明らかなことです。では、Bさんを殺そうと拳銃を発射したところ、弾がはずれ、たまたま近くを歩いていたCさんに当たって死んでしまった場合は、殺人罪に問われるのでしょうか。あるいはまた、喧嘩でDさんを殴り、それで怪我をしたDさんが救急車で病院へ運ばれる途中、不運にも交差点でタンクローリーと衝突して救急車が燃え上がり、Dさんが焼け死んでしまったというような場合は、どうでしょう。殴った人はどんな罪をおかしたことになるのでしょうか。
こうした問題について、「法の論理」を組み立てて、適切な答えを見つけることが、刑法について考える面白さであり、また難しさでもあるようです。本書は、刑法学の第一人者が、刑法的思考の深い森の入口へと私たちを誘ってくれる本です。犯罪とは何か、刑罰はなぜ科されるのか、という根本的な問題からはじまって、どういう条件がそろえば「犯罪」は成立するのか(あるいは成立しないのか)をめぐって、やさしい語り口で解説しています。
はしがき
第1章 犯罪と刑罰とは何なのか
1 罪と罰
2 刑事手続のあらまし
3 法的な禁止の対象―犯罪
4 法的な禁止の手段―刑罰
第2章 犯罪は法律で作られる
1 罪刑法定主義とは
2 法律で罰則を定める
3 罰則は制定前に遡って適用できない
4 許されない罰則――内容の適正さ
第3章 犯罪はどんなときに成立するのか
1 犯罪の成立ち
2 犯罪被害―結果
3 行為と結果の結び付き―因果関係
4 犯人の行為とは
5 犯人の意思―故意・過失
6 犯罪のかたち―未遂と共犯
第4章 犯罪はどんなときに成立しないか
1 犯罪の成立が否定される場合
2 違法性がなくなる理由
3 正当防衛
あとがき
索引
第1章 犯罪と刑罰とは何なのか
1 罪と罰
2 刑事手続のあらまし
3 法的な禁止の対象―犯罪
4 法的な禁止の手段―刑罰
第2章 犯罪は法律で作られる
1 罪刑法定主義とは
2 法律で罰則を定める
3 罰則は制定前に遡って適用できない
4 許されない罰則――内容の適正さ
第3章 犯罪はどんなときに成立するのか
1 犯罪の成立ち
2 犯罪被害―結果
3 行為と結果の結び付き―因果関係
4 犯人の行為とは
5 犯人の意思―故意・過失
6 犯罪のかたち―未遂と共犯
第4章 犯罪はどんなときに成立しないか
1 犯罪の成立が否定される場合
2 違法性がなくなる理由
3 正当防衛
あとがき
索引
山口厚 (やまぐちあつし)
1953年生まれ
1976年東京大学法学部卒業
現在─最高裁判所判事,東京大学名誉教授
専門─刑法学
著書─『危険犯の研究』(東京大学出版会)
『刑法総論[第3版]』
『刑法各論[第2版]』
『刑法[第3版]』(以上,有斐閣)ほか
共著─『理論刑法学の最前線』
『理論刑法学の最前線Ⅱ』(以上,岩波書店)ほか
1953年生まれ
1976年東京大学法学部卒業
現在─最高裁判所判事,東京大学名誉教授
専門─刑法学
著書─『危険犯の研究』(東京大学出版会)
『刑法総論[第3版]』
『刑法各論[第2版]』
『刑法[第3版]』(以上,有斐閣)ほか
共著─『理論刑法学の最前線』
『理論刑法学の最前線Ⅱ』(以上,岩波書店)ほか
書評情報
朝日新聞(朝刊) 2008年8月17日