岩波新書〈シリーズ 日本古代史〉 1

農耕社会の成立

(全6巻)

縄文時代はなぜ終わり,弥生時代はどのように始まったのか.歴史の最初の大きな分岐点を丹念に描く.

農耕社会の成立
著者 石川 日出志
通し番号 新赤版 1271
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 日本史
シリーズ 岩波新書〈シリーズ 日本古代史〉
刊行日 2010/10/20
ISBN 9784004312710
Cコード 0221
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 252頁
定価 1,012円
在庫 在庫あり
縄文の集落から弥生の農耕社会へ.稲作の導入を契機とする,日本列島の歴史の大きな分岐点は,しかし,「縄文人から弥生人へ」という単純な交代ではなく,複線としての歴史の始まりであった.北海道から沖縄まで列島全体をひろく視野に,ゆたかな地域性を保ちつつ緩やかに変わってゆく列島の姿を新鮮に描きだす.


■著者からのメッセージ
 弥生文化のイメージを尋ねると、「縄文人」とはまったく異なる人びとが、新たにつくりだした文化だと考える方が多いのではないでしょうか。専門家を見ても、縄文時代と弥生時代を合わせて研究する人はまれで、弥生時代を専門とする人の関心はむしろ後の古墳時代に及ぶ場合が多いので、研究面でも縄文と弥生は断絶気味だといってもよい状況です。しかし、弥生時代の文化は各地でずいぶん様子が異なり、それは縄文時代以来の伝統が各地に息づいているからに他なりません。弥生文化は縄文文化の後継者なのです。弥生時代の舞台としては、九州や近畿を思い浮かべる方が多いでしょうが、それだけではなく、東日本にもまた弥生文化は広がっていました。さらに北海道や沖縄にはまた別の文化が育っていました。
 本書では、弥生時代の文化が地域ごとの伝統をもちつつ、相互に関連しあって展開することを重視しています。日本列島を舞台とする歴史が、弥生時代以後「複線化」する様子が伝われば幸いです。
(石川日出志)


■内容紹介
 おかげさまで大好評をいただいている「日本近現代史」(全10巻、完結)「中国近現代史」(全6巻、刊行中)につづいて、シリーズ「日本古代史」の刊行がはじまります。
 近年、古代史の研究においては、考古学の成果が積極的に取り入れられるようになったこと、あるいは韓国や中国と共同研究が行なわれるようになったことなど、さまざまな変化が起こっているようです。本シリーズではそうした研究の進展を活かし、6巻にわたって「もっとも新しい古代史」を描いてゆく予定です。
 本書では、旧石器・縄文時代から邪馬台国の時代まで、稲作の導入を契機として日本列島にしだいに「社会」が生まれてゆく様子を、考古学の立場から描き出します。「弥生文化」といえば、海の向こうからやってきた「渡来人」が「縄文人」に代わって築きあげた文化―という一般的なイメージは、果たしてゆるぎないものかどうか? 縄文からの連続性と地域文化の豊かさに着目し、列島の各地で起こった変化を克明に追いながら弥生時代の「実像」にせまる、第一巻にご期待下さい。
はじめに―三つの道筋から日本列島をみる

第一章 発掘された縄文文化
 1 「日本列島の歴史」のはじまり
 2 移動から定住へ
 3 集落と相互の交流
 4 縄文時代はなぜ終わったか

第二章 弥生時代へ―稲作のはじまり
 1 「初めに板付ありき」
 2 米はどこから来たか
 3 稲作と米食の技術
 4 生業の複合性
 5 「弥生時代」を定義する

第三章 弥生社会の成長―地域ごとの動き
 1 大陸からきた文化要素
 2 弥生集落の成長―北部九州
 3 集団間・集団内格差の拡大―北部九州
 4 銅鐸祭祀の発達―近畿周辺
 5 環濠の採用―中部・関東
 6 色濃い縄文の伝統―東北

第四章 弥生文化を取り巻く世界
 1 歴史の道の複線化
 2 卓越した漁撈の民―北海道続縄文文化
 3 サンゴ礁の民―南島後期貝塚文化
 4 朝鮮半島と東アジア

第五章 生まれいづる「クニ」
 1 金印がつたえる世界
 2 「祭祀」と「墓」の変質
 3 日本海の「鉄器」文化
 4 考古学がみる「邪馬台国」

おわりに―「弥生時代」を問い直す

 図版出典一覧
 参考文献
 略年表
 遺跡名索引・主要事項索引
石川日出志(いしかわ・ひでし)
1954年、新潟県に生まれる。1983年、明治大学大学院文学研究科博士課程中退。現在、明治大学文学部教授。
専攻は考古学。
著書─『「弥生時代」の発見』(新泉社)、『弥生人のまつり』(共著、六興出版)、『考古資料大観1 弥生・古墳時代土器1』(共著、小学館)、『弥生時代の考古学7』(共著、同成社)ほか。

書評情報

日本農業新聞 2014年1月26日
読売新聞(朝刊) 2010年12月20日
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