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WTO

貿易自由化を超えて

今,岐路に立つWTO.話題のTPPとの違いとは.その誕生から現在までを1冊で読み解き,展望を示す.

WTO
著者 中川 淳司
通し番号 新赤版 1416
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 経済
刊行日 2013/03/19
ISBN 9784004314165
Cコード 0233
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 248頁
在庫 品切れ
WTOは今,岐路にある.現在,話題のTPPやFTA,EPAとはどう違うのか.その変化は私たちの暮らしにどう影響するのか.「自由な競争を公正に行える土台を整えることこそが,世界から貧困と紛争をなくす力になるはずだ」との思いではじまった前身のGATTの時代から現在までの歴史を見通し,課題と展望を提示する.
はじめに──WTOは、いま
 原発事故と対日輸入制限/国際的な生産ネットワークへの影響/WTOとわたしたちの暮らし/保護主義に抗して/分岐点に立つWTO

第1章 ガットからWTOへ
 1 第二次世界大戦後の貿易体制構想
 ITO構想の挫折とガットの成立/ハル国務長官の思想/大西洋憲章第四項/米英相互援助協定第七条/ITO憲章/ガットの成立/ITOの挫折
 2 ガットの歩み
 草創期のガット事務局/ガットの歩み/日本の加入/ケネディラウンド/東京ラウンド/農産品の貿易制限/ガットと途上国/貿易摩擦の激化/米国の一方的制裁措置/ウルグアイラウンド/テーマごとの攻防

第2章 WTO、一八年の歩み
  コラム WTOの加盟国
 1 WTOの誕生と成長
 ジャクソン教授の構想/WTOの成立過程
  コラム もう一つのWTO(世界観光機関)
 シンガポール閣僚会議/情報技術協定(ITA)/紛争解決手続の整備/日米自動車紛争
 2 つまずきと克服の努力──シアトルからドーハへ
 シアトル閣僚会議の失敗/失敗の背景/ドーハ閣僚会議での進展/中国のWTO加盟/貿易関連知的所有権協定と公衆衛生/ドーハ開発アジェンダの難航/世界金融危機とWTOの対応

第3章 どんな組織が、何をしているのか
 1 WTOの任務
 WTO協定の構造/WTO協定の実施──第一の任務/貿易自由化の推進──第二の任務/政府調達市場の自由化/紛争解決──第三の任務/貿易政策の検討──第四の任務/IMF、世界銀行との協力──第五の任務
 2 WTOの組織
 WTO加盟交渉/WTOの組織/閣僚会議と一般理事会/理事会・委員会/事務局長と事務局/ガット・WTOの事務局長/WTOの予算と財政/WTOの意思決定

第4章 WTOの貿易規律
 1 貿易自由化の原則と例外
 無差別原則/最恵国待遇原則/内国民待遇原則
  コラム 日本の酒税事件
 多角的関税交渉と関税譲許/数量制限の禁止/一般的例外と安全保障のための例外
 2 国内産業への配慮
 セーフガード/セーフガードの発動要件/アンチダンピング税と補助金相殺関税
 3 農産品と繊維製品の貿易ルール
 農業協定/衛生植物検疫措置協定(SPS協定)/EU─ホルモン牛肉事件/繊維協定
 4 サービス貿易と知的所有権
 サービスの貿易に関する一般協定(GATS)/GATSが加盟国に課す一般的義務/約束内容に応じて課す特定の義務/サービス貿易自由化の進展/貿易関連知的所有権協定(TRIPS協定)/知的所有権の範囲/途上国と先進国

第5章 WTOの紛争解決手続
 1 手続の流れ
 越境賭博禁止事件/WTO紛争解決手続の特色/パネル手続/上級委員会手続/勧告の履行
 2 利用実績
 紛争解決手続の利用実績/途上国の申立てはなぜ少ない
  コラム パネル報告・上級委員会報告の拘束力
 WTO法助言センター/中国と紛争解決手続/日本の申立てはなぜ少ない/企業とWTO紛争解決手続/WTO紛争解決手続の見直し
 3 ソフトな履行確保の手段
 貿易政策検討制度(TPRM)/通報・審査制度/深刻な対立を回避する

第6章 WTOと市民社会
 1 WTOは環境保護に敵対するか
 シアトル閣僚会議と市民の抗議/ガットと環境保護──マグロ・イルカ事件/WTOと環境保護──エビ・ウミガメ事件/生産・製造工程規制と産品規制
 2 WTOは雇用・労働条件を悪化させるか
 貿易自由化と雇用・労働条件/ガットと社会条項/WTOと社会条項/ILOの消極的な姿勢/ILO基本権宣言
  コラム 自由貿易協定(FTA)と基本権宣言
 3 WTOは食の安全を犠牲にするか
 WTOと食品安全──SPS協定の基本的な規律/国際基準とSPS措置の関係/SPS協定五条
  コラム 日本の牛肉輸入規制措置とSPS協定
 4 貿易自由化との両立のために
 貿易自由化と非貿易的な価値の調整/民間基準を通じた非貿易的価値の追求/民間基準をどうとらえるか

第7章 WTOと途上国
 1 自由貿易に加わる途上国
 ガットにおける途上国の地位──一九八〇年代の変化
  コラム 途上国の定義
 ウルグアイラウンドと途上国/途上国に対する規律の強化/ウルグアイラウンドの決着/特別かつ異なる待遇(S&D)/S&Dにおける機能不全/WTO協定の「実施問題」/ドーハ決定
 2 途上国への支援
 キャパシティ・ビルディングとは/キャパシティ・ビルディングの内容/貿易のための援助(AfT)/カンボジアに対する日本のAfT/開発援助と貿易との連携を/後発途上国向け支援──拡大統合枠組

第8章 WTOはどこへ行く
 1 台頭するFTA
 ドーハ開発アジェンダはなぜ行き詰まったのか/ウルグアイラウンドとの違いは何か/ドーハ開発アジェンダはこの先どうなるのか/FTAはなぜ急増したのか/FTAは何を目指しているのか──TPPの対象事項/生産ネットワークの国際化
 2 WTOを見直す
 WTOに活路はあるか/WTOの再活性化を

あとがき
主要参考文献
略語一覧
中川淳司 (なかがわじゅんじ)
 1955年広島県に生まれる
 1979年東京大学法学部卒業,1988年東京大学法学博士.東京工業大学工学部人文社会群助教授等を経て,
 現在─東京大学社会科学研究所教授
 専攻─国際経済法
 著書─『資源国有化紛争の法過程』(国際書院)
   『経済規制の国際的調和』(有斐閣)
   『国際経済法 第2版』(共著,有斐閣)
   『ケースブック WTO法』(共著,有斐閣)
   International Harmonization of Economic Regulation , Oxford University Pressほか

書評情報

読売新聞(朝刊) 2018年4月6日
週刊エコノミスト 2013年4月23日号
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