岩波講座 教育 変革への展望 1

教育の再定義

教育の再定義
著者 佐藤 学 編集委員 , 秋田 喜代美 編集委員 , 志水 宏吉 編集委員 , 小玉 重夫 編集委員 , 北村 友人 編集委員
ジャンル 書籍 > シリーズ・講座・全集 > 岩波講座
シリーズ 岩波講座 > 岩波講座 教育 変革への展望
刊行日 2016/04/27
ISBN 9784000113915
Cコード 0337
体裁 A5 ・ 上製 ・ 258頁
在庫 品切れ
本企画全体の見取り図となる第1巻には,5つの重要テーマにそくした編者による論文を収め,関係の専門領域で活躍する識者との対話を掲載する.ゲスト=湯浅誠(社会活動家),宮本太郎(政治学),湯澤直美(社会福祉),鈴木寛(元文部科学副大臣),酒井啓子(中東研究).

■全巻構成

第1巻 教育の再定義

第2巻 社会のなかの教育

第3巻 変容する子どもの関係 〈第3回/7月28日発売〉

第4巻 学びの専門家としての教師

第5巻 学びとカリキュラム

第6巻 学校のポリティクス

第7巻 グローバル時代の市民形成

■刊行にあたって

21世紀は,教育が,政治,社会,経済,文化の未来を決定する時代である.
 近代の象徴として,国民国家の統合と産業主義社会の発展という二つの動因によって推進された公教育は,グローバリゼーションとポスト産業主義社会の出現により,その価値と意味を問われることとなった.教育は「量」の時代から「質」の時代へと転換し,教育内容,学びの様式,教育システムのイノベーションが求められるとともに,排除と差別による教育格差が顕在化し,学ぶ者の権利の保障と平等の実現が,ひっ迫した課題として浮上している.
 そのような課題を受けて本講座では,教育改革の指標を「質と平等の同時追求」として設定した.知識が高度化,複合化し,流動化する社会において,教育はどのような知識と学びを,子どもたちに提供すべきなのだろうか.一人も排除せず,一人残らず学びの主権者に育てる教育は,どのような哲学と実践と制度によって可能になるのだろうか.
 現在,教育現場には改革の波が押し寄せているが,それらは子どもや教師や親の声から出発するというよりも,政治,経済,マスメディアなどの外在的な力によって発せられ,教育の内在的な規範や実践を突き崩すという深刻な状況にある.この現実を内破する実践は,どのようにして改革の希望を生み出すことができるのだろうか.
 以上のような状況に対して,教育学は手をこまねいてきたわけでもなければ,無力でもない.本講座は,教育改革の実践的,理論的,政策的課題を教育の内側から問い直し,教育学を専門とする研究者の最先端の知識によって探究し,教育に携わる市民,教師,学生,研究者に最も信頼しうる知見を提供することを企図している.
 本講座は五つの基本方針によって編集した.第一は,提供する知識の〈先進性〉である.第二は,教育の専門的知識の〈実践性〉である.第三は,教育を探究し実践する〈当事者性〉である.第四は,教育の議論における〈科学性と実証性〉である.そして第五は,教育を探究し政策化する〈グローバル性〉である.
 本講座が,混迷の中にある教育現実に問題解決のための多様な糸口を指し示し,子どもたちと日本社会の希望を照らし出す一助となることを願っている.
 2016年2月
編集委員一同


■備考

「項目内容1」「項目内容3」にリンクあり
佐藤 学(さとう まなぶ)
1951年生.学習院大学文学部教授.学校教育学.
『教育改革をデザインする』(岩波書店),『学校改革の哲学』(東京大学出版会)など.

秋田喜代美(あきた きよみ)
1957年生.東京大学大学院教育学研究科教授.教育心理学・授業研究.
『学びの心理学』(放送大学叢書),『あらゆる学問は保育につながる』(共著,東京大学出版会)など.

志水宏吉(しみず こうきち)
1959年生.大阪大学大学院人間科学研究科教授.学校臨床学・教育社会学.
『学力を育てる』(岩波新書),『グローバル化,社会変動と教育2 文化と不平等の教育社会学』(共編訳,東京 大学出版会)など.

小玉重夫(こだま しげお)
1960年生.東京大学大学院教育学研究科教授.教育哲学・教育思想.
『教育改革と公共性』(東京大学出版会),『シティズンシップの教育思想』(白澤社),『学力幻想』(ちくま新書)など.

北村友人(きたむら ゆうと)
1972年生 東京大学大学院教育学研究科准教授.比較教育学・国際教育開発論.
『途上国における基礎教育支援』(学文社),『激動するアジアの大学改革』(共編著,上智大学出版),『国際教育開発の研究射程』(東信堂)など.
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