南米「棄民」政策の実像

南米移民は日本政府の「棄民」政策の犠牲者だった

南米「棄民」政策の実像
著者 遠藤 十亜希
通し番号 88
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 政治・経済・現代社会
刊行日 2016/05/18
ISBN 9784000291880
Cコード 0321
体裁 四六 ・ 並製 ・ 254頁
定価 2,420円
在庫 在庫あり
19世紀末から20世紀半ばまで,約31万人の日本人が,新天地を求めて未知の地ラテンアメリカに移住した.その多くは,日本政府が奨励・支援した「国策移民」だった.従来人口増加や貧困への対策とされてきた日本の移民政策が,「不要な人々」を国内から排除し,海外で利用するためのものであったことを明らかにする.

■編集部からのメッセージ

いまだに日本で横行する,在日・韓国朝鮮人や沖縄県人に対する聞くに堪えない「ヘイトスピーチ」,EU諸国でたかまる,流入する移民に対する排外主義,アメリカのトランプ大統領候補が発するヒスパニック系住民への罵詈雑言に快哉を叫ぶ多くのアメリカ国民……いま,世界中で「われわれ」と「他者」との間の分断が深まっています.そこまで極端な形でないにしても,私たちは日々,自らが所属すると信じる集団とその外部との間に境界線を引きながら/引かれながら,生きているのではないでしょうか.
 本書は,19世紀末から20世紀半ばにかけて日本政府が遂行した「南米移民政策」の変遷をたどるものですが,そこからは,自明のように思われている「日本人」や「日本国民」という集団の境界線が,国家によっていかにたやすく引き直されるかということが浮かび上がります.ぜひご一読下さい.
吉田浩一

■ 関連書

● 『差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで』【岩波現代全書】 黒川みどり,藤野豊
● 『沖縄戦後民衆史――ガマから辺野古まで』【岩波現代全書】 森宣雄
● 『多文化であることとは――新しい市民社会の条件』【岩波現代全書】 宮島喬
● 『東南アジア占領と日本人――帝国・日本の解体』〈シリーズ 戦争の経験を問う〉 中野聡
● 『抵抗と協力のはざま――近代ビルマ史のなかのイギリスと日本』〈シリーズ 戦争の経験を問う〉 根本敬
遠藤十亜希(えんどう とあけ)
津田塾大学国際関係学科卒,テキサス大学修士号(ラテンアメリカ研究),コロンビア大学修士号(政治学),コロンビア大学博士号(政治学)取得.ニューヨーク州立大学ファッション工科大学教養学部助教授を経て,現在,ハワイ東海インターナショナルカレッジ教養学部教授.研究テーマは国家と市民と移民政策.日本の移民政策や,近年のグローバルに輻輳する世界における「移民」の意味を追究する.
主な著書は,Exporting Japan: Politics of Emigration toward Latin America (University of Illinois Press, 2009),“Surrogate Guardian: Responsibility to Protect Migrants in Disasters and Responses by the Japanese State,” Journal of International Migration and Integration (January, 2016).共著は,「移民コストをめぐる米国での論争」NIRA・シティズンシップ研究会編著『多文化社会の選択――「シティズンシップ」の視点から』(日本経済評論社,2001年).

書評情報

京都新聞 2016年8月7日
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