丸刈りにされた女たち

「ドイツ兵の恋人」の戦後を辿る旅

解放後,ナチス・ドイツの兵士を愛した「罰」として丸刈りにされたフランス人女性たちの人生を綴る.

丸刈りにされた女たち
著者 藤森 晶子
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 歴史・伝記
日本十進分類 > 歴史/地理
刊行日 2016/08/24
ISBN 9784000291934
Cコード 0322
体裁 四六 ・ 204頁
定価 2,090円
在庫 在庫あり
第二次大戦中に「支配者」であるドイツ兵と愛し合ったフランス人女性.その多くが,解放後に見せしめとして丸刈りにされた.「対ナチ協力者」として命すら脅かされた彼女たちはどのような戦後を生きたのか.日本人留学生が,つらい過去を背負いながら戦後フランスを生き抜いた女性たちに出会い,その人生を綴った記録.


■編集部からのメッセージ
 「丸刈りにされた女たち」と聞いて,みなさんは何を思い浮かべるでしょうか.ロバート・キャパがドイツの占領から解放された後のフランス・シャルトルで撮影した,幼子を抱いた丸刈りの女性が街中を引き回される写真は有名です.また,マルグリット・デュラスが脚本を書き,アラン・レネが監督した日仏合作映画『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』の主人公を思い浮かべる方もいるかもしれません.日本でも,男女交際が発覚したアイドルが自ら丸刈りとなって「反省」の意を表したことが最近話題になりました.
 本書に登場するのは,第二次大戦中に占領下のフランスでドイツ兵と親密な関係になり,解放後に「対ナチ協力者」「売国奴」として丸刈りにされた女性たちです.私的制裁(リンチ)である「丸刈り」が許されない行為であることはいうまでもありません.しかし,「丸刈り」がそれにとどまらない陰惨さを喚起するのは,ドイツ兵との交際が「性的な逸脱」とみなされ,その懲罰として行われた行為だからではないでしょうか(その意味でアイドルの行為は,「伝統」に則ったものといえるかもしれません).
 「売女(ばいた)」という烙印を押され,髪の毛が生えそろった後も辛い戦後を生きざるを得なかった女性たちの存在は,今でもフランスではタブーとされているそうです.単身フランスに渡り,彼女たちと出会った著者が,一人一人の人生をたどり,一冊にまとめたのが本書です.どうかご一読下さい.
吉田浩一
はじめに
第1章 レジスタンスの国――ジャクリーヌの場合
第2章 写真の呪縛――シモーヌの場合
第3章 「ナチの被害者」――リナの場合
第4章 母と子の戦後――テレーズとマリ=ジョゼの場合
第5章 制裁の起源――マルグリットの場合
第6章 「不幸な人生を歩むよう定められているの」――セシルの場合
第7章 「これは恋の話なのです」――マドレーヌの場合
第8章 できなかった再出発――エステルの場合
あとがき
藤森晶子(ふじもり あきこ)
1979年,広島市生まれ.東京外国語大学外国語学部欧米第二課程(フランス語専攻)卒業.東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻修士課程修了.ストラスブール第三大学大学院に留学し,フランス及びドイツの各地において「丸刈りにされた女たち」に関する現地調査を実施.帰国後,東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学.現在,駐日外国公館勤務.主な論文として「「丸刈りにされた女たち」 第二次世界大戦時の独仏比較」『ヨーロッパ研究』第8号,2009年.
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