岡本一平漫画漫文集

大正から昭和にかけての時代の世相風俗を伝える貴重な資料

岡本一平漫画漫文集
著者 清水 勲
通し番号 青564-1
ジャンル 書籍 > 岩波文庫 > 青(音楽・美術)
日本十進分類 > 芸術/生活
刊行日 1995/10/16
ISBN 9784003356418
Cコード 0171
体裁 文庫 ・ 234頁
在庫 品切れ
夏目漱石のつよい推薦で刊行された岡本一平(一八八五―一九四八)のデビュー作『探訪画趣』(大正三年)は,好評を博し,世相風俗漫画家としての一平の名を一躍有名にした.軽妙な文章を付した一平の漫画は,「漫画漫文」とよばれ,大正から昭和にかけての時代の世相風俗を伝える貴重な資料となった.代表作・傑作を精選.小伝と年譜を付す.


■内容紹介
 (岡本)一平は大正元年に朝日新聞社に入社,昭和11年まで同紙に漫画を描いた.特に夏目漱石も絶賛した漫文の魅力で多くのファンをつかみ,「漫画漫文」は大正から昭和初年まで,漫画界の流行スタイルとなった.漫画家も一流になるには文章も書けなくてはならない時代を現出したのである.一平の人気は,昭和4~5年に刊行された『一平全集』(全15巻・先進社)が5万セットも売れる大ベストセラーになったことからもうかがい知れる.人気漫画家には入門志望者も多数集まった.宮尾しげを,近藤日出造・杉浦幸雄・清水崑らが一平の門から巣立っていった.近藤・杉浦らは昭和7年,新漫画派集団を結成し,漫画界の主流になっていく.そして昭和11年,門人たちの活躍を見届けながら,一平は漫画界の第一線から離れていく.
 本書は,こうした岡本一平の代表的作品を紹介するものである.漱石を唸らせた漫画漫文の傑作集『探訪画趣』,ストーリー漫画の創始者としての代表作『女百面相』,大正デモクラシーを背景にして政界を撫で斬りした政治漫画,肖像漫画の名手としての代表作『新水や空』…….また小伝・年譜を加えて一平の生涯の全体像を紹介した.
(清水勲「はしがき」より)


■漱石の手紙
 私は朝日新聞に出るあなたの描いた漫画に多大な興味を有(も)っている一人であります.いつか社の鎌田君にその話をして,あれなりにして捨ててしまうのは惜しいものだ,そのうちに纏めて出版したら可(よ)かろうにといった事があります.……
 ……あなたの特色を挙げてみると,普通の画家は画になる所さえ見付ければ,それですぐ筆を執ります.あなたは左右でないようです.あなたの画には必ず解題が付いています.そうしてその解題の文章が大変器用で面白く書けています.あるものになると,画よりも文章の方が優っているように思われるのさえあります.……

  六月一五日  夏目金之助
はしがき

1 探訪画趣
2 女百面相
3 漫画漫詩の東京
4 政界戯画
5 新水や空
6 世界一周
7 新東京風景・東京新夜曲
8 文化人の肖像
9 傑作小品

岡本一平小伝(清水勲)
岡本一平年譜

書評情報

読売新聞(日曜版) 2011年10月16日
ページトップへ戻る