ワーズワース詩集
ワーズワースは十九世紀の最も優れた自然詩人であり,自然のために自然を歌うことに一生を捧げたイギリスの唯一の詩人であった.彼の自然に対する親しみある静観的態度は,自然を愛慕する日本人の共感をあつめ,明治,大正文学に多くの影響を与えた.本書は彼の作品のうち比較的短い詩の傑作を網羅したものである.
彼は英国の生んだ最も偉大なる自然詩人だった.恐らくは自然のために自然を歌った唯一の詩人であったろう.多くの詩人は自然を生けるものとして歌っているが,彼ほど真にそれを信じていた詩人はないように思われる.そして彼の自然への愛は人間をも愛せしめた.何となれば,彼には人間は自然の一部であったから.従って彼の最も愛した人間は自然の間に生きた最も自然的な人間であった.
書評情報
産経新聞(朝刊) 2006年3月5日