尹東柱詩集 空と風と星と詩

禁じられた母語で,身もだえるように清冽な言葉を紡ぎ,福岡刑務所で27歳で獄死した詩人の詩集決定版.

尹東柱詩集 空と風と星と詩
著者 尹 東柱 , 金 時鐘 編訳
通し番号 赤75-1
ジャンル 書籍 > 岩波文庫 > 赤(東洋文学)
日本十進分類 > 文学
刊行日 2012/10/16
ISBN 9784003207512
Cコード 0198
体裁 文庫 ・ 並製 ・ カバー ・ 186頁
定価 693円
在庫 在庫あり
「死ぬ日まで天をあおぎ/一点の恥じ入ることもないことを」――戦争末期,留学先の日本で27歳の若さで獄死した詩人,尹東柱.解放後,友人たちが遺された詩集を刊行すると,その清冽な言葉が若者たちを魅了し,韓国では知らぬ者のない「国民的詩人」となった.詩集「空と風と星と詩」とそれ以外の詩あわせて66篇を在日の詩人・金時鐘が選び,訳出.ハングルの原詩を付した.


■編集部からのメッセージ
「死ぬ日まで天をあおぎ
一点の恥じ入ることもないことを
葉あいにおきる風にすら
私は思いわずらった」
 このあまりにも有名な序詩で始まる詩集「空と風と星と詩」は,1948年,韓国で出版されるや,たちまちベストセラーとなりました.その純真な生き方,清冽な言葉が多くの人々を魅了したのです.
 いまや韓国では,教科書にも載せられ,誰でも知っている「国民的な詩人」「民族詩人」ですが,本人は,1945年2月,福岡の刑務所で27歳という若さで獄死し,自らの詩集を見ることさえできなかったのでした.
 そして京都の下宿先で逮捕された際,その後書きためてあった詩やノートはすべて押収され,その後どこからも見つかっていません.
 さらに,彼の最後に叫んだ言葉(朝鮮語)を,聞いた看守たちは意味を解しなかったといいます.
 彼の詩をひもとくときに,植民地支配をした側の私たちは,常にこうした事実を記憶しておく必要があります.
 彼は当初,そのなよやかな言葉のゆえに,抒情詩人として捉えられていました.しかし,訳者の金時鐘氏は,こう言います.
 「アジア侵略の「聖戦」完遂に故国朝鮮もが植民地の枷のなかでなだれているとき,ひとり使ってはならない言葉,母語の朝鮮語に執着し,時節にも時局にも関わりのない詩を自己への問いのように身もだえながら書きためていた学徒の詩人」である,と.
 日本の多くの若い人たちに,ぜひ手に取っていただきたい詩集です.
『空と風と星と詩』
序詩
自画像
少年
雪降る地図
帰ってきて見る夜
病院
新たな道
看板のない街
太初の朝
ふたたび太初の朝
夜が明ける時まで
恐ろしい時間
十字架
風が吹いて
悲しい一歩
目を閉じてゆく
また別の故郷

星をかぞえる夜

『空と風と星と詩』以外の作品から

白い影
いとしい追憶
流れる街
たやすく書かれた詩



懺悔録

ねぎらい
八福
月のように
とうがらし畠
弟の印象画
愛の殿堂
異蹟
雨の降る夜
山あいの水
遺言

瞑想
にわか雨
寒暖計
風景


黄昏が海となり

夢は破れて
山林
このような日
山の上
陽溜り
にわとり
胸1
胸2
たそがれ
蒼空
街にて
生と死
ろうそく一本
明日はない


山びこ
ひまわり顔
こおろぎとぼくと
煙突


ツルゲーネフの丘
月を射る
隕石の落ちたところ

原詩

解説に代えて
あとがき

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2019年7月24日(「折々のことば」欄)
朝日新聞(be) 2018年11月24日
読売新聞(朝刊) 2016年8月14日
朝日新聞(朝刊) 2015年3月2日
読売新聞(朝刊) 2014年12月14日
週刊金曜日 2013年4月12日号
東京新聞(夕刊) 2012年12月8日
毎日新聞(朝刊) 2012年12月2日
週刊ポスト 2012年11月30日号
東京新聞(夕刊) 2012年10月27日
東洋経済日報 2012年10月26日号
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