格差社会をこえて

生活こそがすべての指標と考える著者が,急速に進む格差の拡大に警鐘を鳴らし,連帯の社会を築く道を探る.

格差社会をこえて
著者 暉峻 淑子
通し番号 650
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2005/04/05
ISBN 9784000093507
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
定価 550円
在庫 在庫あり
勝ち組・負け組の競争原理によって,貧富の二極分解が急速に進行し,子どもたちは選別によって疲れ果てている.なぜ日本は生活者が望むのとは正反対の道に迷い込んでしまったのだろうか? 生活こそはすべての指標と考える著者が,いま急速に進む格差の拡大に警鐘を鳴らし,人間的な連帯の社会をつくっていく道をさぐる.

■編集部からのメッセージ

 経済のグローバリゼーションが進むにつれて,南北の間だけでなく世界中で,貧富の二極分解が進行しています.世界人口の下から20%と上から20%の所得格差は,1960年には1対30でしたが,2000年には1対78にまで拡大しています.
 日本でも,新自由主義による経済優先思想が社会をおおい,「勝ち組・負け組」という差別的な言葉や,「自己責任」という弱者切り捨ての言葉が日常的に平気で使われるようになっています.正規に雇用されている人とパートやフリーターとの所得格差が拡大し,フリーターの若者の数はとうとう400万人を突破しました.そしてこのような状態を是正すべき税制や社会保障制度も,逆にこの格差を助長するものになってしまっています.それだけではありません.競争と差別は教育の世界にも持ち込まれ,最も自由で平等であるべき学校を,強制と選別が横行する社会に変貌させてしまいました.
 なぜ日本はこのような格差社会への道に迷い込んでしまったのでしょうか? 生活こそがすべての指標と考える著者が,いま急速に進む格差の拡大に警鐘を鳴らし,この傾向を逆転させ人間的な連帯の社会をつくっていくために私たちは何をすればいいのかを訴えます.日本をほんとうに豊かな社会にしたいと考えているすべての方に読んでいただきたいと思います.
生活者は格差社会を望まない
国内を循環しない経済は社会の二極化を招く
生活の尊重こそ人間の尊厳を守る
差別社会のゆくえ
差別と競争を教育に持ち込んではいけない
格差を助長する国家システム――税制と社会保障
格差社会をこえて
暉峻淑子(てるおか・いつこ)
埼玉大学名誉教授.1928年大阪府に生まれる.1963年法政大学大学院博士課程修了.専攻は生活経済学.政治,経済,教育,福祉などさまざまな問題について発言してきた.近年は,ユーゴスラビア難民を支援するNGOの活動に精力的に携わるとともに,憲法と教育基本法を守る活動に力を入れている.
著書に『ほんとうの豊かさとは』(岩波ブックレット),『豊かさとは何か』『豊かさの条件』(以上,岩波新書),『サンタクロースを探し求めて』(シリーズ〈グーテンベルクの森〉,岩波書店),『サンタクロースってほんとにいるの?』(福音館書店),『ゆとりの経済』(東洋経済新報社),『教科書検定』(アドバンテージサーバー),『教育基本法の「見直し」に反論する』(編著,かもがわ出版),『言葉と力』(共著,三省堂),『豊かさへの接近』『公共サービスと国民生活』(以上,産業統計研究社),『経済優先社会』(旬報社)など.

書評情報

女のしんぶん 2006年3月10日号

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