イギリス「教育改革」の教訓

「教育の市場化」は子どものためにならない

イギリス「教育改革」の教訓
著者 阿部 菜穂子
通し番号 698
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2007/04/05
ISBN 9784000093989
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
在庫 品切れ
統一学力テストをはじめとする競争原理,市場主義の導入は教育現場に何をもたらしたのか.ロンドン在住のジャーナリストが自らの体験と教育関係者への緻密な取材を通して「改革」の弊害を浮き彫りにする渾身のルポ.

■著者からのメッセージ

 日本ではこの四月,全国一斉に統一学力テストが始まり,学校を外部機関が評価する査察制度の導入も検討されている.安倍内閣の「教育改革」が着々と進んでいるのだ.そのモデルは,イギリスのサッチャー首相が1980年代の終わりに行った教育改革だという.
 でも,今なぜ日本で「サッチャー教育改革」なのか.私はイギリスで暮らし,息子の学校生活を通して公立学校で起きていることを間近に見ながら,ジャーナリストとして取材を続けてきた.現場で見ていると,導入から20年経って,この改革がイギリスの公教育にもたらした負の側面は深刻さを増し,教育制度は大きく変化し始めているのである.
 サッチャー首相は,統一学力テストの成績で学校をランク付けするという冷徹な市場原理を教育に持ち込んだ.それはイギリスの教育界に「カンフル剤」を注入する役割を果たしたが,競争原理に基づく強引な「上からの改革」は,学校現場の疲労と萎縮をもたらした.
 イギリスの教育界には,その反省として学校と教師を信頼し,子どもを中心に据える教育制度に作り変えていこうという強い気運が盛り上がっているのが実態である.すでに,イギリス連合王国を構成する自治地域の一部はサッチャー改革の廃止に踏み切った.
 以下,私が直接見聞きし,取材した教育現場での出来事を本書で報告する.
(「はじめに」より)
はじめに
第1章 イギリスの「教育改革」――サッチャーからブレアへ
第2章 「教育改革」は何をもたらしたか
第3章 学力水準は本当に上がったか
第4章 イギリス連合王国他地域の動き
第5章 イングランドでも修正に向けた動き
第6章 教育に市場原理の適用はなじむか
【画像あり】
阿部菜穂子(あべ・なおこ)
ジャーナリスト.1981年,国際基督教大学卒業.毎日新聞社記者を経て,2001年8月からイギリス・ロンドン在住.教育問題を中心に執筆活動を続けている.現地で13歳と7歳の男の子2人を育てている.著書に『異文化で子どもが育つとき――イギリスの今・日本の未来』(草土文化)がある.

書評情報

教職研修 2007年6月号
しんぶん赤旗 2007年5月27日
毎日新聞(朝刊) 2007年4月15日
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