地球温暖化

ほぼすべての質問に答えます!

科学,政治経済の両面から,Q&A方式で,専門用語もわかりやすく解説.(カラー20頁)

地球温暖化
著者 明日香 壽川
通し番号 760
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 環境
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2009/06/05
ISBN 9784000094603
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 88頁
在庫 品切れ
地球温暖化は,なぜ起きるのか.未来に向けて,温暖化を防ぐには,国内で,そして国際的に何ができるのか.このブックレットでは,科学,そして政治経済両方の面から,地球温暖化とは何か,いま何が問われているのかを,丁寧に明らかにしていく.Q&A方式ともに,専門用語もわかりやすく解説.(カラー20頁)


■著者からのメッセージ
 気候変動をもたらしている地球温暖化の仕組み,影響,そして温室効果ガスの排出削減をめぐる国際交渉などに関して,どのくらい知られているでしょうか.正直なところ,「エコは大事かも」と何となく思いながらも,「温暖化の仕組みはよくわからない」,「世界中の政府もがんばっているようだから国際交渉はすぐまとまるのだろう」,「温暖化対策が経済にとってよいのか悪いのかは,人によって言うことがコロコロ変わる」といった感じの人が多いのではないでしょうか.
 実は,温暖化の科学に関しては,研究者でもわかっていないことはたくさんあります.たとえば,未来の地球の気候を予測しようとする気候モデルは,まだまだ改善の余地があることは確かですし,温暖化による被害や対策のコストの大きさに関しては研究者間で大きなばらつきがあります.
 また,国際交渉は,おそらくみなさんが考えている以上に難航しています.その大きな理由の1つは,温暖化対策を進めることによって経済的な不利益を被る人たちが交渉をさまたげているうえに,自分も経済的な不利益を被ると思い込んでしまっている人が少なくないからです.
 それでも,対策を進めるべきだと多くの研究者は考えていますし,多くの国の外交官も交渉を前に進めようと努力しています.なぜでしょうか?
 それは,「対策を進めるべきという結論を導き出せる程度には十分な科学的知識が蓄積されている」と多くの研究者が考えていて,「温暖化対策は人類全体にとって,もっとも重要な課題の1つ」と多くの交渉担当者が考えているからです.
 しかし,日本では,「地球にやさしい」や「エコ」という言葉はよく耳にするものの,はっきり言って,社会の根っこのところでは,環境問題,とくに地球温暖化問題に対する危機感はそれほど共有されていないのではないでしょうか.
 その一番の理由は,おそらく,気候的,地理的,そして経済的に日本は恵まれているからです.恵まれていること自体は悪いことではないのですが,現在,干ばつが続くアフリカから毎日何千人と押し寄せる難民への対応に苦慮するヨーロッパの国々や,干ばつや洪水で毎年何千人が亡くなる国々(世界全体では毎年数万人で,犠牲者の9割以上が途上国に住む人々)との意識のずれは非常に大きいのが現状だと思います.
 したがって,この本では,みなさんに,温暖化の科学に対するより深い理解や対策の必然性を認識してもらいたいという気持ちから,自然科学と社会科学の両方の側面から見た温暖化をめぐる国内外の状況をわかりやすく伝えることを試みました.
(「はじめに」より)
はじめに

第1部 自然科学からの話
1 温暖化は本当に起きているのですか?
2 二酸化炭素が温暖化の原因っていう証拠は?
3 二酸化炭素よりも水蒸気や太陽活動の影響のほうが大きいのでは?
4 温度が高くなったから二酸化炭素が増えたのではないのですか?
5 気候モデルによる予測など信用できない?
6 つい30年前は寒冷化が話題になったし,これから寒冷化するかもしれないという話も最近聞きますが?
7 なんでもかんでも温暖化のせいにしているのでは?
8 海面上昇は,温暖化で氷が溶けているからですか?

第2部 政治や経済からの話
9 京都議定書とは何ですか?
10 京都議定書は不公平では?
11 温暖化対策の優先度は低いのでは?
12 温暖化対策のコストは高いのではないでしょうか?
13 京都議定書は意味があるのでしょうか?
14 排出量取引で二酸化炭素の排出量は減るのですか?
15 温暖化対策をすると,国際競争力が落ちるのでは?
16 先進国だけで温暖化対策をしても,地球全体では二酸化炭素の排出量は増えるのでは?
17 途上国が悪いのでは?
18 中国が悪いのではないでしょうか?
19 米国が悪いのではないのですか?
20 ポスト2012年の枠組みは?

〈2020年のおとぎ話〉
おわりに



明日香壽川(あすか・じゅせん)
1959年生まれ.東北大学東北アジア研究センター教授(環境科学研究科教授兼任).専門は環境科学論.東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻で農学修士号,欧州経営大学院(INSEAD)で経営学修士号,東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻で博士号を取得.
スイス実験外科医学研究所研究員,(株)ファルマシアバイオシステムズ管理部プロジェクトマネージャー,(財)電力中央研究所経済社会研究所研究員などを経て現職.そのほかに京都大学経済研究所客員助教授,朝日新聞アジアネットワーク客員研究員などを歴任.
著書に『中国環境ハンドブック2009-2010年版』(中国環境研究会編,蒼蒼社,2009年,共著)などがある.第32回山崎賞受賞(2006年).

書評情報

週刊読書人 2009年7月31日号
朝日新聞(朝刊) 2009年6月25日
河北新報(夕刊) 2009年6月18日
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