子どもの共感力を育む

動物との絆をめぐる実践教育

犬が学校を訪問する「ふれあい授業」や動物への読み聞かせへの関心が高まっている.授業の実践方法,その後の子どもの変化等を活写.

子どもの共感力を育む
著者 柴内 裕子 , 大塚 敦子
通し番号 777
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 子ども・教育
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2010/02/09
ISBN 9784000094771
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
定価 616円
在庫 在庫あり
人への接し方がわからない子どもが増えている今,犬や猫が学校を訪問する「ふれあい授業」が注目を集めている.小学校での授業の実践方法,その後の子どもの変化,また子どもによる犬への読み聞かせの効力を日本と海外での実践から描く.さらに米国において,動物との絆より子どもの共感力を育んでいる状況も活写.(カラー16頁)


■著者からのメッセージ
 子どもの暴力が増えている背景として,「感情がうまく制御できない」,「コミュニケーションの能力が足りない」といった問題が指摘されていますが,動物たちとのかかわりのなかには,これらの問題への解決のヒントが,たくさん見いだせる気がします.大人が言うことには素直に耳を傾けられなくても,動物とは心を通じ合わせたいと思う子どもたちはたくさんいます.問題児と言われながら,自分の愛する動物のために怒りを抑える努力をしたり,相手を理解しようとがんばる子どもたちを,これまで何人も見てきました.
 また,少子化時代の子どもたちの生活のなかには,自分以外の他者をケアする機会はなかなかありませんが,動物たちが相手なら,自分がケアする側に立つことができます.両親から充分な愛情を受けられずに育った子どもたちにとっては,自分のなかにもともと備わっているはずの,弱いものへの思いやりの気持ちに気づくきっかけともなるでしょう.
 子どもたちの共感力を育むために,「人と動物の絆」を教育現場に取り入れる試みが,日本でも始まっています.
(「はじめに」より)
はじめに 大塚敦子
I 日本の小学校での実践 柴内裕子
 1 子どもたちと犬との「ふれあい授業」
 2 R・E・A・Dプログラム
 3 子どもたちの心を育む動物たち
II 「人と動物の絆」を生かしたアメリカの実践 大塚敦子
 1 他者への共感力やコミュニケーション能力を磨く――介助犬訓練というレッスン
 2 自分より弱いものを思いやる心を育む――グリーン・チムニーズの教育
 3 苦手だったこと,関心がなかったことにも前向きに――アメリカのR・E・A・Dプログラム

写真撮影 大塚敦子


柴内裕子(しばない・ひろこ)
1935年生まれ.日本大学農獣医学部獣医学科を卒業.1963年に東京赤坂に赤坂獣医科病院(現赤坂動物病院)を開設,院長として現在にいたる.1986年に日本動物病院協会(現公益社団法人日本動物病院福祉協会)の第4代会長として,人と動物のふれあい活動CAPP(Companion Animal Partnership Program)をスタートさせ,初代委員長となる.病院,高齢者施設,小学校などを動物とともに訪問し,人と動物とのふれあい活動や動物介在教育を実践している.2007年にIAHAIO(人と動物の関係に関する国際組織)特別賞を受賞.著書に『これからの犬の育て方としつけ方』(講談社),『子犬がわが家にやってくる』(高橋書店),『都会で犬や猫と暮らす』(岩波ブックレット,大塚敦子氏と共著)ほか多数.

大塚敦子(おおつか・あつこ)
1960年生まれ.上智大学文学部卒業.国際紛争報道を経て,死と向きあう人々,紛争後の社会や刑務所などで,人と自然や動物との絆がもたらす癒しなどをテーマに取材.『いのちの贈りもの』(岩波書店)で準太陽賞,『さよなら エルマおばあさん』(小学館)で講談社出版文化賞絵本賞,小学館児童出版文化賞受賞.そのほかの著書に『犬が生きる力をくれた』,『モノとわかれる 人生の整理整頓』(以上,岩波書店)など多数ある.URL: http://atsukophoto.com
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