原発難民日記

怒りの大地から

さよなら,阿武隈の美しい森よ.――記者,宇宙飛行士を経て福島で農業を営む著者は「難民」となった.

原発難民日記
著者 秋山 豊寛
通し番号 825
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2011/12/07
ISBN 9784002708256
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 80頁
在庫 品切れ
テレビの記者,日本人初の宇宙飛行士を経て,福島県は阿武隈の大地で有機農業を営むこと15年.その田畑は福島第一原発から32キロ…….著者は原発事故以来「難民」となった.郡山郊外への一時避難から群馬県の農家への疎開など,「農のある暮らし」から見た原発危機の克明な記録と考察は,多くのヒントを与えてくれる.

■編集部からのメッセージ



 住民が避難をする上で役立つ情報を公表せず,放射性物質が空中に放出されている最中,「ただちに健康に影響するわけではない」と繰り返した政府をはじめ,経済産業省,東京電力に対する怒りが,そして,「原子力ムラ」の学者たちへの憎しみが,この間の私の「活力」になっていた.
 この「日記」は,福島第一原子力発電所の事故によって生活の基盤を失った,阿武隈山中の一椎茸農家から見た,その時々の政府発表やメディアの伝え方に対する反応,そして,行動するに当たっての判断,想い浮かぶことなどの記録だ.日記そのものにメモをもとに加筆しているので,かなり個人的な部分も多い.また,その時点での推測も少なくない.冷静な記述というより感情の激しい吐露だ.私は,こうした個人的感情の「記録」は,歴史のスケッチと考えている.
 〔・・・〕原子爆弾と同じく,原子力発電所は人類にとって必要のない,廃絶すべき技術であると考えているすべての人々の健康を祈りたいと思っている.
(「はじめに」より)

はじめに

第1章 原発事故発生
大地震襲来/郡山の宿へ一時避難/テレビの「政府広報」漬けの一週間/郡山を離れる/渋滞の中で想い浮かべた「怒りの葡萄」

第2章 疎開――群馬県鬼石町へ
暮らしの基盤喪失を実感/最初の一時帰宅/「風評」に根拠がないわけではない

第3章 人類は核とは共存できない
在所の放射線量は……/卑劣で無責任な「暫定規制値」/農家にはなぜ「休業補償」がないのだろう/本気で「脱原発」を実現させたいなら/モスクワで健康チェックを受ける

第4章 “さようなら”阿武隈の美しい森
疎開先で育てた稲は元気/フクシマの子どもたちを何とかしたい/“難民”となって,はや半年/「ゴジラ」の復讐の可能性は……
秋山豊寛(あきやま・とよひろ)
1942年,東京生まれ.宇宙飛行士,農民,ジャーナリスト.2011年11月より,京都造形芸術大学教授.国際基督教大学卒業後,TBSに入社し,ロンドン駐在,ワシントン支局長などを歴任.1990年12月2日から9日間,日本人初の宇宙飛行士として,旧ソ連の宇宙船「ソユーズ」,宇宙ステーション「ミール」に搭乗.1995年にTBSを退社,翌年から福島県滝根町に移住して有機農業に従事.著書に『鍬と宇宙船』(ランダムハウス講談社),『農人日記』(新潮社),『宇宙と大地』(岩波書店)など多数.

書評情報

毎日新聞(夕刊) 2012年5月28日
東京新聞(夕刊) 2012年3月9日
東京新聞(朝刊) 2011年12月26日
毎日新聞(朝刊) 2011年12月23日
朝日新聞(夕刊) 2011年12月7日
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