3.11後の自衛隊

迷走する安全保障政策のゆくえ

東日本大震災での活動が注目された自衛隊だが,その実態はどうなっているのか.緻密な取材で描く渾身のルポ.

3.11後の自衛隊
著者 半田 滋
通し番号 843
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2012/07/05
ISBN 9784002708430
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 72頁
在庫 品切れ
東日本大震災では,10万人以上の隊員が被災地支援に従事し,自衛隊の活躍が注目された.改めて国内外での災害救援活動が期待される一方,現実には,なし崩し的にPKO派遣が拡大されるなど,より軍事的組織への変貌が進む.知られざる活動の実態や,普天間問題をめぐる米軍の思惑などを浮き彫りにし,安全保障政策のゆくえを問う.


■編集部からのメッセージ
 東日本大震災では,被災地での自衛隊の活躍が注目されました.全隊員のほぼ半数の10万人規模で,災害救助にあたりました.その姿は,メディアでも何度となく報道されました.
 今回の活動を通して,改めて,災害救助としての役割が自衛隊に期待されています.しかし,自衛隊の活動はそうした方向にむかっているのでしょうか.実態はむしろ,なし崩し的に海外派遣が拡大されるなど,より軍事的な役割を担う方向へと進んでいます.そこには,政治の側の防衛政策の迷走,そして米軍の思惑などが大きく関わっています.
 このブックレットでは,大震災を経て,自衛隊がどのように変わろうとしているのかを,緻密な取材で浮き彫りにします.著者の半田滋さんは,東京新聞記者(現在=論説兼編集委員)として,長年にわたり防衛省・自衛隊の取材を続けています.これまでも様々なスクープを出し,内部への鋭い取材でも定評があります.2009年には岩波新書『「戦地」派遣 変わる自衛隊』で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞も受賞されています.
 ぜひ多くの方に読んでいただき,安全保障政策はどうあるべきか,考えるヒントになればと思います.
(編集部 田中宏幸)
はじめに――3・11は転機なのか

第1章 大震災とその後の自衛隊
1 陸上自衛隊は一人負けしたのか/2 実現していた「友愛ボート」/3 水没したF2戦闘機の代わりに/4 姿をみせる対中国シフト――「防衛計画の大綱」の意図

第2章 「トモダチ作戦」とは何だったのか
1 復旧させたのは日本のゼネコン/2 三つあった米国の支援理由/3 高止まりする「思いやり予算」/4 米軍再編の真実

第3章 変貌する海外派遣
1 南スーダンPKO――誰が決めたのか/2 海外派遣へ前のめり/3 武力行使容認――変貌するPKO/4 何のための派遣か

第4章 迷走する政治主導――解決しない普天間問題
1 狙われた普天間利権/2 巻き返す沖縄のゼネコン/3 米軍再編に組み込まれた普天間/4 抑止力にならない海兵隊

おわりに――「人助け」をする自衛隊へ
半田滋(はんだ・しげる)
1955年栃木県宇都宮市生まれ.下野新聞社を経て,1991年中日新聞社入社.東京新聞編集局社会部記者を経て,2007年8月より編集委員,2011年1月より論説委員兼務.1993年防衛庁防衛研究所特別課程修了.1992年より防衛庁取材を担当.2004年中国が東シナ海の日中中間線付近に建設を開始した春暁ガス田群をスクープした.
2007年,東京新聞・中日新聞連載の「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞.著書に,『防衛融解 指針なき日本の安全保障』(旬報社),『「戦地」派遣 変わる自衛隊」(岩波新書,2009年度日本ジャーナリスト会議〈JCJ〉賞受賞),『自衛隊vs.北朝鮮』(新潮新書),『闘えない軍隊』(講談社+α新書)など.

書評情報

通販生活 2012年秋冬号
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