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地域再生

逆境から生まれる新たな試み

過疎や財政破綻,環境破壊など「負の要素」と向き合うことから生まれた八つの地域再生の試み.

地域再生
著者 香坂 玲
通し番号 851
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2012/10/05
ISBN 9784002708515
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 80頁
在庫 品切れ
地域衰退が深刻化しているなかで,自治体と住民,企業が知恵を出し合い,自然環境や伝統文化を大切にした個性的なまちづくりに挑戦する地域が現れている.過疎や財政破綻,あるいは公害や環境破壊など「負の要素」を抱えた八つの地域における再生の取り組み.[カラー写真16頁]


■著者からのメッセージ
 よく目を凝らしてみると,お決まりの語りに安住せず,過去の記憶や語りに向き合いながら,新しい姿を模索している事例,異なる未来像のヒントになる取り組みが日本の地域には溢れている.それも,恵まれた財源やブランド力のある場に限った話ではない.むしろ,例えば公害,過疎,戦争など負のイメージや暗い歴史がある場で,既存のイメージを越えていく試みが進行中だ.
 それは,過去を忘れたり隠すということではなく,過去の記憶と時には格闘しながら,そして時には,ある意味で「ワケあり」という事情をしたたかに活用しながら,地域を活性化させていくということだ.
 とはいえ,未だに模索が続いている地域がほとんどだ.本書が紹介するのは,「こうすれば成功する」といった類いのものではなく,なかには経営としては行政などから自立していない事例もある.
 理想化と否定論の合間で,揺れ動く若者と日本の地域社会の像.これこそ実像というのはないのかもしれない.だが,それでも本書では,困難に直面しながらも,なんとかそれをバネにしている地域や若い力が確かに存在することを伝えていきたいと,切に願う.
(本書「はじめに」より)
はじめに

第1章 鳥取県鳥取市
祭りと劇の似合う街――非日常というインフラ

第2章 埼玉県神川町
農業と観光の融合――有名観光地と棲み分けるしたたかな二番手戦略

第3章 愛知県名古屋市熱田区
都会にビオトープの秘境を――土壌汚染浄化の苦労

第4章 石川県能登町
能登半島の挑戦――修学旅行で”村の共栄”を

第5章 北海道夕張市
炭鉱の記憶――破綻からの再生をめざして

第6章 三重県四日市市
コンビナート・クルージング――工場から公害の歴史を伝える

第7章 沖縄県恩納村
サンゴ礁をめぐる葛藤――漁協職員の取り組み

第8章 熊本県水俣市
「水俣病の街」を活かすのか

終 章 宮城県気仙沼市
復興のために,いかに日常と向き合うか――復興横丁を歩いて
香坂 玲(こうさか・りょう)
1975年静岡県生まれ.幼少期を米国で過ごし,小学校より東京で暮らす.
金沢大学大学院人間社会学地域創造学類准教授(環境教育・コミュニケーション担当).
東京大学農学部卒業,ドイツ・フライブルク大学で博士号取得(理学).
国連環境計画生物多様性条約事務局勤務後,名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授を経て,現職.
2010年生物多様性条約COP10では,支援実行委員会アドバイザーを務める.現在は,国連大学高等研究所の客員リサーチフェローとして里山・里海の評価にも携わる.
著書に『生物多様性と私たち――COP10から未来へ』(岩波ジュニア新書),『いのちのつながり――よく分かる生物多様性』(中日新聞社),『森林カメラ』(清水弘文堂書房).
編著書に『地域のレジリアンス 大災害の記憶に学ぶ』(清水弘文堂書房),『知っておきたい知的財産活用術 地域が生き残るための知恵と工夫』(ぎょうせい).

書評情報

東京新聞(朝刊) 2013年2月3日
毎日新聞(朝刊)〔石川〕 2012年12月16日
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