TPPで暮らしはどうなる?

多国籍企業の利潤確保を最優先するアメリカン・スタンダードが生活のすみずみに持ち込まれた時,私たちの暮らしはどうなるのか.

TPPで暮らしはどうなる?
著者 鈴木 宣弘 , 天笠 啓祐 , 山岡 淳一郎 , 色平 哲郎
通し番号 876
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2013/07/04
ISBN 9784002708768
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 62頁
在庫 品切れ
日本の参加が現実的になってきたTPP(環太平洋経済連携協定).多国籍企業の利潤確保を最優先するアメリカン・スタンダードが生活のすみずみにまで持ち込まれたとき,私たちの暮らしはどうなるのか.農業,医療,食の安全など,TPP参加による生活への影響を,第一線の研究者とジャーナリストが検証する.

■編集部からのメッセージ

 TPPとは何だろうか.
 もともとの英語表記は,「Trans-Pacific Partnership」.日本語では「環太平洋連携協定」と訳されることが多い.単なる経済協定ではないことが,その名前からも伝わってくる.
 TPPの前身は,2006年にできたシンガポール,ニュージーランド,ブルネイ,チリによる協定,いわゆる「P4協定」.もともとは,比較的小さな国が寄り集まって関税を撤廃し,ルールの統一を図って,一つの国のようにして国際的な交渉力を高めようとする意図だった.それに目をつけたのがアメリカ政府と多国籍企業.彼らは,P4協定に乗っかり,「ハイジャック」することで,利益拡大にじゃまな各国独自のルールを壊す流れを世界に広げようと考えた.
 ノーベル経済学賞学者のスティグリッツ教授の言葉を借りれば,TPPは,アメリカの富の40%を握る人口1%の人々のための協定,すなわち「1%の1%による1%のための協定」で,「99%」の人々が損失を被っても,「1%」の人々の富の増加によって総計としての富が増加すれば「効率的」だという乱暴な論理である.
 TPPの交渉内容や条文は秘密にされたままだ.見られるのはアメリカでも通商代表部と600社の企業顧問のみ.有権者の代表である国会議員であっても十分にアクセスできない.スティグリッツ教授は最近来日し,「TPPはアメリカ企業の利益を守ろうとするもので,日米国民の利益にはならない.途上国の発展も妨げる」と指摘している.
 もしTPPに参加することになったら,私たちの暮らしはどのように変わるのだろうか?
第1章 1%の1%による1%のための協定
鈴木宣弘

第2章 食卓から安全と安心が消えていく
天笠啓祐

第3章 医療が市場競争にさらされるとき
山岡淳一郎・色平哲郎

第4章 日本の光景が一変してしまう
鈴木宣弘

おわりに――柔軟な姿勢で最適解を考えよう
鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)
1958年三重県生まれ.東京大学大学院教授.農学博士.1982年東京大学農学部卒業.農林水産省,九州大学教授を経て,2006年より現職.専門は農業経済学,国際貿易論.財務省関税・外国為替等審議会委員,経済産業省産業構造審議会委員.日本農業経済学会副会長.著書に『ここが間違っている! 日本の農業問題』(共著,家の光協会,2013年),『よくわかるTPP48のまちがい』(農文協,2012年)など多数.
天笠啓祐(あまがさ・けいすけ)
1947年生まれ.『技術と人間』編集部を経て,現在,ジャーナリスト.市民バイオテクノロジー情報室代表,遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表.著書に『暴走するバイオテクノロジー』(金曜日),『生物多様性と食・農』『東電の核惨事』(以上,緑風出版)など多数.
山岡淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)
1959年愛媛県生まれ.ノンフィクション作家.出版関連会社,ライター集団を経て独立.「人と時代」を共通のテーマとして,医療,建築,現代史,経済など分野を超えてノンフィクションを執筆.著書に『医療のこともっと知ってほしい』(岩波ジュニア新書),『国民皆保険が危ない』(平凡社新書),『原発と権力』(ちくま新書)など多数.
色平哲郎(いろひら・てつろう)
1960年神奈川県生まれ.内科医.JA長野厚生連・佐久総合病院地域医療部地域ケア科医長.東京大学を中退後,世界を放浪し,医師を目指し京都大学医学部へ入学.1998年から2008年まで長野県南相木村の診療所長をつとめる.TPP問題では医療への影響を積極的に発信する.
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