「国土強靭化」批判

公共事業のあるべき「未来モデル」とは

安倍政権の下で復活した大型公共事業政策を徹底批判し,人口減少時代に相応しい国土・都市論のモデルを提示.

「国土強靭化」批判
著者 五十嵐 敬喜
通し番号 883
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2013/10/04
ISBN 9784002708836
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
定価 550円
在庫 在庫あり
「コンクリートから人へ」の歩みを一挙に逆転させ,「国土強靭化」の名による大型公共事業の大盤振る舞いが安倍政権の下で復活,財源には消費増税が当てられる道筋もついている.この公共事業政策を徹底批判するとともに,震災復興を成し遂げ,人口減少時代にふさわしい国土をつくり上げるための全く新しいモデルを提示する.


■著者からのメッセージ
 憲法改正を具体的な俎上に乗せるという現在の安倍政治(中略)を支えているのが「アベノミクス」であり,その「3本の矢」である金融緩和,財政出動そして成長戦略は,支持率60%を超すという異様な人気の源泉となった.
 本書はこの中で,財政出動すなわち「国土強靭化」の名による公共事業の復活と強化について,その内実を批判的に検討し,対案を提示しようというものである.
 この政策は,ダイレクトに首都直下型や南海トラフ地震発生の危機を強調し,これをバネにして10年間で200兆円という膨大な費用を投入しようとしていること,さらにこの危機対応としてまるで戦前の「国家総動員」とでもいうような仕掛けが施されていることに特色がある.(中略)これまでの自民党小泉政権時代の市場の自由による公共事業の削減や,民主党の「コンクリートから人へ」の歩みを,一挙に逆転させて,小渕時代の公共事業の大判振る舞い,さらにはそれを超えて,かの田中角栄の日本列島改造時代へと逆戻りするような印象を与えるものである.
 日本はかつての人口爆発と高度経済成長から,人口減社会と安定成長時代へと移行する.確かに東日本大震災に見られるように,日本は災害列島の不安を抱かざるを得ない状況となっている.また,これまでに営々と積み上げられてきたインフラの老朽化対策や整備も不可欠であることは言うまでもない.私たちもこのような新しい時代を迎えて,国土強靭化とは全く異なる「新たな公共事業政策」をつくらなければならない.
(「はじめに」より)
はじめに
第一章 震災復興と国土強靭化
第二章 公共事業の再編と国土強靭化
第三章 総有と市民事業――国土・都市論の「未来モデル」
第四章 消費税が公共事業費に化ける
五十嵐敬喜(いがらし・たかよし)
1966年早稲田大学法学部卒業.前内閣官房参与.現在,法政大学法学部教授・弁護士.著書に『美しい都市と祈り』『美しい都市をつくる権利』(学芸出版社),『市民の憲法』(早川書房),『「都市再生」を問う』『建築紛争』『道路をどうするか』(小川明雄氏との共著,岩波新書) ほかがある.

書評情報

しんぶん赤旗 2014年4月6日
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