もっと変わる! 介護保険

2015年からの改訂ポイント「地域包括ケアの構築」と「費用負担の公平化」をわかりやすく解説

もっと変わる! 介護保険
著者 小竹 雅子
通し番号 907
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2014/08/28
ISBN 9784002709079
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
在庫 品切れ
制度発足から12年間.サービス利用者は456万人と,スタート時の二倍となった.本書では,数度の改訂を経た2015年からの改訂ポイント「地域包括ケアの構築」と「費用負担の公平化」をわかりやすく解説する.また,介護保険料や利用料をめぐる課題,利用者・介護労働者それぞれが抱える問題や,制度上の問題点についても紹介.

■著者からのメッセージ

 介護保険制度は2000年4月,「介護の社会化」を掲げてスタートしました.
 その背景には,増えつづける高齢者人口に比例して高まる介護ニーズと,家族による介護負担の限界がありました.病気やケガ,障害などがあっても,その人の暮らしを支え,介護する人の負担も減らそうと呼びかけた制度は2012年度現在,40歳以上の約7000万人が介護保険料を払い,サービスが必要という認定を約557万人が受けています.認定されて実際にサービスを利用しているのは約456万人で,スタート時の2倍に増えました.
 しかし,制度の広がりとともに,「介護の社会化」はまた,「介護問題の社会化」であることも明らかになってきました.介護保険があってもなお,年間約15万人以上の人が「介護離職」をします.介護疲れなどによる「高齢者虐待」は年間約2万件で,認知症の人の「行方不明」,介護心中や介護殺人などの悲劇もひんぱんに報道されています.私たちは介護が必要な人を支えあうために介護保険料を払うとともに,これまで隠れていた課題も共有することになりました.(中略)

見直しのポイント
 2014年6月に通常国会で成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(「医療介護総合確保推進法」,「地域医療・介護確保法」とも略されます)のなかで,介護保険のおもな見直しはつぎのようになります.

[介護保険料]
1.所得が低い人の第一号介護保険料(65歳以上)の負担を軽減する
[利用料]
2.「一定以上の所得がある人」の利用料を2割に引き上げる
3.施設サービスの居住費・食費(自己負担)の補足給付(低所得の人への負担軽減対策)を厳しくする
[ケアプラン]
4.市区町村に「地域ケア会議」を開くことを努力義務とし,個別ケアプランをチェックする
[介護予防事業]
5.自立(非該当)の人だけでなく,要支援(要支援1,2)の人も介護予防事業の対象にする
[在宅サービス]
6.要支援(要支援1,2)のホームヘルプ・サービスとデイサービスをサービス(予防給付)からはずして,市区町村の総合事業(地域支援事業)に移す
7.小規模なデイサービスは,在宅サービス(都道府県指定)から地域密着型サービス(市区町村指定)に移す
[施設サービス]
8.特別養護老人ホームの利用を,要介護3以上の人に制限する
[サービス付き高齢者向け住宅]
9.地域密着型サービスと地域支援事業が利用できるように,「住所地特例」の対象にする
[居宅介護支援事業所]
10.ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所を,都道府県から市区町村の指定に移す
(本書「I 介護保険のこれまで」「VI 2015年の介護保険」より)




■お詫びと訂正)


本書第1刷と2刷に,訂正を要する記述があります.本書をお求めになった読者の皆様には深くお詫び申し上げるとともに,下記のように訂正くださいますようお願い申し上げます.(岩波書店編集部)
42ページ10行目~19行目(下線部が訂正した箇所です)
改正では2015年4月以降,自宅のあった市区町村から転居して,別の市区町村のサービス付き高齢者向け住宅に暮らしている人が,転居先の市区町村の地域支援事業や地域密着型サービスが利用できるように,「住所地特例」をつけるとしています.
「住所地特例」は,特別養護老人ホームなどを利用するため,住民票を移しても,転居前の市区町村が介護保険の費用を負担し,転居先の市区町村の負担を軽減するしくみです.
地域支援事業は市区町村が実施する事業で,地域密着型サービスは市区町村が指定します.このため,利用できるのはその市区町村の住民が原則です.しかし,サービス付き高齢者向け住宅の建設が増える市区町村に,他の市区町村の住民がたくさん転居してくると,転居先の地域支援事業と地域密着型サービスの費用が増えてしまいます.このため,「住所地特例」を拡大して,地域支援事業や地域密着型サービスを利用する場合も元の市区町村が費用を支払い,転居先の市区町村の負担を減らすことになりました.ただし,実施前から入居している人は対象外とされています.
I 介護保険のこれまで
II 介護保険のいま
III 介護を必要とする人たち
IV 介護する人たち
V 介護現場で働く人たち
VI 二〇一五年の介護保険
一.所得が低い人の第一号介護保険料の負担を軽減する/二.「一定以上の所得がある人」の利用料を二割に引き上げる/三.施設サービスの居住費・食費の補足給付を厳しくする/四.市区町村に「地域ケア会議」を開くことを努力義務とし,個別ケアプランをチェックする/五.自立の人だけでなく,要支援の人も介護予防事業の対象にする/六.要支援のホームヘルプ・サービスとデイサービスをサービスからはずして,市区町村の総合事業に移す/七.小規模なデイサービスは,在宅サービスから地域密着型サービスに移す/八.特別養護老人ホームの利用を,要介護3以上の人に制限する/九.サービス付き高齢者向け住宅で地域密着型サービスと地域支援事業が利用できるように,「住所地特例」の対象にする/一〇.ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所を,都道府県の指定から,市区町村の指定に移す
VII 介護保険の課題
小竹雅子(おだけ・まさこ)
1956年生まれ.1981年から「障害児を普通学校へ・全国連絡会」事務局スタッフとして,地域の学校に通うことを願う障害をもつ子どもたち,保護者を支援する活動に参加.1996年,「市民福祉サポートセンター」設立に参加し,1998年から介護保険をめぐる電話相談を企画.相談事例をもとに『介護情報ハンドブック』(岩波書店)を執筆.2003年より「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」を主宰.
著書に『もっと知りたい! 国会ガイド』(2005年,共著),『こう変わる! 介護保険』(2006年),『介護情報Q&A第2版』(2009年),『介護認定 介護サービス,利用するには』(2009年,共著)(いずれも岩波ブックレット).市民福祉情報オフィス・ハスカップ編『おかしいよ! 改正介護保険』(2006年,現代書館)ほか.

市民福祉情報オフィス・ハスカップ http://haskap.net/
メイル・ミニコミ『市民福祉情報』のインターネット無料配信(希望者はホームページから登録),介護保険や社会保障制度の連続セミナー,国会集会などを開催.『ハスカップ・レポート』を随時発行.2006年から,首都圏の市民活動団体とともに電話相談「介護保険ホットライン」(介護保険ホットライン企画委員会主催)を毎年,企画.2013年には弁護士とともに電話相談「介護労働ホットライン」(介護労働ホットライン実行委員会主催)を実施.電話相談の報告書を発行.

書評情報

年金時代 2015年1月号
女性展望 2015年1-2月号
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