家父長制と資本制

マルクス主義フェミニズムの地平

階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった,近代資本制社会に特有の抑圧構造を明快に分析する代表作.

家父長制と資本制
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著者 上野 千鶴子
通し番号 学術216
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2009/05/15
ISBN 9784006002169
Cコード 0136
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 474頁
定価 本体1,340円+税
在庫 在庫僅少
女性への抑圧はいったい何に由来するのか.著者は主婦・家事労働に着目しつつ,階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった,近代資本制社会に特有の女性抑圧構造を,理論的,歴史的に明快に論じてみせた.マルクス主義フェミニズムの立場を打ち出し,研究の新たな地平を拓いた記念碑的著作.

■編集部からのメッセージ

学術書で,これほど激しい論争を呼んだ本が近年あっただろうか.
 本書は,著者の理論的支柱を示す主著.1986~88年に『思想の科学』誌に連載されたものに,大幅に手を入れ,1990年10月,小社から刊行された.そして,連載中も単行本が出てからも,大論争を呼び起こしたのだ.

 著者は,「女性の抑圧を解明するフェミニズムの解放理論には,次の三つがあり,また三つしかない」と,冒頭で言い切る.それは,
   1 社会主義婦人解放論
   2 ラディカル・フェミニズム
   3 マルクス主義フェミニズム
である.
 その上で,労働者階級が勝利し階級支配を廃絶すれば女性も解放されるという「社会主義婦人解放論」を厳しく批判,また家族の中の性支配に抗議の声を上げた「ラディカル・フェミニズム」の限界も示す.そして両者が問題とする「資本制」と「家父長制」,つまりは「市場」と「家族」とが重なり合った構造こそが,近代産業社会に固有の女性差別の根源であることを鋭く指摘した.本書は,マルクス主義フェミニズムという新たな立場から,理論と分析の両面において,近代産業社会にグサリとメスを入れた画期的な本だったのだ.
  当然,社会主義理論により女性解放をめざす立場や,自由主義的な立場から女性解放を考える立場からは,厳しい反論が寄せられた.そのことは,本書の中でも,新たに加えられた自著解題でも触れられている.
  しかし,近代産業社会において,なぜ女性は労働市場から締め出され,出産・育児・家事・介護・看取りにかかわる再生産労働を無償で負わされているのか,という問いは,この本により一つの解答を得ることになった.そしてその後の多くの議論やフェミニズムの理論的発展が,いま,例えば介護を社会で担う介護保険につながる潮流を生んでいくと思えば,学問とは何と刺激的な営みなのだろうと思わずにはいられない.

 文庫化にあたり,400字50枚を超える自著解題が加えられた.その見出しは,下記のとおりである.
  1 はじめに
  2 日本におけるマルクス主義とフェミニズムの不幸な関係
  3 マルクス主義フェミニズムの展開
  4 不払い労働から再生産労働へ
  5 国家というアクター
  6 さらなる多元理論へ
  7 近代へのパラドックス
上野千鶴子(うえの ちづこ)
1948年,富山県に生まれる.1977年,京都大学大学院社会学研究科博士課程修了.平安女学院短期大学,京都精華大学などを経て,現在東京大学教授.著書に『女という快楽』『スカートの下の劇場』『家父長制と資本制』『近代家族の成立と終焉』『差異の政治学』『老いる準備』『生き延びるための思想』『おひとりさまの老後』ほか.

書評情報

北海道新聞(朝刊) 2009年7月6日
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