西田幾多郎の憂鬱

苦悩と格闘に満ちた哲学者の人生に,近代日本成立に胚胎した問題系を照射する,斬新な評伝的批評の試み.

西田幾多郎の憂鬱
著者 小林 敏明
通し番号 学術250
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 哲学/心理学/宗教
刊行日 2011/04/15
ISBN 9784006002503
Cコード 0110
体裁 A6 ・ 400頁
在庫 品切れ
西田幾多郎の人生.それは1人の人間の個別的な営みを超え,明治から昭和に至る奔流のただなかに姿を見せ始めた「日本」を集約し,体現するものだった.同時代の多彩な資料に基づく実証的手法によって克明に描き出される哲学者の苦悩と格闘の人生に,近代日本の成立過程に現出した幾多の問題系を照射する斬新な評伝的批評.


■内容紹介
 この本は日本を代表する哲学者,西田幾多郎(1870-1945)の「評伝的批評」です.
 本書は一貫して西田の「苦悩」の対象となった人生,学問,政治にまたがるさまざまな問題を評伝風に取り上げながら,そのつど私なりの解釈を試みたものであり,したがって,西田という一人の人間の日常生活もまた,参照されるべきテクストに加えられた.書簡,日記の記述を前面に押し出した所以である.
……本書は,ある人々には西田批判と映るであろうし,他の人々には擁護とも映るであろう.私はそのどちらも否定しない.むしろ望んで両者を受け入れる.なぜなら,そこにこそ私自身の考える「批判」があると信じているからである.
――「あとがき」より

 目次にあるように「憂鬱な人」から「象徴化される父」まで,20のテーマ(章)で西田の生涯と思想を読み解いていきます.テーマはそれぞれ独立・完結しているので,関心のあるところだけを拾い読みすることも可能です.
 「通説」とは違う見解が盛り込まれているのも本書の特長のひとつです.また,さらなる読書のために巻末の「参考文献」は有用でしょう.
 なお,単行本(2003年刊)では旧版西田全集を参照していましたが,文庫化にあたり今回は引用をすべて新版西田全集に依りました.
1 憂鬱な人
2 没落する家/父
3 反骨の青春
4 内向する蹉跌
5 〈なければならない〉の性格
6 宗教親和性の起源
7 ロマンティックな苦悩
8 猫も死んでしまった
9 哲学的言文一致
10 外国語との格闘
11 慰戯としての和歌
12 形なきものの形を書く
13 無の集合論
14 すれちがう論争
15 マルクスへのアンビヴァレンツ
16 父殺しを試みる弟子たち
17 種の論理の影
18 右翼による攻撃の中で
19 人脈と軍脈
20 象徴化される父

参考文献
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
解説 西田幾多郎の憂鬱,日本近代の憂愁  熊野純彦
小林敏明(こばやし としあき)
1948年岐阜県生まれ.ベルリン自由大学宗教学研究所博士号取得.現在,ライプツィヒ大学東アジア研究所教授.哲学,精神病理学.著書に『〈主体〉のゆくえ――日本近代思想史への一視角』(講談社選書メチエ,2010)『父と子の思想――日本の近代を読み解く』(ちくま新書,2009)『廣松渉――近代の超克』(講談社,2007)『西田幾多郎 他性の文体』(太田出版,1997)『精神病理からみる現代思想』(講談社現代新書,1991)など.
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