ルソー

フランス革命に多大な影響を与えたルソー(1712─1778)の人と生涯,思想の全体像を平易に語る.

ルソー
著者 福田 歓一
通し番号 学術266
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2012/06/15
ISBN 9784006002664
Cコード 0130
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 318頁
在庫 品切れ
フランス革命に多大な影響を与えた思想家ジャン-ジャック・ルソー(1712─1778)は,文明批判,歴史哲学,経済理論,教育理論,政治理論,宗教思想,音楽ときわめて多岐におよぶ分野で文筆活動をおこなった.その人と生涯,思想の全体像を政治思想の泰斗が一般向けに平易に語る本書は,ルソー入門の決定版である.[解説=吉岡知哉]

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ジャン‐ジャック・ルソー(1712-78)の名を知らぬ人はいないでしょう.しかしその思想の全体像を知るのは困難をきわめます.政治思想家の第一人者,福田歓一氏にとっても,それはチャレンジングな仕事でした.
何と言っても,ルソーはわたくしにとって魅力とは言わぬまでも関心を失わせない思想家であり,文明の現在を考え,人類の未来を求める上に,避けて通れない巨像である.かつての研究のあとに,プレイアード版の著作集が出,またスタロバンスキーにはじまるすぐれた研究が現われ,しかもその多くはルソーの思想の統一的理解を志向している.わたくしが,そういうものとつき合いながら,自分なりに考えた全体像が,多面体のイメイジであり,さらに重層構造の仮説である.それは,まだ十分成熟したものとは言えないであろう.けれども,本書でルソーの思想を紹介するために,わたくしはあえてこの図式を使って見ることにしたい.それはわたくしにとっては自分の仮説の有効性を検証する試みであり,その試みが読者をルソーの思想に案内するのに役立つとすれば,そんなに有難いことはないのである.(本書23-24頁)
解説者の吉岡知哉教授によれば,本書の特色の「ひとつは,著者が「評伝」という形でルソーの生涯を描いたことであって,抽象度の高い,時として難解な学術的文章で知られる著者の,平易で柔らかくしかも新書や時事的文章とも異なる文体に,われわれは接することになった./もうひとつは,叢書の趣旨を受けて,本書が思想家の全体像の提示を意図することによって,いわゆる政治思想の範囲を越えるテキスト,『新エロイーズ』や『エミール』をもそれ自体として扱っていることである.」といいます.
1986年に講談社から「人類の知的遺産」シリーズの1冊として刊行されたこの名著は,のちに『福田歓一著作集』第6巻(岩波書店1998年)に収められたものの,いずれも長いあいだ入手できませんでした.今回,ルソー生誕300年を機に,「文明の現在――ルソーに引照して」(『世界』1981年1月号所収)を付して文庫として復刊します.本書を手掛かりにルソーを読み直してみませんか.
福田歓一(ふくだ かんいち)
1923-2007年.東京大学法学部教授,明治学院大学学長を歴任.東京大学名誉教授.政治哲学専攻.政治学史の深い学識をもって現実政治を批判的・原理的に考察した.『デモクラシーと国民国家』(岩波現代文庫)『近代の政治思想』『近代民主主義とその展望』(岩波新書)ほか.主要な作品は『福田歓一著作集』全10巻(岩波書店)に収録されている.

書評情報

愛媛新聞 2012年8月5日
信濃毎日新聞(朝刊) 2012年7月29日
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