出口なお

女性教祖と救済思想

大本教の開祖出口なおの千年王国的終末思想はどこから生まれたのか.民衆思想史家がその内面に迫る.

出口なお
著者 安丸 良夫
通し番号 学術296
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 歴史/地理
刊行日 2013/07/17
ISBN 9784006002961
Cコード 0123
体裁 A6 ・ 310頁
定価 1,672円
在庫 在庫あり
大本教の開祖,出口なお(1837―1918)は生活苦と家族の不幸が重なるなか,五十代にして初めて神がかり状態になり,自動書記による「お筆先」という文章を大量に残した.すべての人に改心をもとめる,そのラディカルな千年王国的終末思想はどこから生まれたのか.民衆思想史家が宗教者の内面に迫る評伝の傑作.


■内容紹介
 出口なお(1837―1918)は宗教法人大本の教祖.没落した大工の長女として生まれ,18歳で出口家の養女となったが,出口家は徐々に没落し,なおは最底辺の生活を経験した.家族の不幸も連続するなか,92年に初めて神がかり状態になり,「お筆先」と呼ばれる神の言葉を書きつけるようになる.1900年上田喜三郎(出口王仁三郎)を五女すみの婿に迎え,上田と対立しつつも大本開教の基礎を築いた.大本教は明治末年以降爆発的に発展し,やがて弾圧を招いていく.
 著者は大学院生のとき,アルバイトで大本教の教団史の編纂に関わったのがきっかけで,出口なおを読み始めたという.
「出口なおを説得的に捉えるためにはどうすればいいかと,いろいろ考えて宗教社会学の本だとか,精神医学的な本だとか,これまで自分の専門外だと思っていた本もあれこれ読んでみました.……ともかく自分の研究の原点にあった「通俗道徳」論を具体化するためにはこの素材が一番自分には気に入っていたので,それまでとはやや異なった方向で展開してみた」(『安丸良夫集1』351頁)
 本書は1977年に朝日新聞社より朝日評伝選として,87年に朝日選書として,2009年に洋泉社MC新書として刊行されました.教団関係者でない第三者が描いた出口なおの評伝は,小説化した富岡多恵子『三千世界に梅の花』(新潮社1980)を別とすると,いまなお本書しか存在しません.今回の文庫化にあたり,安丸先生には本文に細かな修正を施していただいただけでなく,「あとがき」に代えて書き下ろしのご論考をお寄せいただきました.
はじめに
1 生いたち
2 苦難の生活者として
3 内なる声
4 告知者として
5 零落(おちぶ)れた神たち
6 出会いと自認
7 近代化日本への憤激
8 天下の秋
あとがき
宗教文化の可能性――文庫版「あとがき」に代えて
年譜
安丸良夫(やすまる よしお)
1934年富山県生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程修了.一橋大学名誉教授.日本思想史専攻.著書に『現代日本思想論』 『近代天皇像の形成』(岩波現代文庫),『神々の明治維新』(岩波新書)等があり,2013年6月「安丸良夫集」(全6巻,岩波書店)が完結した.

書評情報

文學界 2020年1月号(評者:栗原 康さん)
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