朝鮮人BC級戦犯の記録

日本の戦争責任の末端を担って戦犯に問われた朝鮮人148人.現在まで続く長い過酷な闘いのドキュメント.

朝鮮人BC級戦犯の記録
著者 内海 愛子
通し番号 学術329
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 歴史/地理
刊行日 2015/07/16
ISBN 9784006003296
Cコード 0121
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 398頁
在庫 品切れ
日本の戦争責任の末端を担って戦犯に問われた朝鮮人148人(うち23人処刑).その多くが監視要員として過ごしたタイ・マレーシア・ジャワの俘虜収容所で,一体何が起こっていたのか.収容所の実態,監視要員になった経緯,戦犯裁判での扱い,現在も続く国家補償を要求する闘い(文庫版新稿)等を明らかにするドキュメント.

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本書は、『赤道下の朝鮮人叛乱』(1980年、村井吉敬との共著)執筆のための調査を通じて、李鶴来さんら朝鮮人BC級戦犯(148名、うち23名が処刑)と出会った著者が、丹念に聞き取ったその証言と基本資料に基づいて記した朝鮮人BC級戦犯に関するドキュメントです(元版は、1982年、勁草書房刊行)。
彼らのタイ、マレー、ジャワの俘虜収容所監視員としての過酷な体験(I)、なぜ彼らが俘虜収容所の監視員となったのか、思想的効果をねらって実行されたその経緯、さらに俘虜収容所の機構と実態(II)、そして戦争犯罪についての規定と戦後の戦犯裁判でどのような扱いを受けたか(III)等が詳細に述べられています。そしてIVでは、朝鮮人BC級戦犯は、1951年のサンフランシスコ講和会議で締結された対日平和条約によって、日本国籍を喪失して以降も、“戦犯となった日本人としての義務をはたせ”という理由から釈放されなかったことを、スガモプリズンから釈放された日本人A級戦犯との大きな違いとして言及されています。
朝鮮人BC級戦犯は、1957年までにすべての人が釈放されましたが、日本国家による戦後補償からは排除されました。国家補償を求める闘いは現在も続いており、文庫化にあたっては、その後の闘いの概要と戦後補償をめぐる動向、韓国における名誉回復への道のりになどについて、付章として加えていただきました。その他、関連年表や地図なども新たに付しています。本書は、BC級戦犯に関する必読の基本書です。
内海愛子(うつみ あいこ)
1941年生まれ。恵泉女学園大学名誉教授、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター特任教授。主な著書に『赤道下の朝鮮人叛乱』(共著、勁草書房、1980年)、『マンゴウの実る村から――アジアの中のニッポン』(現代書館、1983年)、『泰緬鉄道と日本の戦争責任――捕虜とロームシャと朝鮮人と』(共著、明石書店、1994年)、『戦後補償から考える日本とアジア』(山川出版社、2002年)、『スガモプリズン――戦犯たちの平和運動』(吉川弘文館、2004年)、『キムはなぜ裁かれたのか――朝鮮人BC級戦犯の軌跡』(朝日新聞出版、2008年)、『戦後責任 アジアのまなざしに応えて』(共著、岩波書店、2014年)などがある。

書評情報

東京新聞(朝刊) 2015年8月16日
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