書誌学談義 江戸の板本

江戸の板本を手にとり理解するための基礎知識を,近世文学研究の泰斗が伝授する,和本リテラシー入門.

書誌学談義 江戸の板本
著者 中野 三敏
通し番号 学術339
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 文学
刊行日 2015/12/16
ISBN 9784006003395
Cコード 0191
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 354頁
定価 1,430円
在庫 在庫あり
書誌学とは時代の産物としての書物そのものから様々な「情報」を引き出すための技術である.近世文学研究の泰斗が,江戸の板本を手にとって理解するための基礎知識を,長年の経験をもとに,豊富な図版と用語解説をまじえてわかりやすく伝授する.和本リテラシーを育むための最良の入門書.「板本書誌学関係文献一覧」(鈴木俊幸作成)を収録.


■内容紹介
 書誌学とは,図書を形態・内容の両面から調査・研究の対象とする学問のこと.印刷術・製本術・古文書学・文献学・分類学・写真術・書道,紙・筆墨など材料の研究までを含み,時代の産物としての本そのものから「情報」を得るための技術ともいえます.
 一方,「板本」とは,和本の中でも版木に文字や絵を彫って印刷された書物のことです.印刷とはいえ近代以降のものとは異なり,すべての工程が人の手になる,いわば手作りの本ですが,写本や古活字本など貴重書として扱われる書物と異なり,日常実用のごく普通本であることから,その書誌学的検討は後回しにされがちでした.
 本書は近世文学研究の泰斗にして,明治以前の書籍の蒐集家としても知られる著者が,体系的な「板本書誌学」に先鞭をつけた一冊です.
 文庫化にあたり,振り仮名を大幅に増やし,巻末には鈴木俊幸氏(中央大学教授)による,最新研究を踏まえて単行本を中心にまとめられた「板本書誌学関係文献」一覧を収めています.
 板本書誌学のすすめ――序にかえて
第一章 板本というものの性質
第二章 板式
 1 製版と活字版の盛衰
 2 製版の技法・近世木活
 3 銅版・色刷り
 4 田舎版
第三章 書型
第四章 装訂
 1 巻子本・帖仕立て
 2 糸綴じ本(大和綴じ)
第五章 分類
 1 江戸時代の分類意識
 2 地本の分類
 3 分類意識の変化――明治・大正期
第六章 板本の構成要素――書肆の受け持つ部分
 1 表紙
 2 題簽
 3 見返し・扉 付 魁星印
 4 封切紙
 5 奥付・刊記
 6 予告・広告・蔵版目録
 7 蔵版・蔵版印・蔵版記 付 入銀
 8 袋
第七章 板本の版面
 1 匡郭・界線・罫
 2 柱記
第八章 本文の構成要素――著述内容に関わる部分
 1 題字・序・凡例・目録
 2 口絵・本文・挿絵・跋
 3 内題・尾題・作者名
 4 印・落款
 5 正誤表
 6 読者による書き入れなど
第九章 刊・印・修――板(版)・刷り(摺り)・補(訂)
付論 板株・求板

 あとがき
 現代文庫版あとがきにかえて
 板本書誌学関係文献(鈴木俊幸 作成)
 索引
中野三敏(なかの・みつとし)
1935年福岡県生まれ.早稲田大学大学院修士課程修了.専攻は江戸文学.九州大学名誉教授.著書に『和本の海へ――豊饒の江戸文化』(角川書店),『戯作研究』(中央公論社),『江戸狂者伝』『写楽――江戸人としての実像』(以上,中央公論新社),『江戸名物評判記案内』 『近世新畸人伝』 『十八世紀の江戸文芸――雅と俗の成熟』(以上,岩波書店),『本道楽』(講談社),編著書に『近世子どもの絵本集』(岩波書店),『洒落本大成』(中央公論社,共編),『大田南畝全集』(岩波書店,共編)などがある.

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