詞華断章
季節のうつろいに響きあい,忘れえぬ日々を呼びおこす古の歌蔵.生の鼓動と魂を伝えるエッセイの精華.(解説=辻邦生)
万葉・古今から芭蕉・蕪村・晶子まで,季節のうつろいに響きあい,忘れえぬ時を呼びおこす日本の歌蔵.「見るにつけ,思うにつけ,古人の詞華とともに生きている自分を知らされる」――本書は古今の詩歌を味わい,その詞華に誘われて,さりげなく清冽な一文で生の鼓動と魂のありかを伝える.エッセイの精華.(解説=辻邦生)
■編集部からのメッセージ
本書は1988年8月から1994年3月まで「朝日新聞」に毎月一回連載され,94年12月朝日新聞社から刊行された後,97年6月朝日文芸文庫として刊行されました.詩歌に限らず,散文まで含めた好きな詞華を引用しての短いエッセーとして,新聞連載時から高い評価を集めていました.
著者は「あとがき」で書いています.
「私にとっては,詩歌も小説も評論も,又,古典文学も現代文学も人間の生きた証し,言葉のかたみとしてはまったく対等なので,垣根なしに好きな詞華について書くことができるのは,企てとしては有り難かった.」
「与えられた場は,文学作品の解釈や注釈の場でもなければ,文学史のための場でもないと思うので,とにかく自分の感銘をよりどころに,日常生活において,自分が詞華とどう繋がっているのか,どのように好きなのかをながめて言うしかないと考えた.」
本書に収録された句歌は150に及びます.
「見るにつけ,思うにつけ,古人の詞華とともに生きている自分を知らされる」と著者自ら書いているように,万葉・古今から芭蕉・蕪村・晶子まで,豊かな日本の歌蔵に収められた生の証しとしての言葉が,季節のうつろいと日々の場面に蘇り,息づき,流れ出します.本書は歓びと痛みを抱き,清冽なる一文をもって限りある時を端正に綴っています.まさにエッセイの精華といえる一冊です.
「解説」で辻邦生氏は,「『詞華断章』は,その意味からみて,日本の短詩形詩歌のこの上ない手引きである」と記しています.また「『詞華断章』には,解説式の文章は一行もない.すべて作家竹西寛子の〈生〉の熱い鼓動なのだ」とも評しています.
「うた」の調べに添い,ひめやかに生き続けるよろこびと安堵を味わえるひと時.時を超えて共感し,作者との共存を自覚する手がかり.選び抜かれた言葉が心の奥底の扉を開き始めます.本書をじっくりと味わっていただくと,「うた」のこころをひしひしと感じていただけるのではないでしょうか.本書のご一読を心よりお薦めする次第です.
■編集部からのメッセージ
本書は1988年8月から1994年3月まで「朝日新聞」に毎月一回連載され,94年12月朝日新聞社から刊行された後,97年6月朝日文芸文庫として刊行されました.詩歌に限らず,散文まで含めた好きな詞華を引用しての短いエッセーとして,新聞連載時から高い評価を集めていました.
著者は「あとがき」で書いています.
「私にとっては,詩歌も小説も評論も,又,古典文学も現代文学も人間の生きた証し,言葉のかたみとしてはまったく対等なので,垣根なしに好きな詞華について書くことができるのは,企てとしては有り難かった.」
「与えられた場は,文学作品の解釈や注釈の場でもなければ,文学史のための場でもないと思うので,とにかく自分の感銘をよりどころに,日常生活において,自分が詞華とどう繋がっているのか,どのように好きなのかをながめて言うしかないと考えた.」
本書に収録された句歌は150に及びます.
「見るにつけ,思うにつけ,古人の詞華とともに生きている自分を知らされる」と著者自ら書いているように,万葉・古今から芭蕉・蕪村・晶子まで,豊かな日本の歌蔵に収められた生の証しとしての言葉が,季節のうつろいと日々の場面に蘇り,息づき,流れ出します.本書は歓びと痛みを抱き,清冽なる一文をもって限りある時を端正に綴っています.まさにエッセイの精華といえる一冊です.
「解説」で辻邦生氏は,「『詞華断章』は,その意味からみて,日本の短詩形詩歌のこの上ない手引きである」と記しています.また「『詞華断章』には,解説式の文章は一行もない.すべて作家竹西寛子の〈生〉の熱い鼓動なのだ」とも評しています.
「うた」の調べに添い,ひめやかに生き続けるよろこびと安堵を味わえるひと時.時を超えて共感し,作者との共存を自覚する手がかり.選び抜かれた言葉が心の奥底の扉を開き始めます.本書をじっくりと味わっていただくと,「うた」のこころをひしひしと感じていただけるのではないでしょうか.本書のご一読を心よりお薦めする次第です.
竹西寛子(たけにし ひろこ)
1929年広島市生まれ.早稲田大学文学部卒業.1981年,短篇小説『兵隊宿』により川端康成文学賞を,長篇評論『山川登美子――「明星」の歌人』により毎日芸術賞(1986年)を,また1994年には日本芸術院賞を受賞するなど,作家,評論家として確乎たる地位を築く.その他に『管絃祭』(女流文学賞)『式子内親王・永福門院』(平林たい子文学賞)『往還の記――日本の古典に思う』(田村俊子賞)『古今和歌集』『日本の文学論』『哀愁の音色』『贈答のうた』(野間文芸賞)『言葉を恃む』『竹西寛子著作集』(全五巻別冊一)『自選 竹西寛子随想集』(全三巻)など著書多数.
1929年広島市生まれ.早稲田大学文学部卒業.1981年,短篇小説『兵隊宿』により川端康成文学賞を,長篇評論『山川登美子――「明星」の歌人』により毎日芸術賞(1986年)を,また1994年には日本芸術院賞を受賞するなど,作家,評論家として確乎たる地位を築く.その他に『管絃祭』(女流文学賞)『式子内親王・永福門院』(平林たい子文学賞)『往還の記――日本の古典に思う』(田村俊子賞)『古今和歌集』『日本の文学論』『哀愁の音色』『贈答のうた』(野間文芸賞)『言葉を恃む』『竹西寛子著作集』(全五巻別冊一)『自選 竹西寛子随想集』(全三巻)など著書多数.