坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ

俳優の視点から歌舞伎鑑賞の「ツボ」を伝授します.知的で洗練された語り口で,芸の真髄を明らかに.

坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ
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著者 坂東 三津五郎 , 長谷部 浩
通し番号 文芸265
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 文芸
日本十進分類 > 芸術/生活
刊行日 2015/06/16
ISBN 9784006022655
Cコード 0174
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 302頁
定価 本体1,340円+税
在庫 在庫僅少
世話物・時代物をどう観るか,踊りの魅力とは,荒事・和事をどう愉しむか,新作の可能性とは――など,俳優の視点から,歌舞伎鑑賞の「ツボ」を伝授します.演題に即して観かたを具体的に解説.さらに舞台の想い出や演じる心意気にも触れ,三津五郎丈ならではの知的で洗練された語り口で,芸の真髄を解き明かします.(カラー口絵2頁)

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本書は長谷部浩氏が聞き手となって坂東三津五郎さんの話をまとめたもので,2008年に小社より単行本として刊行されました.三津五郎さんは2015年2月21日,59歳の若さで亡くなりました.謹んでご冥福をお祈りいたします.以下は著者の「まえがき」と編者の「あとがき」からの抜粋です.
初舞台を踏んで46年,ほぼ毎月のように舞台に立ち,いろいろな芝居に出て,さまざまな役に取り組んできました.それでもまだ,出演したことのない作品もあれば,演じたことのない役もたくさんあります.それだけ歌舞伎という芝居は幅が広いのです.
歌舞伎は約400年,特定のパトロンを持つことなく,毎月興行を打ち続けて,お客さまをいかに満足させ,いかに喜んでいただくか,ということを大命題に,今日まで闘ってまいりました.
その時代時代によって,お客さまの求めているものは変わりますし,同じようなものばかりでは飽きられてしまいます.
その結果,歌舞伎という芝居は,じつにたくさんの要素を含み,さまざまな顔を持つ,得体の知れない総合演劇に成長したのです.
それはとりもなおさず,歌舞伎がお客さまの「目」によって磨かれ,お客さまの「心」によって鍛えられてきたことに他なりません.
こののちも歌舞伎が発展していくには,演じる我々側の努力と共に,このようなお客さまの,優しくも厳しいまなざしが,絶対に必要なのです.
今回岩波書店さんから,歌舞伎の入門書や専門書は数多くあるけれども,歌舞伎を観始めてひと通り知った上でさらに奥深い世界へと導ける,中級者を対象とした本を出したい,とのご要望を賜りました.
そのような趣旨に副ったものに出来上がったかどうか,いささか心配ではありますが,この役者はこんなことを考えて舞台に上がっているのか,ということだけでも知っていただき,それを皆さまの歌舞伎への新たな興味につなげて下さるなら,この上ない幸せです.
――十代目 坂東三津五郎(「まえがき」より)
平成19年から平成22年まで,三津五郎さんからお話を伺って,本書と『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』の二冊を,単行本のかたちで岩波書店から上梓した.毎月のように時間を割いてお話をしてくださった.三津五郎さんの話はいつも明晰で曖昧なところがみじんもなかった.具体的かつ分析的で,文字に起こしても破綻がない.聞書きを担当する身としては,本当に楽しかった.
話をすれば終わりというのではない.私がまとめた原稿を何度も目を通されたことは,単行本のあとがきに書いたが,収録する写真もみずから一枚一枚選んだ.装幀も三津五郎格子を使いたいと,はっきり意見をおっしゃった.著者としての責任を果たされていた.仕事に対する真摯な態度は,舞台から出版まで一貫していた.本格であることの大切さ.それには微塵も怠けることがあってはならないと,行動で示されていた.祖父にあたる八代目は,学者肌で,数々の著作を残している.三津五郎さんは役者として大成するのはもちろんだが,自分なりに,藝について活字で残しておきたいと考えていたように思う.本のかたちになったとき,手放しで喜んでくださったのを覚えている.
まさしく「身体を鍛え,技術を磨き,内面を充実させる」ことに捧げた生涯だった.59歳の早すぎる死が惜しまれてならない.
このたび,岩波現代文庫に収める話があったときに,三津五郎さんがいとおしむように創り上げた単行本の体裁を,できるだけ崩すことなく文庫化したいと願った.関係のみなさんのお力添えで,それがかなったことをうれしく思う.
――長谷部浩(「岩波現代文庫版あとがき」より)
著者
坂東三津五郎(十代目,ばんどう・みつごろう)
1956-2015年.歌舞伎役者・日本舞踊坂東流家元.九代目坂東三津五郎の長男として東京に生まれる.62年『黎明鞍馬山』の牛若丸で初舞台,五代目坂東八十助を襲名.01年,十代目坂東三津五郎を襲名.06年に日本芸術院賞,09年に紫綬褒章など受賞多数.著書に『坂東三津五郎 踊りの愉しみ』などがある.
編者
長谷部 浩(はせべ ひろし)
1956年埼玉県生まれ.演劇評論家,東京藝術大学美術学部教授(近現代演出史).紀伊國屋演劇賞審査委員.現代演劇・歌舞伎を中心に評論.著書に『菊之助の礼儀』『野田秀樹の演劇』『菊五郎の色気』『傷ついた性』『4秒の革命』『盗まれたリアル』など.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2015年8月9日
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