ゆたかな社会 決定版

「ゆたかさ」の増大と普及は私達に何をもたらしたか.現代資本主義の特質を解明した古典的名著.

ゆたかな社会 決定版
著者 ガルブレイス , 鈴木 哲太郎
通し番号 社会137
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2006/10/17
ISBN 9784006031374
Cコード 0136
体裁 A6 ・ 440頁
定価 1,738円
在庫 在庫あり
「ゆたかさ」の増大と普及は私達に何をもたらしたか.現代資本主義の特質を明らかにした著作として古典的位置を占める本書(第4版)では,マネタリズムの金融政策,環境問題,軍事支出などを既に批判的に考察,ゆたかな社会が政治的に保守化していくという陥穽が解明される.世界を掴む必読書の名に恥じない.


■内容紹介
 このたび岩波現代文庫のために本書を刊行することになりました.岩波書店では『ゆたかな社会 第四版』を単行本と同時代ライブラリーとして刊行してきましたが,今回は1998年に刊行された同書の40周年記念版の本邦初訳であり,最終改訂版であるだけに文字通りの決定版として読んでいただける内容になっています.
 第四版と比較して,今回の新版では大きな改訂がなされました.最も大きな変更はインフレーションについての議論です.アメリカでは厳しい金融引き締め政策によってインフレが収束されたために,インフレがゆたかな社会の未解決の問題であるという初版以来の著者の立場は変更を余儀なくされました.それだけではなく,統計数字のアップデートや不適切となった文章や語句の削除・改善など,非常に多くの修正がなされました.また第四版にあった長文の序論が削除され,ごく短い序文に置き換えられました.
 以上の修正がなされているだけに,第四版を読んでいただいた方もぜひ本書をお読みいただきますようにお願いいたします.
 著者ガルブレイスは本年4月に97歳で逝去しました.二十世紀の経済学者として,ガルブレイスほど広範な読者を持った人は他に存在しなかったのではないかと思われますが,本書は文字通り彼の代表作であります.40年以上前に書いた本の改訂に90歳を超えてもなお没頭していたことが,そのことを裏書しています.
 そして初版以来の経済成長とは何のためなのか.「ゆたかさ」の増大と普及は何をもたらしたのかという鋭い問いかけは,本書においても貫かれています.マネタリズムの金融政策,環境問題,軍事支出などを批判的に考察し,ゆたかな社会の下で政治的保守主義が台頭する必然性を考察するなど,まさしく現代資本主義の特質を明らかにした名著として今後とも末永く読まれていく価値を持っていると信じます.
 もちろん冷戦後の米国の一極支配,グローバリゼーションの下での新自由主義の席巻という先進資本主義国の現実を本書がすべて正確に予期していたわけではありませんが,今日の世界の構造をより深いところから読み取る上で,本書の価値が薄れることはないでしょう.皆様にご一読をお勧めします.
40周年記念改訂版の序論
第1章 ゆたかな社会
第2章 通念というもの
第3章 経済学と絶望の伝統
第4章 不安な安心
第5章 アメリカの思潮
第6章 マルクス主義の退潮
第7章 不平等
第8章 経済的保障
第9章 生産の優位
第10章 消費需要の至上性
第11章 依存効果
第12章 生産における既得利益
第13章 集金人の到来
第14章 インフレーション
第15章 貨幣的幻想
第16章 生産と価格安定
第17章 社会的バランスの理論
第18章 投資のバランス
第19章 転換
第20章 生産と保障との分離
第21章 バランスの回復
第22章 貧困の地位
第23章 労働,余暇,新しい階級
第24章 安全保障と生存について
あとがき
訳者あとがき
J・K・ガルブレイス John Kenneth Galbraith
1908-2006 カナダ生まれの経済学者.ハーバード大学名誉教授.ハーバード大学などで教鞭をとった後,政府機関勤務,『フォーチュン』編集部勤務などを経て,1949~75,ハーバード大学教授.その間,ケネディ政権下の駐インド大使も務める.主著『アメリカの資本主義』『不確実性の時代』『新しい産業国家』『経済学と公共目的』『マネー』『権力の解剖』『ある自由主義者の肖像』他多数.

関連書籍

ページトップへ戻る