死刑台からの生還

無実の人間が死刑判決を受けるまでに何があったのか.恐怖の冤罪財田川事件の全貌を描くルポルタージュ.

死刑台からの生還
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著者 鎌田 慧
通し番号 社会156
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2007/08/17
ISBN 9784006031565
Cコード 0136
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 378頁
定価 本体1,000円+税
在庫 在庫僅少
1人の死刑囚が無実を訴え送った手紙は,裁判所の書類棚に放置され,12年目にようやくある裁判官の目にとまった.無実を確信した裁判官は,職を辞し弁護士として,再審に執念を燃やす──.1人の人間が殺人犯とされ死刑判決を受けるまでに何があったのか.恐怖の冤罪財田川事件の全貌を描き,高い評価を受けたルポルタージュ.

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冤罪を解明する息づまる法廷ドラマ

 身に覚えがないのに罪に問われる――そんなことは自分には関係ない,と思っている人は多いかもしれない.しかし,いったん警察・検察の網の目にからめとられれば,長期間の拘禁,密室での執拗な取調べに耐え,それでも否定しつづけるのは並大抵のことではない.
 最近,痴漢冤罪をテーマにした映画『それでもボクはやっていない』(周防正行監督)が話題になった.現実に冤罪は繰り返し起こっている.
 2003年4月,県議選での現金買収があるとして13人が逮捕された鹿児島県の志布志選挙違反事件,2002年婦女暴行事件で2年間服役したあと真犯人が明らかになった富山県氷見市の事件,三人の女性を殺害したとして死刑を求刑され,無罪判決を得た佐賀県の北方事件……まだまだある.
 他人事ではないのだ.しかも取調べのあり方や,ビデオなどでの可視化が課題として指摘されているのに,具体的な進展もないまま,職業裁判官3人のなかに市民6人が送りこまれ評決をしなくてはならない裁判員制度が2009年より始まる.果たして,自分が冤罪に手を貸さないという保証があるだろうか?

 本書にあるのは,戦後間もない1950年の事件である.ただ構図はいまも残念ながら変わっていない.
  2月28日未明,徳島県との県境にちかい香川県財田村で,ヤミ米販売をしていたひとり暮らしの男性が惨殺された.100名を超える容疑者が別件逮捕などで取調べを受けたが決め手に欠き,その後別の事件を起こした19歳の青年が,「自白」によって逮捕された.これが恐怖の冤罪「財田川事件」のはじまりである.
 この青年谷口繁義は事件への関与を全面否定するが,判決は死刑.控訴・上告は棄却され,1957年,最高裁で死刑が確定する.無実を訴え再審を求める手紙を裁判所に出していたのが,12年目にようやく一人の裁判官の目にとまり,事態は動き出す.裁判官矢野伊吉は職を辞し,谷口の「奪還」に向けたたたかいを開始した.
本書はその再審法廷での検察・弁護士の攻防を描き,冤罪が起こる原因を解明した迫真の記録である.――結局,谷口死刑囚は34年も拘禁されたあと,無罪判決をえて釈放された.

「わたしが冤罪に関心をもつのは,それが許されざる不正義であり,人間に対する最大の侮辱と思うことにも依るが,それと同時に,個人の生活を犠牲にし,素知らぬ顔で成立している国家の構造を解明したいからである.」

 著者はそう記す.

  本書は1983年,裁判進行の途中で立風書房より刊行された.それに「判決批判」「釈放のあとで」を加えた同時代ライブラリー版(1990年11月)を底本にしている.

鎌田 慧(かまた さとし)
1938年青森県に生まれる.新聞・雑誌記者などを経て,フリーになる.著書に『自動車絶望工場』『教育工場の子どもたち』『六ヶ所村の記録』『大杉榮 自由への疾走』『反骨のジャーナリスト』『ドキュメント屠場』『痛憤の現場を歩く』『狭山事件』『いじめ自殺 12人の親の証言』『いま,連帯をもとめて』『抵抗する自由』『全記録 炭鉱』『日本列島を往く』(全6巻)など.著作集に『鎌田慧の記録』(全6巻)がある.
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