秘境ブータン

鎖国状態にあった小王国の自然と社会と文化を,百数十点の貴重な写真とともに臨場感あふれる筆致で描く.(解説=山口裕文)

秘境ブータン
著者 中尾 佐助
通し番号 社会229
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 歴史/地理
刊行日 2011/09/16
ISBN 9784006032296
Cコード 0126
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 362頁
在庫 品切れ
1958年に単身ブータン入りした探検家が,ヒマラヤにひっそり佇む古代的な小王国の自然と社会と文化を日本にはじめて紹介した.山ヒルの襲いかかる密林の道,ブータン・ヒマラヤの氷蝕地形,高山に咲く青いケシの花,チベット遊牧民の名残の風俗.百数十点の貴重な写真とともに臨場感あふれる筆致で描く.(解説=山口裕文)

■編集部からのメッセージ

憲法に「国民総幸福」を掲げる国家として,近年世界的に注目されるようになった小国ブータン.半世紀前はインド以外と国交がなく,鎖国状態にありました.ヒマラヤの山々とそこに生いたつ草木を目指して,探検家・植物学者の著者は1958年,日本人としてはじめてブータンに入ります.現地の植生や地形はもとより,風俗や文化,社会構造までも鋭い観察眼でとらえ,臨場感あふれる筆致で描いた本書は,素晴らしいエッセイであると同時に,大変貴重な記録です.
 現地からの報告と帰国後に書かれた続報は毎日新聞に連載され,翌年『秘境ブータン』(毎日新聞社)として刊行されました.その後,1971年には社会思想社から現代教養文庫の一冊として再刊され,2004年には『中尾佐助著作集 第III巻 探検博物学』(北海道大学出版会)に収められています.
 初版が日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した本書のもう一つ大きな魅力は,百数十点に及ぶ写真です.50年前のブータンの姿を伝える著者撮影の写真ですが,2004年の著作集版には,照葉樹林文化研究会によって大阪府立大学学術情報センター中尾佐助コレクション所蔵のネガ,スライド,プリントの中から初版と同じか初版に近い写真を改めて選び出すことにより,それ以前の版に比べて格段に鮮明な写真が掲載されています.今回の岩波現代文庫版は,大阪府立大学と照葉樹林文化研究会のご協力を得て,著作集版のために用意されたこれらの画像資料を使用いたしました.前の版をお持ちの方も,ぜひ今回の岩波現代文庫版を手にとってご覧いただければと思います.

第二回出版おぼえがき

秘境ブータン
次はブータンだ
密林の奥
カリンポンへ
ブータンハウス
ブータン国境
照葉樹林帯
南ブータンの旅
乾燥地帯の秘密
パロ・ゾン
霧の山稜
チョモラリ
トレモ・ラ
弓道とウルシ
ハ・ゾン
セレ・ラ
大巻狩り
士農工商
新しい出発
リンシー・ゾンへ
青いケシの花
ラヤの村
死の谷プナカ
生命の泉は“牛乳”
トロンサ・ゾン
えんとつのない国
処女峰クーラ・カンリ
妻訪い
文明のいぶき
パン用小麦のふるさと
礼儀作法はお手本
ミツバチの大群襲来
近代化へ踏み切る
ブータン全図

ブータンその後
二十三年目のブータン

中尾佐助のブータン探検(山口裕文)
中尾佐助(なかお さすけ)
1916-93年.愛知県生まれ.京都帝国大学農学部卒業.専門は栽培植物学・遺伝育種学.大阪府立大学教授,鹿児島大学教授を歴任.アジア・アフリカを広く学術探検調査し,栽培植物の起源とその伝播に関連する生活文化を総合的に研究した.著書に『ヒマラヤの花』『栽培植物と農耕の起源』『料理の起源』『花と木の文化史』などがある.

書評情報

週刊現代 2015年5月30日号
図書館教育ニュース 2012年10月18日号
日本経済新聞(朝刊) 2012年4月8日
暮しの手帖 第4世紀55号(2011年12月)
公明新聞 2011年11月28日
朝日新聞(朝刊) 2011年10月27日
日本経済新聞(朝刊) 2011年10月16日
読売新聞(朝刊) 2011年10月16日
毎日新聞(朝刊) 2011年10月9日
信濃毎日新聞(朝刊) 2011年10月9日
北日本新聞(朝刊) 2011年10月9日
熱風 2011年10月号
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