食べかた上手だった日本人

よみがえる昭和モダン時代の知恵

80年前のシンプルで豊かな食卓を実践派食文化研究家が復元.食料危機を生き抜く知恵と技術があった!

食べかた上手だった日本人
著者 魚柄 仁之助
通し番号 社会292
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 文学
刊行日 2015/08/18
ISBN 9784006032920
Cコード 0195
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 232頁
定価 946円
在庫 在庫あり
モノはなくても貧しくない,冷蔵庫がなくても食品を腐らせない,少しのおかずで太らない──日本の台所が激変した80年前,シンプルな豊かさが卓袱台に並んでいた時代があった.実践派食文化研究家が,飽食ニッポンへの悔恨の果てにたどりついたモダン食生活の失われたユートピア.大量の資料を駆使してここに復元!


■著者からのメッセージ
 歴史には節目があるという.たしかに鎌倉幕府が滅びるとか明治維新とかは実にハッキリしておる.だが,庶民の食生活史に節目はない.明治になってちょんまげを切っても,食生活は江戸時代とほとんど変わらなかったようだ.とするとだ,今日の日本人が食べてるような和洋中何でもアリの万国博的食文化って,いつごろ確立されたのだろう.
 うちの同居人が仙台へ単身赴任していた3年6カ月の間,ひとりごはんを食べながら自分たちの27年間のふたりごはんを振り返り,同時にこのような食事スタイルの原点はどこにあったのかを探りつづけておりました.そして,同居人の仙台単身赴任の終了と同時に仕上がったのが,この本です.
 書いてみて到達したのは,関東大震災こそが近代日本食を激変させた,現代日本食の震源地だった,ということでありました.では,震源地を見つけに,ページをめくってくださいまし.
はじめに

1章 自給率が80%以上だった時代
国産中心の食料事情/何をどれだけ食べていた?/バラエティに富んだ野菜/乾物が西洋料理?/マツタケに「お安い時」があった!

2章 昭和の「お買いもの」マニュアル
買いもの上手の心得/賞味期限を決めるのは自分/あたしの買い方,教えます

3章 料理革命は台所道具から
大震災で台所激変/炭からガソリンまで熱源いろいろ/百花繚乱,調理器具/分岐点だった昭和初期/料理が勘から数値化へ/大衆的中華食の幕開け/非電化エコな道具類

4章 検証!卓袱台のヒミツ
どこで,どう食べる?/膳と卓袱台/卓袱台の低さにもワケがある/ごはん茶碗の大きさと献立/弁当箱にみるバランス食

5章 冷蔵庫いらずの保存の知恵
冷蔵庫はあったけど/ありがたき先人の知恵/知恵を尽くした貯え方/陸軍開発(!)の貯蔵瓶/太陽熱で干物作り/21世紀にも干物は現役/魚だって,どんどん干そう/干物の要は熱と風/塩も保存の大きな味方/炒ったり,味噌を使ったり/珍なるかな……

6章 和洋折衷,なんでも手作り
一汁一菜の献立/あこがれの料理番組/肉や魚をどう食べる?/ビフテキ1人前,約100グラム!/自分の食べもんは自分で作る/昭和10年代の梅干し作り/納豆だって味噌だって/スープを,ラードを,ソーセージを!

7章 浪漫あふれる,麗しのメニュー
外来和食の代表,カレー/塩辛サンドイッチ?/華麗なる和洋中の融合/似て非なるもの

8章 母の「愛」はとどまるところをしらず
ジュースという名の密造酒/廃物利用のススメ/卵信仰の時代/体と頭にイイ料理/ごはんも添加剤で強化!/「わかもと」は調味料だったんだ

終章 昭和モダンから現代へ
日本人,食の近代史/デンマークにもあった「食べかた上手」の知恵/安全と健康は自分で手に入れる!

あとがき
岩波現代文庫版あとがき
昭和モダン食生活略年表
主な参考・引用文献
魚柄仁之助(うおつか じんのすけ)
食文化研究家.1956年福岡生まれ.実家は大正時代から続く古典料理屋.古道具屋などを経て,1994年『うおつか流台所リストラ術』(農文協)で衝撃的にデビュー.以降,加工度の低い素材を活かした,安上がりで安全な食生活を提言し続ける.二十数年間にわたって収集した戦前から戦後にかけての食文化に関する膨大な資料をもとに,日本人の食文化の変遷を研究中.主な著書に『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』(朝日新書),『冷蔵庫で食品を腐らせない日本人』(大和書房),『明るい食品偽装入門』(サンガ),『酒育のススメ 』(家の光協会),『腸を元気にするレシピ109』(飛鳥新社)など多数.

書評情報

東京新聞(朝刊) 2015年10月4日
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