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2024.03.05
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ヒューマニティーズ
女性学/男性学
ジェンダーの視点から世界をみると何が変わるのか.学問と性別を理論的・実践的に問い直す刺激的な試み.
「女性/男性」という視点からみることによって,それまでの世界はどう変わってゆくのだろう.「性別」という「当たり前(自明性)」に思われているものは,どのように作られたのか.学問と性別を考えることは,理論的にも実践的にも,スリリングな試みである.性と,その欲望をめぐる政治とは何なのかを解き明かす.
■著者からのメッセージ
女性学は,女性に「ついて」の学問ではありません.「性」という視点を獲得すると,わたしたちがあたり前だと思っているこの社会がどのように異なってみえるのかを,提示する学問だと,わたしは思っています.「女」という性のあり方から,この社会を問い直すことは,当然のようにもう片割れの「男」の性のあり方をも問い直すことになるでしょう.
この本では,さまざまな分野にまたがる「女性学」について,概説書的にまとめる,ということはおこないませんでした.そのような優れた本は,たくさんあります.そうではなく,まず「性」「性別」とは何を意味するのか,「女性と男性の学」とは何を意味してきたのか,根源的に考えてみたいと思いました.その際に,できるだけ,従来の学問分野における他の思想家や理論と,関連づけるようにしました.
たとえば,今日「性」を考える際には不可欠であると思われる構築主義(構成主義)的な思考法は,ミシェル・フーコーなどの系譜学的思考法や,ジョン・L.オースティンやジョン・サールの言語行為論,アルフレッド・シュッツの流れをくむ現象学を踏まえて,女性学のなかで育まれてきたものといえると思います.女性学が,構築主義を利用したのではなく,女性学自体が構築主義的な分析方法を発展させてきたのです.しかし,このような女性学と他の学問分野がどのような関係にあるのか,ひいては「性」という視点を取り入れることによって,既存の学問分野にどのような変化がもたらされるのか,については,あまり問われない傾向がありました.ある意味「女性学/男性学」は,ゲットー(囲い込み)化されてきたといっていいかもしれません.ですから,できるだけ,女性学/男性学が,他の主要な学問分野とどのような関連をもち,どのような新しい考え方を提供してきたのかを示すために,積極的に女性学/男性学の専門とは思われていないひとたちの名前や理論を出すことにしました.難しいと思う場合は,その部分を無視して読んでも,意味が通じるようにはしてあります.
最後に.今回ははじめて,「です・ます」調で,論文を書きます.とても大きな冒険ですが,わかりやすく書けていることを祈りつつ.
■著者からのメッセージ
女性学は,女性に「ついて」の学問ではありません.「性」という視点を獲得すると,わたしたちがあたり前だと思っているこの社会がどのように異なってみえるのかを,提示する学問だと,わたしは思っています.「女」という性のあり方から,この社会を問い直すことは,当然のようにもう片割れの「男」の性のあり方をも問い直すことになるでしょう.
この本では,さまざまな分野にまたがる「女性学」について,概説書的にまとめる,ということはおこないませんでした.そのような優れた本は,たくさんあります.そうではなく,まず「性」「性別」とは何を意味するのか,「女性と男性の学」とは何を意味してきたのか,根源的に考えてみたいと思いました.その際に,できるだけ,従来の学問分野における他の思想家や理論と,関連づけるようにしました.
たとえば,今日「性」を考える際には不可欠であると思われる構築主義(構成主義)的な思考法は,ミシェル・フーコーなどの系譜学的思考法や,ジョン・L.オースティンやジョン・サールの言語行為論,アルフレッド・シュッツの流れをくむ現象学を踏まえて,女性学のなかで育まれてきたものといえると思います.女性学が,構築主義を利用したのではなく,女性学自体が構築主義的な分析方法を発展させてきたのです.しかし,このような女性学と他の学問分野がどのような関係にあるのか,ひいては「性」という視点を取り入れることによって,既存の学問分野にどのような変化がもたらされるのか,については,あまり問われない傾向がありました.ある意味「女性学/男性学」は,ゲットー(囲い込み)化されてきたといっていいかもしれません.ですから,できるだけ,女性学/男性学が,他の主要な学問分野とどのような関連をもち,どのような新しい考え方を提供してきたのかを示すために,積極的に女性学/男性学の専門とは思われていないひとたちの名前や理論を出すことにしました.難しいと思う場合は,その部分を無視して読んでも,意味が通じるようにはしてあります.
最後に.今回ははじめて,「です・ます」調で,論文を書きます.とても大きな冒険ですが,わかりやすく書けていることを祈りつつ.
(「はじめに」より)
はじめに
一、性別とは──女性学/男性学を学ぶ意味とは何か
㈠ 性別の不確定性
語られない性
㈡ 性の歴史学
セックスの発明/身体観とは
㈢ 性の生物学
哺乳類の発明/骨格からみる性差/卵巣の発見/知の政治性
二、近代社会の成立と完成──女性学/男性学はどのように生まれたか
㈠ 近代社会の成立
㈡ 人権と女の権利
女権宣言
㈢ 母性保護論争
㈣ ウーマン・リブ
母性批判/リブの方法論/男性性とは/女の加害者性
㈤ 女性学の誕生
「生産性の論理」批判
三、女性学と「女の論理」──女性学/男性学は社会の役に立つのか
㈠ 女性学をめぐって
女性学とは/女を対象とする/女のための女性学/女による女性学/女性学の担い手/分離主義か統合主義か/女の論理とは
㈡ 性役割
㈢ エコロジカル・フェミニズム
リブとフェミニズム、ジェンダー/エコロジカル・フェミニズム論争
㈣ マルクス主義フェミニズム
㈤ ポスト構造主義的ジェンダー論
新しいジェンダー論の意味/身体と物質性
四、性の多様性──女性学/男性学の未来はどうなるのか
㈠ フェミニズムはナショナリズムを超えられるか?
㈡ ポスト植民地主義とジェンダー
発話の位置とは
㈢ 男の解放
男性学/男の身体
㈣ セクシュアリティ
レズビアンである、ということ/ 〈男制〉と〈女制〉/欲望の政治
五、何を読むべきか
女性学/男性学の歴史と理論/性別をめぐって/近代社会のシステムと思想/女性学の諸理論/性の多様性
あとがき
一、性別とは──女性学/男性学を学ぶ意味とは何か
㈠ 性別の不確定性
語られない性
㈡ 性の歴史学
セックスの発明/身体観とは
㈢ 性の生物学
哺乳類の発明/骨格からみる性差/卵巣の発見/知の政治性
二、近代社会の成立と完成──女性学/男性学はどのように生まれたか
㈠ 近代社会の成立
㈡ 人権と女の権利
女権宣言
㈢ 母性保護論争
㈣ ウーマン・リブ
母性批判/リブの方法論/男性性とは/女の加害者性
㈤ 女性学の誕生
「生産性の論理」批判
三、女性学と「女の論理」──女性学/男性学は社会の役に立つのか
㈠ 女性学をめぐって
女性学とは/女を対象とする/女のための女性学/女による女性学/女性学の担い手/分離主義か統合主義か/女の論理とは
㈡ 性役割
㈢ エコロジカル・フェミニズム
リブとフェミニズム、ジェンダー/エコロジカル・フェミニズム論争
㈣ マルクス主義フェミニズム
㈤ ポスト構造主義的ジェンダー論
新しいジェンダー論の意味/身体と物質性
四、性の多様性──女性学/男性学の未来はどうなるのか
㈠ フェミニズムはナショナリズムを超えられるか?
㈡ ポスト植民地主義とジェンダー
発話の位置とは
㈢ 男の解放
男性学/男の身体
㈣ セクシュアリティ
レズビアンである、ということ/ 〈男制〉と〈女制〉/欲望の政治
五、何を読むべきか
女性学/男性学の歴史と理論/性別をめぐって/近代社会のシステムと思想/女性学の諸理論/性の多様性
あとがき
千田有紀(せんだ ゆき)
1968年生まれ.東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了.東京大学博士(社会学).現在,武蔵大学社会学部教授.
論文に「「家」のメタ社会学――家族社会学における「日本近代」の構築」(佐々木潤之介編『日本家族史論集1 家族史の方法』吉川弘文館,2002年),「構築主義の系譜学」(上野千鶴子編『構築主義とは何か』勁草書房,2001年),「アイデンティティとポジショナリティ――1990年代の「女」の問題の複合性をめぐって」(上野千鶴子編『脱アイデンティティ』勁草書房,2005年)など.
1968年生まれ.東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了.東京大学博士(社会学).現在,武蔵大学社会学部教授.
論文に「「家」のメタ社会学――家族社会学における「日本近代」の構築」(佐々木潤之介編『日本家族史論集1 家族史の方法』吉川弘文館,2002年),「構築主義の系譜学」(上野千鶴子編『構築主義とは何か』勁草書房,2001年),「アイデンティティとポジショナリティ――1990年代の「女」の問題の複合性をめぐって」(上野千鶴子編『脱アイデンティティ』勁草書房,2005年)など.