ポストモダン・ブックス

ハイデガーとナチス

ナチズムを擁護したハイデガーをどう読むか.ディコンストラクションが切りひらく新たな読みの戦略.

ハイデガーとナチス
著者 ジェフ・コリンズ , 大田原 眞澄 , 細見 和之 解説
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
シリーズ ポストモダン・ブックス
刊行日 2004/11/26
ISBN 9784000270793
Cコード 0310
体裁 B6変 ・ 126頁
在庫 品切れ
ナチズムを擁護した哲学者ハイデガーのテクストが,いったいなぜ民主主義と社会正義をめざす現代の思想的取り組みに寄与できるのか.ハイデガーの政治理念をめぐるこれまでの議論をふりかえったうえで,デリダによる大胆なハイデガー再読の道筋をたどり,ディコンストラクションが切りひらく新たな読みの戦略に光をあてる.

■ちょっと立ち読み

ハイデガーのテクストは安全のために没収されるべきなのだろうか.批評家はおそらくその喜びをいましばらく棚上げにしなければならないだろう.生き方と業績とには切り離して考えるべき点がある,というだけではない.むしろもっと積極的に,ハイデガーの思考にはナチズムに対する,いやそれどころか,全体主義的なあらゆる言説と行動に対する抵抗を提供できる可能性があるのだ.
(本文「今ハイデガーを読む」より)

問題は心地よい解決をいかに打破するかであり,ナチズムに屈しない,より望ましい思考を求めて努力することである.もし私たちがデリダの道をたどるならば,それはなじみのない未知の思考になるだろう.彼の一対の課題――断罪しかつ思考する――を思い起こしてみると,この対の課題は逆説的であるようにみえる.いま断固としてナチズムを断罪する,なおかつ,ナチズムとは何かを考えるあいだ断罪を中断するように主張する――どうしたらこんなことができるのだろうか.デリダが理解しているように,ハイデガー学徒には決定すべきルールは何もない.彼らは苦しむ.彼らはダブルバインドの状況に置かれていて,断罪しながら同時に思考しなければならない,いま判決を下しながら同時に待機して問い続けなければならないという,根本的に不安感をかきたてる振り子のような振動状態に置かれているのである.
(本文「境界線を越えて」より)

■全体の目次


  日本語版によせて
ハイデガーとナチス
  原注
  文献
〈解説〉
知と非知の幸福にして不幸な出会い(細見和之)
読書案内(細見和之)


■本文の詳細目次

政治との出会い
疑問と論争点
ポストモダン・ポリティックス
沈黙と隔たり
フライブルク,1933年
出世第一主義と順応
伝統のささえ
『存在と時間』――主体性にとって代わるもの
存在論の知識
実存主義の術語
アドルノとマルクス主義批評
新しい発掘資料
革命への献身
党と歩調を合わせて
国家社会主義教育
反ユダヤ主義
作者としてのハイデガー,ナチズムとしてのテクスト
ナチズムの言説――民族と労働
ドイツ
民族の現存在
国家社会主義のための哲学
急進的ナチズム
情事の終わり?
今ハイデガーを読む
ハイデガー/ポスト構造主義
断罪という暴力
ディコンストラクションという戦略
「この邪悪な,だが多重決定されたもの……」
境界線を越えて
ナチズムと形而上学
ハイデガーの倫理?
存在の歴史
ハイデガーとレヴィナス
責任
ディコンストラクションにおける倫理と政治
未確定の結論

著者
ジェフ・コリンズ(Jeff Collins)
イギリス,プリマス大学で,美術批評史の講座をもつ.著書に,Introducing Heidegger (Icon Books), Introducing Derrida (Icon Books) ほか.
訳者
大田原眞澄(おおたわら ますみ)
1949年生まれ.お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了.現在,一橋大学非常勤講師.専攻,アメリカ文学.訳書に,ケネス・シルバーマン『フーディーニ!!!』(共訳,アスペクト)ほか.
解説者
細見和之(ほそみ かずゆき)
1962年生まれ.現在,大阪府立大学助教授.詩人.専攻,ドイツ思想.著書に,『アイデンティティ/他者性』(岩波書店)ほか.
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