ヨーロッパの中世 1

中世世界とは何か

広くユーラシア的時空を見据え,最新の研究水準からヨーロッパ中世の歴史的・文化的骨格を明らかにする.

中世世界とは何か
著者 佐藤 彰一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ ヨーロッパの中世
刊行日 2008/11/26
ISBN 9784000263238
Cコード 0322
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 300頁
在庫 品切れ
中世を中世たらしめている独自の要素とは何なのか.それはいかなる意味で先行する古代,後続の近代と区別されるのか.国家や社会,統治や政治秩序のありようを探り,貴族層や修道院の系譜をたどりながら,広くユーラシア的時空を見据えて,ヨーロッパ中世の歴史的・文化的骨格を明らかにする.最新の研究をふまえた歴史像の捉え直し.

■編集にあたって

ヨーロッパ中世史の研究は,新たな史料の校訂・刊行やその利用法の刷新,多面的なテーマ設定などで,このところ急速な進展を見せている.日本においても,世界的レベルのオリジナリティあふれる研究論文が,次々と発表されつつある.まさに中世研究ルネサンスと言っていい.
 本シリーズは,このように新たな段階に入った研究の最先端の姿を,広い読者層に紹介すべく,脂の乗りきった研究者11名が,それぞれ得意とする切り口から中世世界にアプローチしたものである.文学や美術の専門家にも参加してもらうことで,「西洋中世史」の「西洋中世学」への脱皮を謳うマニフェストともなっている.ヨーロッパ中世という固有の世界に,都市・辺境・移動・技術・伝達・儀礼といったテーマを通じて切り込み,この魅力あふれる時代が私たちに開示する豊饒さを,読者に伝えたいと願っている.
 21世紀に入った今日,ヨーロッパ世界統合の進捗は著しく,近代国民国家の政治的重要性は相対化した.だが同時に,独自の伝統をもつ地域が復権し,影をひそめていた民族文化が活性化しつつあるのも事実である.このように,現在,再編途上にあるヨーロッパ世界の母体となった中世世界のありようを,歴史学のみならず隣接する人文諸科学の成果をも取り入れ,多様な視点から解読しようとする試みは,時宜にかなったものであろう.
 本シリーズを構成する8冊は,それぞれ性格の異なる8枚の「鏡」であり,これを合わせれば,ヨーロッパ中世の「全体」が見えてくる.この8冊を読まずして,ヨーロッパは理解できない,と確信している.
   2008年8月池上俊一・河原 温


■中世世界を映し出す8枚の「鏡」



第1巻  
中世世界とは何か
佐藤彰一(名古屋大学大学院教授)
中世を中世たらしめている独自の要素とは何なのか.国家や社会,政治のありようを探り,貴族層や修道院の系譜をたどりながら,広くユーラシア的時空を見据えて,ヨーロッパ中世の歴史的・文化的骨格を明らかにする.

都市の創造力  
都市の創造力
河原 温(首都大学東京教授)
都市の歴史は,人間の活動の歴史にほかならない.人的結合関係をはじめ,宗教との関係,新たな価値の創造,記憶と歴史意識の創出など,さまざまな観点から,地域的に多様な姿を見せるヨーロッパ都市の特性を描く.

第3巻  
辺境のダイナミズム
小澤 実(名古屋大学グローバルCOE研究員)
薩摩秀登(明治大学教授)
林 邦夫(東京学芸大学教授)
中心に先駆けて新たな革新が出現する場でもあれば,非ヨーロッパ世界との出会いの場でもあった「辺境」.北欧・東欧・イベリア半島・シチリアを主題に,多様で複雑な歴史の展開をたどりつつ,その個性を浮彫りにする.

第4巻  
旅する人びと
関 哲行(流通経済大学教授)
とぼしい交通手段でも人びとは長い距離を移動した.巡礼の旅,職人の遍歴,学びと説教の旅,宮廷の移動など,宗教・政治・経済・文化の諸事情が人びとを旅立たせた.分断されたヨーロッパ社会接合の契機ともなった移動を考える.

第5巻  
ものと技術の弁証法
堀越宏一(東洋大学教授)
ものの生産が生活を変え,生活の変化がものと技術を変えていった.水車などの農業技術,製鉄などの工業技術,そして建築物,衣服,食事,家具調度品などの製品の変遷を,中世考古学の成果を取り入れながら中世文明全体との関連で論じる.

第6巻
声と文字
大黒俊二(大阪市立大学大学院教授)
中世一千年の間に西欧世界は声中心から文字優勢の社会へと変貌した.その変化はラテン語と俗語,エリートと民衆,教会と世俗など,中世社会のもつ二重性とどう関わっていたのか.ユニークな角度から中世世界にせまる.

第7巻  
芸術のトポス
原野 昇(広島大学名誉教授)
木俣元一(名古屋大学大学院教授)
中世の芸術の場はどのような特徴を備えていたのか.キリスト教,宮廷,都市と農村を「文学の場」とする視点から作品を分析し,中世美術を空間,時間,言葉,祈りという四つの軸で捉え返して,中世の芸術を社会史的観点から見透す.

第8巻  
儀礼と象徴の中世
池上俊一(東京大学大学院教授)
中世は儀礼と象徴に満ち溢れた世界だった.それらは宗教と政治の場や社会的秩序の形成において決定的役割を担っただけではなく,身振りや感情表現に形を与えていた.儀礼行為と象徴の分析から中世世界の深層にある原理をあぶり出す.


特色

● ヨーロッパ史,中世史に関心をもつ幅広い読者を対象とするシリーズ.
● 第一線に立つ11名の中世研究者が,進展いちじるしい近年の研究成果をふまえ,独自の視角から斬新なヨーロッパ中世像を提示.
● 各巻ともテーマ別に時代・地域を広く取り,大きくヨーロッパ中世の全体像を視野に入れながら叙述.広く深く文化の様態や社会関係を探究する.
● 第1巻は大きな歴史的コンテクストの中から中世世界の骨格を提示.第2~4巻は空間的な場,第5~7巻は精神的な概念・価値に関わるテーマ.第8巻は社会の深層にある象徴レベルから中世の全体像を照射.

書評情報

週刊読書人 2009年7月31日号
読売新聞(朝刊) 2009年2月15日
毎日新聞(朝刊) 2009年1月25日
日本経済新聞(朝刊) 2008年12月28日
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