新装版 現代物理学の基礎 8
生命の物理
ますます注目される物理の視点からの生命理解.基本知識からエネルギーや情報といった観点からの解説.
物理の視点から生命や生物を理解しようという研究はますます注目されている.本書は,構造と機能,エネルギー・情報転換系,非周期秩序系としての生体,情報と論理,という四つの角度から総説したものである.前半は生物物理の基礎知識,後半は現在ではシステムバイオロジーに連なる研究の基礎知識を与える貴重な論考である.
■編集部からのメッセージ
量子力学を開拓したシュレーディンガーの『生命とは何か』に触発され,以後多くの物理学者が生命や生物を物理の問題としてどう捉えるかの研究に参入した.よく知られているように,その成果はすぐには物理学ではなく,生物学の本拠地でDNAの二重らせん構造の発見という画期的な研究につながった.
物理学そのものにおいては,生命や生物をそもそもどう特徴づけるのかがまず問題であっただけに,なかなか目覚ましい進展があったとは言えないかもしれない.日本では,東大理学部に初めて生物物理講座を創設した小谷正雄先生の尽力もあり,着実に成果を積み重ねていった(和田昭允『物理学は越境する』参照).
本書で語られるのは,そうした進展のなかで,まず生命を特徴づけるものは何かといった探求の軌跡である.とくに生物学で強調される「自己複製」にしても,細胞を構成している無機物,さらには原子・分子といった物質から,それはどのように説明されるのかといった問題に真正面から物理はどう応えるのかが課題であった.
こうした問題提起は,今日においてもなお困難な様相を極めている.それでもここで議論されていることは,時代の制約を受けているとはいえ,どれも貴重な議論である.生命や生物を動的に捉えたいと思う人には,ぜひ本書を読まれることをお薦めしたい.
■執筆担当
Ⅰ部:大沢文夫
Ⅱ部:寺本 英
Ⅲ部:斎藤信彦
Ⅳ部:西尾英之助
■編集部からのメッセージ
量子力学を開拓したシュレーディンガーの『生命とは何か』に触発され,以後多くの物理学者が生命や生物を物理の問題としてどう捉えるかの研究に参入した.よく知られているように,その成果はすぐには物理学ではなく,生物学の本拠地でDNAの二重らせん構造の発見という画期的な研究につながった.
物理学そのものにおいては,生命や生物をそもそもどう特徴づけるのかがまず問題であっただけに,なかなか目覚ましい進展があったとは言えないかもしれない.日本では,東大理学部に初めて生物物理講座を創設した小谷正雄先生の尽力もあり,着実に成果を積み重ねていった(和田昭允『物理学は越境する』参照).
本書で語られるのは,そうした進展のなかで,まず生命を特徴づけるものは何かといった探求の軌跡である.とくに生物学で強調される「自己複製」にしても,細胞を構成している無機物,さらには原子・分子といった物質から,それはどのように説明されるのかといった問題に真正面から物理はどう応えるのかが課題であった.
こうした問題提起は,今日においてもなお困難な様相を極めている.それでもここで議論されていることは,時代の制約を受けているとはいえ,どれも貴重な議論である.生命や生物を動的に捉えたいと思う人には,ぜひ本書を読まれることをお薦めしたい.
■執筆担当
Ⅰ部:大沢文夫
Ⅱ部:寺本 英
Ⅲ部:斎藤信彦
Ⅳ部:西尾英之助