双書 現代の哲学

官能の哲学

新しいメディアに担われた,現代の表象空間の生態-記号の隠微な力学と,差異のエロティックな運動を追って.

官能の哲学
著者 松浦 寿輝
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
シリーズ 双書 現代の哲学
刊行日 2001/05/07
ISBN 9784000265843
Cコード 0310
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 232頁
在庫 品切れ
新しいメディアに担われた,現代の表象空間の生態-隠しながら現す記号の逆説的な力学と,微細な差異の運動から浮かび上がるエロティックな図柄とを捉える.メカニックな思考の身体に浸透する官能性とは何か.

■【双書 現代の哲学】

新しいメディアに担われた,現代の表象空間の生態を記述する.情報空間に引かれた密かな欲望の力線と,メカニックなシステムが分泌するファンタスム――メディアと身体が交叉し,バーチャルな領域とリアルなものが浸透し合う場の,謎と逆説と罠に満ちた様相を描く.デジタル・メディアが表現行為に加える特異なバイアスを,表象のエロティックな運動を精密になぞりながら捉えようとする,メディアの解体学.

■本書の「後記」より

本書における筆者の関心の焦点は,あくまで,斜めからの交叉として生きられた「身体」=「メディア」の出会いにあった.そこでは,意味作用の生産ではなくノンセンスの炸裂が,目的論的な労働ではなく無償の快楽が優先されるだろう.仮面の演戯だの捏造された本当らしさだの口当たりのよい虚構だのが,いたるところに罠のように仕掛けられているだろう.法的にも論理的にも決して正当化されえないいかがわしいずれや矛盾や密かな裏切りが間断なく惹起され,人を瞞着しつづけるだろう.そんな斜交(はすか)いからの「身体」=「メディア」の出会いを,人は,実際,みずからの日々の生においてごくふつうに体験しているはずではないか.本書の表題に言う「官能」とは,要するに,この斜交性の運動に与えられた仮初の名前であるにすぎない.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2001年6月24日
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