双書 時代のカルテ
ユダのいる風景
福音書から太宰治まで──裏切り者の造型は,愛を語る宗教の影を照らす.「われらの内なるユダ」は救われるのか.
福音書からダンテと太宰治まで,ユダ像を訪ねてイメージの回廊をゆく.裏切り者,穢れた者,救いから排除される者の造型は,キリスト教の影の表情を照らしている.神の恵みが及ばない者の存在は,信仰における内と外,敵と味方を分ける指標となり土台となる.ユダは外にではなく,われわれの内に棲んでいる.
書評情報
読売新聞(朝刊) 2007年9月30日