双書 哲学塾

〈畳長さ〉が大切です

畳長性こそ,システム一般と対話とを支える条件だ.反時代的考察──関係の哲学への転換のために.

〈畳長さ〉が大切です
著者 山内 志朗
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
シリーズ 双書 哲学塾
刊行日 2007/09/05
ISBN 9784000281539
Cコード 0310
体裁 B6変 ・ 上製 ・ 160頁
在庫 品切れ
とかく評判の悪い畳長性をめぐる,逆転の発想──無駄が多くてドンくさい〈畳長さ〉こそ,コミュニケーションとシステムを支える条件じゃないのか.落語の面白さについて思案し,システム工学と情報理論の門をたたきます.ベイトソンやウィーナーの言葉は,「畳長」であることの知られざる役割を突いていました.存在論から関係の哲学への転換のために.

■著者からのメッセージ

熊さん,『〈畳長さ〉が大切です』に出会う

山内志朗

 てやんでー,理屈ばかりこねてるんじゃねえ,とりわけな,哲学なんぞ,理屈ばっかりじゃねえか.何々? 「哲学塾」だって.哲学だけど,「塾」たあ,どういう了見なんでえ?
 まあ,いいや,「塾」ってんだから,寺子屋みたいなもなんで,こぢんまりしていて,いやーハハハ,なんかちょいと仲良くなったりして,ん? 誰とだって? いやあー,恥ずかしいこと言わせんじゃねえよ.
 でもまあ,どっかのご隠居が,分かりやすく教えてくれるんだろうけど,色っぽい後家さんなんかだといいんだけどね.センセーってえのが,みな哲学者ときたもんだ.ちょいと色気はないけど,勉強だからまあいいか.
 「哲学塾」てえくれえのもんだ,ずいぶんいろんな店があるねえ.へえーっ,驚いた,この『〈畳長さ〉が大切です』ってえのは,何でしょうかね.いやあ,あっしも大学イモは大好きで,学問には心得はあるんですけどね,この「畳長さ」ってえのは,聴いたことがねえんですけどね.
 きっとね,長ーーい「畳」の敷いてある部屋で,「デカルト曰く」なんてくるんじゃねえんでしょうねえ.んでもって,最後に「畳長性とは長い畳のことである」なんてえんじゃねえんでしょうね.そんなんだったら,金返せ,返さなかったら,ブン殴って,納戸の柱にしばりつけるってえんで.ん? そうじゃねえんですかい.
 えー,何々,「落語はなぜ面白いか」てんですか.へえー,面白そうな演目あんじゃないか.ちょいと見てみるか.哲学の塾なのに,落語の面白さを説明しようなんて,唐変木で面白いや.
 難しいのはてえへんだろうから,謎かけで説明してくれるって? じゃあ,やってもらおうじゃねえか.なに? 「畳長性とかけて,なんと解く」「鼻の頭と解く」「へえ,その心は?」「そばにあって大事なものなのに見えにくい」.
 はあん? あんまりうまかねえな.もちっとしゃれたやつじゃあねえとな.やっぱりあんたにゃあ,落語家無理てえもんだ.それに『星の王子さま』のせりふみたいじゃねえか.しかしまあ,謎かけで哲学をやろうってえんだから,心意気に免じてちょいと聞いてやるか.御利益あるかもしれねえしな.
 で,その「畳長性」ってえのは,いったいどんなものなんで? 食えるもん? お酒みたいなもの? でも,チリトテチンみたいなものだてんなら,ゴメンですぜ.
 何々? コミュニケーション? んでもってメタ・コミュニケーション,こりゃやたら横文字ばっかりじゃねえか.そりゃ,講師のヤマウチってのが,「ラテン系」だからてえのかい.まあ,お経だって元はサンスクリット語だし,落語だって,「ラ・マラゲーニア」てえのがあったぐらいだから,分からなくても,まあ聞いてりゃいいんだろうなあ.
 じゃあ,木戸銭ここに置いておくから.ちょいと聞かせてもらおうかい.

※ さて,ちょいと勘違いして,哲学塾『〈畳長さ〉が大切です』に足を踏み入れた熊さんはどうなったのでしょうかねえ.
はじめに


講義の7日間 〈畳長さ〉による,〈畳長さ〉のための

第1日 言葉はなぜ思い通りに話せないのか

――コミュニケーションと畳長性

第2日 落語はなぜ面白いのか
 
――コミュニケーションの多層性

第3日 習熟した〈藝〉はなぜ意識されてはならないのか
 
――畳長性の座としての身体

第4日 畳長性は冗長ではなかった
 
――情報理論とシステム工学における畳長性

第5日 誤謬の自己訂正としての畳長性
 
――新しさが受容されるための可能性の条件

第6日 フィードバックについて
 
――サイバネティックスにおける畳長性

第7日 無限の多様性を生み出すものとしての畳長性
 
――畳長性と多様性・個性


補講 畳長性とは何か
 

――存在論からコミュニケーション論へ


引用・参考文献
山内志朗(やまうち しろう)
1957年生まれ.専攻,スコラ哲学.現在,慶應義塾大学文学部教授.
著書:『普遍論争』(哲学書房),『天使の記号学』(岩波書店),『ライプニッツ』(NHK出版),『笑いと哲学の微妙な関係』(哲学書房),『〈つまずき〉のなかの哲学』(NHK出版)ほか.

書評情報

東京新聞(夕刊) 2008年2月16日
山形新聞(朝刊) 2008年1月27日
南日本新聞(朝刊) 2007年9月16日
高知新聞(朝刊) 2007年9月16日
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