ああ,ヨーロッパ

国境を越える熟議の民主主義の理論を構想.加えてデリダやローティ,ドゥウォーキンらの知的肖像を描く論集

ああ,ヨーロッパ
著者 ユルゲン・ハーバーマス , 三島 憲一 , 鈴木 直 , 大貫 敦子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
刊行日 2010/12/21
ISBN 9784000220637
Cコード 0010
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 300頁
在庫 品切れ
紆余曲折を重ねる欧州統合に対し知識人が果たすべき責任とは何か.グローバルなメディア社会の出現という現実をふまえ,トランスナショナルな政治的公共圏の形成をめざし,熟議の民主主義の理論的モデルを構想する.「盟友」デリダやローティへの弔辞,ドゥウォーキンら現代の知的巨人を描く「ポートレート」を加えた最新論集.

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グローバル化した現代社会にあっては,国家の枠を越えた政治機構と,これを支える意思決定の基盤としてのトランスナショナルな政治的公共圏の形成が不可欠である.ヨーロッパ統合は,その先駆的な試みとなりうるはずであった.しかし現在,統合は参加各国の個別利害にもとづく政治的思わくと経済情勢の劇的変化から足踏みと後退を重ね,変質化の瀬戸際にある.EU内部に非西洋的な価値を抱えこむ政治的・文化的状況が不可避的に進行するなかで,これまで公論空間を牽引してきた知識人や新聞を筆頭とする各国のメディアは,いかなる責任を果たし,どのように議論を喚起してゆくべきか.公共圏における理性のあり方を問い続けてきた社会哲学者が,EU政治の現状への批判と提言を行い,グローバルなメディア社会の出現に即応した「国境を越える熟議の民主主義」の理論モデルを構想する.
まえがき
《第I部》ポートレート
第1章 ドイツ連邦共和国草創期のヘルマン・ヘラー
――ヴォルフガング・アーベントロート生誕百年を記念して
第2章 リチャード・ローティ
――デフレ化のショックに魅せられて
第3章 「アメリカを,そしてそのたくましいデモクラシーを定義する」
――リチャード・ローティを偲んで
第4章 倫理的問題にどう答えるべきか
――デリダと宗教
第5章 一線を画したデリダへ
――最後の挨拶
第6章 ロナルド・ドゥウォーキン
――法学者サークルの孤高の人
《第II部》ああ,ヨーロッパよ
第7章 知識人の役割とヨーロッパ
――重要性を感じ取るアヴァンギャルド的感覚
第8章 「ポスト世俗化」社会の意味するところ
第9章 行き詰まったヨーロッパ統合
――段差をつけた統合に向けて
《第III部》公共圏における理性のあり方
第10章 メディア,マーケット,消費者
――しっかりした新聞は政治的公共圏の背骨である
第11章 民主主義と認識
――経験的研究と規範理論
付論 われわれにはヨーロッパが必要だ
――新たな頑迷.共通の未来はどうでもよくなってしまったのか?

 注
 訳者あとがき
ユルゲン・ハーバーマス Jürgen Habermas
1929年,デュッセルドルフ生れ.フランクフルト大学名誉教授.『公共性の構造転換』,『コミュニケーション的行為の理論』,『事実性と妥当性』など.

《訳者》
三島憲一(みしま けんいち)
東京経済大学教授.ドイツ思想.
小社刊の著書『ニーチェ』,『戦後ドイツ』,『現代ドイツ』
小社刊の翻訳『ポスト世俗化時代の哲学と宗教』,『道徳意識とコミュニケーション行為』,他多数

鈴木 直(すずき ただし)
東京経済大学教授.ドイツ思想.
小社刊の翻訳に『ヒトラー』,『数の魔力』,『5分でたのしむ数学50話』,『続 5分でたのしむ数学50話』

大貫敦子(おおぬき あつこ)
学習院大学教授.ドイツ文学・文化理論.
小社刊の翻訳に『アドルノ』,他

書評情報

東京新聞(朝刊) 2011年2月13日
日本経済新聞(朝刊) 2011年2月6日
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