カントとカモノハシ 上

『記号論』から20年,数々の思考実験を繰り広げながら,人間の認識メカニズムに挑む.

カントとカモノハシ 上
著者 ウンベルト・エーコ , 和田 忠彦 監訳
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
刊行日 2003/03/28
ISBN 9784000224307
Cコード 0010
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 342頁
在庫 品切れ
カモノハシ―この鳥とも獣とも魚ともつかない生物をもしもカントが見ていたら,どのような反省的判断を導きだしただろうか.「未婚の成年男性」は独身男の正確十分な定義と言えるだろうか…『記号論』から20年余,数々の思考実験を繰り広げながら人間の認識メカニズムのブラックボックスに挑む.(全2冊)

■監訳者からのメッセージ

もしカントが晩年,南太平洋の果てに棲息する奇妙な動物,カモノハシの存在を知っていたら,おなじみのカテゴリーは12ではなく,13に増えたのか,それともカテゴリーそのものが大きくゆらいで変わることになったのだろうか?
 他愛もないといえばそれまでの,こんな空想に遊ぶことからはじめて,わたしたちが日常遭遇するさまざまな経験に,いったいどんなメカニズムがはたらけば,経験それぞれが腑分けされ名づけられるのかという認識論の難題に,エーコは記号論をかみ合わせることで切り込んでいく.
 本書『カントとカモノハシ』は,実のところ,いまや古典の仲間入りをしたともいえる『記号論』(1975年)初の全面改訂版と銘打ってもかまわない力作なのだけれど,そんな大仰な物言いをエーコがするはずもない.なにしろ,齢70を越えてなお,好奇心旺盛にして無邪気.この歳になってやっと,人間の言語習得プロセスが具体性をもってわかるようになったよ,と,まだよちよち歩きの初孫の暮らすローマは聖天使城界隈に,ほとんど週末ごとに通い詰めることの照れくささを隠すかのように,学問的動機(?)にむすびつけるのをみると,本書もそんな遊び心から生まれた偶然の産物とでもいいたいのかもしれない.
 だから読者も,せいぜい肩の力を抜いて読んでほしい――きっとエーコはそう願っているにちがいない.
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