西田幾多郎の思索世界

純粋経験から世界認識へ

その思索の徹底性・独創性から多大な影響を与え続ける哲学者は,思索の発展のなかで何を問おうとしたのか.

西田幾多郎の思索世界
著者 藤田 正勝
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
刊行日 2011/03/17
ISBN 9784000242790
Cコード 0010
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 310頁
定価 3,740円
在庫 在庫あり
日本の哲学の歴史のなかで極めて多くの思想家に影響を与え,また批判にもさらされた西田幾多郎の哲学.大きな課題を突き付けられた時こそ,彼の思想は大きく発展したといってもよい.その発展のなかで西田は結局何を問おうとしたのか,問題の根本に立ち返り,その意義を明らかにする.西田哲学研究の新しい局面を切り開く.


■著者からのメッセージ
 西田幾多郎の哲学は,彼自身の思索の徹底性や独創性という点においても,また,それ以後の思想家に与えた影響という点から見ても,日本の哲学の歴史のなかできわめて大きな位置を占める.しかしそれは,西田の哲学が批判を免れていたということではない.むしろそれは多くの思想家から批判を受けた.しかし西田はそれを正面から受けとめ,自らの思想を発展させる原動力にしていった.そのことによって西田の思索は,意識(自己)から汝へ,汝から社会(国家)へ,そして世界へと広がりと深まりとを見せていった.
 本書の表題を「西田幾多郎の思索世界」としたのは,この西田の思索の広がりと深まりとを指してのことである.具体的には,経験や言葉,自己,行為,身体,国家などをめぐって思索が重ねられていった.その思索の意義を,テクストの厳密な読みから出発しながら,しかしそれを超えて,内外の思想と対比しながら,より広い視野,より大きな連関のなかで明らかにすることを本書では試みた.
序章
第一章 根本の問い――純粋経験とは
1 純粋経験とは何か
2 流動性の論理
3 経験と言葉
4 〈もの〉と〈こと〉
第二章 生と表現,そして美の問題
1 西田幾多郎とディルタイ
2 自然科学と精神科学の方法
3 眼と手――フィードラーの芸術論
4 感情とその表現としての芸術
5 フィードラーと西田の思想の差異
第三章 場所――根柢からの思惟
1 「場所」の立場へ
2 「論理化」の問題と「基体」概念
3 自覚と場所
4 スコトゥス・エリウゲナとプロチノス
5 「働くもの」から「見るもの」へ
6 無の場所
7 西田の「場所」論がめざしたもの
第四章 言葉と思索――日本語で思索することの意味
1 九鬼周造と和辻哲郎
2 「思想の身体」としての言葉
3 日本語の「自在性」
4 日本語の構造
5 日本語の構造と「場所」論
6 日本語で思索すること
第五章 自己と他者――その非対称性をめぐって
1 ブーバーにおける自己と他者
2 西田における自己と他者
3 自己と他者の非対称性
第六章 弁証法――西田とヘーゲル
1 初期の思索のなかにおけるヘーゲルへの関心
2 絶対無の自覚的限定と弁証法
3 個人と社会との相互限定
4 私と汝との弁証法的関係
5 弁証法的一般者
6 ヘーゲル哲学に対する批判
第七章 後期西田哲学の問い――行為的直観とは
1 世界へのまなざしと「行為的直観」
2 西洋近代哲学への批判
3 行為的直観とマルクスの「実践」概念
4 表現作用的身体/歴史的身体
5 「内」と「外」の対立と自覚
6 独自の「実践」概念へ
7 知識の基底としての「行為的直観」
第八章 歴史と国家の問題
1 現実の政治・国家に対する西田の態度
2 教学刷新評議会
3 日本文化の問題
4 意味の争奪戦
5 国家理由の問題
6 世界新秩序の原理
7 国体をめぐって
第九章「東洋」へのまなざし――哲学と世界認識
1 西田哲学と「東洋」
2 西田の「場所」論と東洋思想
3 形なきものの形
4 日本文化論における「東洋」と「世界」
5 東洋の論理
6 矛盾的自己同一の論理
7 伝統からの飛躍
第一〇章 宗教とは何か――西田哲学を貫く思惟
1 西田の宗教理解の特徴
2 キリスト教に対する批判
3 西田の仏教理解
4 平常底
5 歴史的現実と宗教
あとがき
藤田正勝(ふじた まさかつ)
1949年生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学.現在,京都大学大学院文学研究科教授.哲学,日本哲学史専攻.
著書に,『若きヘーゲル』(創文社),『現代思想としての西田幾多郎』(講談社メチエ),編著書に,『日本近代思想を学ぶ人のために』(世界思想社),『京都学派の哲学』(昭和堂),『世界のなかの日本の哲学』(昭和堂)などがある.また『新版 西田幾多郎全集』 『田辺元哲学選』(ともに岩波書店)の編集を担当.

書評情報

京都新聞(朝刊) 2011年5月23日
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