日本神話と心の構造

1965年，河合隼雄はスイスのユング研究所で，日本人初のユング派分析家の資格を得る．その際提出された審査論文は，日本神話について論じた最初の一歩であり，生涯のテーマの原点ともなるものだった．英語原文，エラノス会議講演録，審査会でユングの理解を巡り激論を交わした審査員への手紙など貴重な資料も併せて収録．

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◆四十数年の時を経て蘇る，河合隼雄の原点

日本神話と心の構造
――河合隼雄ユング派分析家資格審査論文

河合隼雄
河合俊雄，田中康裕，高月玲子 訳
河合俊雄 解説

四六判・上製カバー

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◆自己治癒力を引き出し続けるその存在と言葉

臨床家　河合隼雄

谷川俊太郎，鷲田清一，河合俊雄 編

四六判・上製カバー

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◆なぜ魂をとらえることができたのか

思想家　河合隼雄

中沢新一，河合俊雄 編

四六判・上製カバー

■訳者からのメッセージ

河合俊雄
　本書は，チューリヒのユング研究所に1965年に提出された河合隼雄の分析家資格論文の和訳である「日本神話における太陽の女神像」と，1985年のエラノス会議での講演を訳した「日本神話における隠された神々」を中心としている．自らの分析体験から思いもかけず浮上してきた日本神話は，河合隼雄のいわばライフワークとも言えるものである．そしてその第１作である資格論文は，四十数年の沈黙を経て日本語として蘇ったわけであるけれども，単に歴史的な価値にとどまらず，女性の意識，構造的な捉え方，仏教的な存在意識など，後の思想を全て含んでいるとしても過言ではなく，さらにまだ多くの可能性を秘めていると言えよう．また中空構造と追放された神ヒルコを扱った「日本神話における隠された神々」には，ヒルコ存在への河合隼雄の熱い思いが感じられる．英語で考え，英語の論理と対決するからこそ生まれてきた思想の原点を知るのに，貴重な本と言えよう．
　なお『思想家 河合隼雄』（10月刊行），『臨床家 河合隼雄』，『日本神話と 心の構造』は，現時点における河合隼雄の全体像を示す３部作と位置づけてい る．併せて読まれることで，河合隼雄の宇宙をより深く理解していただければと 思っている．

謝　辞

日本神話における太陽の女神像
　謝　辞
　序　文
　第１章　神　話
　　１．太陽の女神アマテラスの誕生
　　２．アマテラスとスサノヲの誓約
　　３．太陽の女神の引きこもり
　　４．世界のはじまり
　　５．国生みと神々の誕生
　　６．イザナキの黄泉の国への下降
　　７．スサノヲと食物の女神
　　８．スサノヲのヤマタノオロチ退治
　　９．スサノヲとその子孫オオクニヌシ
　　10．太陽の女神の孫への国譲り
　第２章　太陽の女神の像
　　１．父の娘
　　２．トライアッド
　　３．太陽と月
　　４．男性と女性
　　５．男性の侵入者
　　６．女性の神秘
　　７．他文化における女性の太陽
　　８．対　決
　　９．結　論
　文　献

THE FIGURE OF THE SUN GODDESS IN JAPANESE MYTHOLOGY
　ACKNOWLEDGEMENT
　FOREWORD
　CHAPTER I　THE MYTH
　　１．The Birth of the Sun Goddess Amaterasu
　　２．An Oath between the Sun Goddess and the Storm God
　　３．The Retirement of the Sun Goddess
　　４．The Beginning of the World
　　５．The Generation of the Lands and Gods
　　６．Male-Who-Invites’ Descent into the Land of Gloom
　　７．Impetuous Male and the Goddess of Food
　　８．Impetuous Male slaying an Eight-forked Serpent
　　９．Impetuous Male and Master-of-the-Great-Land，One of his Descendants
　　10．Transfer of the Land to Sun Goddess’ Grand Son
　CHAPTER II　THE FIGURE OF THE SUN GODDESS
　　１．The Father’s Daughter
　　２．The Triad
　　３．The Sun and the Moon
　　４．Male and Female
　　５．Male Intruder
　　６．Mystery of Female
　　７．Female Suns in Other Cultures
　　８．Confrontation
　　９．Conclusion
　BIBLIOGRAPHY

[資料]
日本神話における隠された神々 （エラノス会議講演録）
　　１．太陽の女神，アマテラス
　　２．太陽の女神に相対する，スサノヲ
　　３．太陽の女神の引きこもり
　　４．中空としての月の神
　　５．第１と第３のトライアッド
　　６．バランスをとる動きの反復
　　７．中空構造
　　８．捨てられた神，ヒルコ
　　９．捨てられた子どもの帰還
　　10．片子の運命

[解題]
河合隼雄と日本神話 （河合俊雄）
　　河合隼雄と日本神話
　　資格論文
　　手紙――実体と流動
　　エラノス会議――海外の意味
　　隠された神ヒルコ

　索　引（固有名詞・事項）

著
河合隼雄（かわい はやお）
臨床心理学者．1928年６月兵庫県生まれ．京都大学理学部数学科卒業．教育学博士．1962～65年スイスチューリヒユング研究所留学．ユング派分析家資格取得（日本人初）．京都大学教授．国際日本文化研究センター所長．文化庁長官を歴任．2007年７月逝去．
著書に，『コンプレックス』，『昔話と日本人の心』，『神話と日本人の心』（岩波書店）など．
訳・解説
河合俊雄（かわい としお）
臨床心理学者．1957年９月奈良県生まれ．京都大学大学院教育学研究科博士課程中退．Ph．D．ユング派分析家資格取得．京都大学こころの未来研究センター教授．著書に『概念の心理療法』（日本評論社），『ユング』（講談社），『心理臨床の理論』（岩波書店）など．
訳
田中康裕（たなか やすひろ）
臨床心理学者．1963年６月大阪府生まれ．上智大学大学院博士後期課程単位取得満期退学．博士（心理学）．ユング派分析家資格取得．京都大学大学院教育学研究科准教授．著書に『心理療法とイメージ』（共著，岩波書店），『魂のロジック』（日本評論社），『「発達障害」と心理臨床』（共著，創元社）など．
訳
高月玲子（たかつき れいこ）
臨床心理学者．1955年４月兵庫県生まれ．京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学．天理大学人間学部人間関係学科臨床心理専攻准教授．著書に『シネマのなかの臨床心理学』（共著，有斐閣），『臨床心理学の世界』（共著，有斐閣），『心理療法と身体』（共著，岩波書店）など．