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2024.03.18
サンスクリット原典現代語訳 法華経 (下)
(全2巻)
正確でわかりやすい決定版翻訳『梵漢和対照・現代語訳 法華経』がハンディで読みやすく生まれ変わった.
『法華経』を正しくわかりたいと願うすべての人々のために,決定版翻訳がさらに読みやすく生まれ変わった.綿密なテキスト校訂,深い仏教理解に基づく詳細な注解,細部まで原典に忠実な翻訳,によって多くの読者の支持を得ている専門書『梵漢和対照・現代語訳 法華経』を一般向けに改訂,手に取りやすくした.
■訳者からのメッセージ
仏教は,これまで信仰としてとらえられてきたようだが,思想・哲学としてとらえ直した時,新たな価値が見出されるのではないかと思う.この『法華経』も,思想として読み直した時,新たな意味が発見されるのではないだろうか.例えば,今日「文明の衝突」が危惧されているが,『法華経』の止揚の論理,寛容の思想は,注目されてもいいのではないだろうか.それは,信仰とは意味が異なったものである.
『法華経』が成立したのは,ガンダーラを含む西北インドであったと推定されることは,既に述べた.そこはインド人のほかに,アレクサンドロス大王の西北インド遠征(紀元前三二七年)以来,定住したギリシア人をはじめ,パフラヴァ人,サカ人などが共存していた.異なる宗教,異なる文化を持つ異なる民族が,対立という文明的試練を超え,相融和して暮らしていた.紀元前二世紀後半には,ギリシア人の王ミリンダ(弥蘭)と,インド人の仏教僧ナーガセーナ(那先)との間で行なわれた『ミリンダ王の問い』(漢訳,『那先比丘経』)と題する東西対話の舞台となった.そうした精神風土の中で,『法華経』の止揚・統合の論理は醸成されたのである.
「差異と融合」「対立と融和」を象徴する譬喩が,薬草喩品に見られる.薬草喩品は,同一の雨水に潤されながら,千差万別の植物がそれぞれの個性を持って同一の大地に生い茂っていることを譬えとして,一仏乗の思想を説明している.ここには,それぞれの差異の故に対立するのではなく,差異を差異として認め合い,尊重しつつ,普遍的視点に立って共存・融和するという視点が読み取れる.平等相と差別相の密接な関係が象徴的に述べられている.「文明の衝突」が危惧される今日,異質なものとの対立を乗り越え,共存するための智慧というメッセージが『法華経』に込められているように思えてならない.
■訳者からのメッセージ
仏教は,これまで信仰としてとらえられてきたようだが,思想・哲学としてとらえ直した時,新たな価値が見出されるのではないかと思う.この『法華経』も,思想として読み直した時,新たな意味が発見されるのではないだろうか.例えば,今日「文明の衝突」が危惧されているが,『法華経』の止揚の論理,寛容の思想は,注目されてもいいのではないだろうか.それは,信仰とは意味が異なったものである.
『法華経』が成立したのは,ガンダーラを含む西北インドであったと推定されることは,既に述べた.そこはインド人のほかに,アレクサンドロス大王の西北インド遠征(紀元前三二七年)以来,定住したギリシア人をはじめ,パフラヴァ人,サカ人などが共存していた.異なる宗教,異なる文化を持つ異なる民族が,対立という文明的試練を超え,相融和して暮らしていた.紀元前二世紀後半には,ギリシア人の王ミリンダ(弥蘭)と,インド人の仏教僧ナーガセーナ(那先)との間で行なわれた『ミリンダ王の問い』(漢訳,『那先比丘経』)と題する東西対話の舞台となった.そうした精神風土の中で,『法華経』の止揚・統合の論理は醸成されたのである.
「差異と融合」「対立と融和」を象徴する譬喩が,薬草喩品に見られる.薬草喩品は,同一の雨水に潤されながら,千差万別の植物がそれぞれの個性を持って同一の大地に生い茂っていることを譬えとして,一仏乗の思想を説明している.ここには,それぞれの差異の故に対立するのではなく,差異を差異として認め合い,尊重しつつ,普遍的視点に立って共存・融和するという視点が読み取れる.平等相と差別相の密接な関係が象徴的に述べられている.「文明の衝突」が危惧される今日,異質なものとの対立を乗り越え,共存するための智慧というメッセージが『法華経』に込められているように思えてならない.
――「解説」(下巻所収)より
■上巻
はしがき
凡例
第一章:序(序品第一)
第二章:巧みなる方便(方便品第二)
第三章:譬喩(譬喩品第三)
第四章:信順の志(信解品第四)
第五章:薬草(薬草喩品第五)
第六章:予言(授記品第六)
第七章:過去との結びつき(化城喩品第七)
第八章:五百人の男性出家者たちへの予言(五百弟子受記品第八)
第九章:アーナンダとラーフラ,そのほか二千人の男性出家者への予言(授学無学人記品第九)
第十章:説法者(法師品第十)
注
■下巻
凡例
第十一章:ストゥーパの出現(見宝塔品第十一)
第十一章:ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第十二)
第十二章:果敢なる努力(勧持品第十三)
第十三章:安楽の住所(安楽行品第十四)
第十四章:大地の裂け目からの菩薩の出現(従地涌出品第十五)
第十五章:如来の寿命の長さ(如来寿量品第十六)
第十六章:福徳の分別(分別功徳品第十七)
第十七章:喜んで受け容れることの福徳の表明(随喜功徳品第十八)
第十八章:説法者に対する讃嘆(法師功徳品第十九)
第十九章:常に軽んじない〔のに,常に軽んじていると思われ,その結果,常に軽んじられることになるが,最終的には常に軽んじられないものとなる 〕菩薩(常不軽菩薩品第二十)
第二十章:如来の神力の顕現(如来神力品第二十一)
第二十一章:ダーラニー(陀羅尼品第二十六)
第二十二章:“薬の王”の過去との結びつき(薬王菩薩本事品第二十三)
第二十三章:明瞭で流暢に話す声を持つもの(妙音菩薩品第二十四)
第二十四章:あらゆる方向に顔を向けた“自在に観るもの”の神変についての教説(観世音菩薩普門品第二十五)
第二十五章:“美しく荘厳された王”の過去との結びつき(妙荘厳王本事品第二十七)
第二十六章:“普く祝福されている人”による鼓舞(普賢菩薩勧発品第二十八)
第二十七章:付嘱(嘱累品第二十二)
注
解説
あとがき
はしがき
凡例
第一章:序(序品第一)
第二章:巧みなる方便(方便品第二)
第三章:譬喩(譬喩品第三)
第四章:信順の志(信解品第四)
第五章:薬草(薬草喩品第五)
第六章:予言(授記品第六)
第七章:過去との結びつき(化城喩品第七)
第八章:五百人の男性出家者たちへの予言(五百弟子受記品第八)
第九章:アーナンダとラーフラ,そのほか二千人の男性出家者への予言(授学無学人記品第九)
第十章:説法者(法師品第十)
注
■下巻
凡例
第十一章:ストゥーパの出現(見宝塔品第十一)
第十一章:ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第十二)
第十二章:果敢なる努力(勧持品第十三)
第十三章:安楽の住所(安楽行品第十四)
第十四章:大地の裂け目からの菩薩の出現(従地涌出品第十五)
第十五章:如来の寿命の長さ(如来寿量品第十六)
第十六章:福徳の分別(分別功徳品第十七)
第十七章:喜んで受け容れることの福徳の表明(随喜功徳品第十八)
第十八章:説法者に対する讃嘆(法師功徳品第十九)
第十九章:常に軽んじない〔のに,常に軽んじていると思われ,その結果,常に軽んじられることになるが,最終的には常に軽んじられないものとなる 〕菩薩(常不軽菩薩品第二十)
第二十章:如来の神力の顕現(如来神力品第二十一)
第二十一章:ダーラニー(陀羅尼品第二十六)
第二十二章:“薬の王”の過去との結びつき(薬王菩薩本事品第二十三)
第二十三章:明瞭で流暢に話す声を持つもの(妙音菩薩品第二十四)
第二十四章:あらゆる方向に顔を向けた“自在に観るもの”の神変についての教説(観世音菩薩普門品第二十五)
第二十五章:“美しく荘厳された王”の過去との結びつき(妙荘厳王本事品第二十七)
第二十六章:“普く祝福されている人”による鼓舞(普賢菩薩勧発品第二十八)
第二十七章:付嘱(嘱累品第二十二)
注
解説
あとがき
植木雅俊(うえき まさとし)
1951年生.九州大学大学院理学研究科修士課程修了.東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退.91年から東方学院で中村元氏のもとでインド思想・仏教思想,サンスクリット語を学ぶ.2002年人文科学博士(お茶の水女子大学).仏教思想研究家・NHK文化センター講師.
著書:『梵漢和対照・現代語訳 法華経』(2008毎日出版文化賞),『思想としての法華経』(2012ともに岩波書店),『仏教学者 中村元』(2014角川書店)ほか多数
1951年生.九州大学大学院理学研究科修士課程修了.東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退.91年から東方学院で中村元氏のもとでインド思想・仏教思想,サンスクリット語を学ぶ.2002年人文科学博士(お茶の水女子大学).仏教思想研究家・NHK文化センター講師.
著書:『梵漢和対照・現代語訳 法華経』(2008毎日出版文化賞),『思想としての法華経』(2012ともに岩波書店),『仏教学者 中村元』(2014角川書店)ほか多数